社会人大学院受験に向けた情報収集や交流を目的とするミートアップイベント「えれキャリ会」。
記念すべき第1回が8月26日、オンラインで開催されました。今回のテーマは「研究計画書の書き方」。ゲストに東京都立大学大学院MBAプログラム(経営学修士課程)を修了された青木和輝さんをお迎えして、書き方のポイントなどを伝授していただきました。
参加者は社会人1年目から20年以上まで、業界もホスピタリティからIT、素材メーカーまで。今まさに研究計画書に取り組んでいる方からもこれからの方からも、さまざまな質問が投げかけられ、あっという間の約1時間半でした。
●OPENING
秋山詩乃(以下秋山):今日は皆さん、第1回えれキャリ会にご参加ありがとうございます!早速今日のアジェンダですが、まずえれキャリの概要と、私と青木さんの自己紹介を簡単に行って、大学院受験と今日のテーマである研究計画書の全体像をお話しします。その後、青木さんから研究計画書の実践的なお話をしていただきます。
質問はチャットでも、声に出していただいても構いません。質問すること自体が皆さんの知見になると思いますので、こちらが一方的に話すのではなく、どんどん質問していただければと思います。質問タイムもたっぷり取っています。入退室も自由です。入試に向かって、みんなでこの時期を乗り越えていきましょう!
大学院での学びを起点に自律分散型キャリアを築こう
副業でパラレルキャリアを築くだけでは経験のすり減らしに過ぎないので、学びを起点に成長し変化していける人を増やしたいと考えています。新たな知識を得たり学んだり経験したりしてインプットしつつ、それをアウトプットすることでキャリアを豊かにしていく。そんな人を増やすために、アカデミアと実践をつないでいきます。
メディアでは現在、社会人大学に在学している人、もしくは修了した人のインタビューを届けていて、今年中に100本掲載を目標に動いています。数を質に転換するためにまずは数を稼ぎ、この100人のインタビューを元に、社会人大学院のキャリアへの影響や修了した人の変化について、質的研究を行う予定です。研究結果をまとめて、大学院進学のメリットを広く発信したいと考えています。
インタビュー以外にも社会人大学入学へのステップ、研究計画書やお金のこと、スケジュールの立て方などのコンテンツを掲載しています。7月末には、大学院のデータベースを公開しました。自分が希望する条件から大学院選びができる、おそらく日本初のデータベースです。皆さんのキャリアを応援できるように、これからも頑張っていきたいと思っています。
ここから、私と青木さんの自己紹介に入りたいと思います。
まず私から、あらためまして秋山です。普段はフリー株式会社という会計ソフト会社で人事企画を担当しています。新卒で入社し今年で6年目、人事は今年で4年目です。
今年の3月、立教大学大学院のリーダーシップ開発コース(LDC)を修了しました。LDCに入ったのは、会社で人事制度の刷新プロジェクトをPMとして任されたことがきっかけです。従業員の人たちの人生に関わることに携わる仕事なのに、経験知識がないのは失礼だと感じ、アカデミアに戻りました。LDC一期生だったので、非常にタイミングが良かったと思います。
アカデミアで学べたことはもちろん良かったんですが、それ以上に大学院という人生のサードプレイスが見つかったことで、会社に縛られずに発言やアウトプットができるようになり、自分で自分の人生を生きている感覚が得られました。
そもそも社会人大学院を意味する言葉自体、ドイツや韓国にはあるようですが、欧米諸国ではないと言われています。つまり、働いている人がコミュニティカレッジに戻って学ぶということが当たり前のカルチャーとしてあるわけです。この事実にも衝撃を受けて、ぜひもっと社会人大学院を日本に広めたい、そのほうが絶対にみんなハッピーになれる、と信じて取り組んでいます。
では青木さん、お願いします。
青木和輝氏(以下青木):こんにちは。今日は研究計画書がテーマということで、お話させていただきます。私が立派な研究計画書を書けるかと言うとそうでもないんですが、経験を踏まえてお話しします。
私が何をやっている人かひとことで言うと「水族館とITの世界にいる人」です。
まず首都大学、現在の都立大学の大学院で物理の修士号を取得しました。その後、ITの仕事を7年ほど、水族館の展示ガイドを1回目の大学院に入った時から10年ぐらい続けています。水族館の業界に対して爪痕を残したいというモチベーションがあり、2020年に都立大大学院のMBAに進学し今年3月に修了しました。キャリア教育に携わった経験もあり、えれキャリさんの活動に興味を持って参画しております。何かあれば気軽にご連絡ください。よろしくお願いします。
秋山:ありがとうございます。青木さんは、いい意味で変ですよね(笑)。
青木:よく言われます(笑)。
秋山:えれキャリのメディアに青木さんのインタビューが掲載されているので、ぜひ読んでみてください。ブログにも大学院のことが詳しく書かれているので、参考になると思います。
●Part 1 入試における研究計画書の位置付け by 秋山詩乃
問われるのは課題発見の主体性と研究する基礎力
本題に入る前に、社会人大学院がどんな場所なのかという話をしたいと思います。実は、それが研究計画書で問われることにつながってくるんです。まず、皆さんが社会人大学院に対して持っているイメージをチャットに記入していただけますか?
…なるほど「仕事との両立が大変」。やっぱりそういうイメージがあるんですね。「宿題が多い」確かにたくさん宿題が出る授業もあります。「意識高い系が多い」…わざわざお金と時間を使って苦しい思いをするわけですから、そう思われるかもしれませんね。プラスのイメージでは「同じ悩みを共有する仲間ができる」。年齢も業界も超えて仲間ができる、そういう場はすごく貴重ですね。ありがとうございました。
さて、社会人大学院は「院生各自が自分で固有の研究テーマを見つけ、それを主体的に解決する場」とされています。
この「各自で自分の研究テーマを見つける」、さらに「主体的に問題解決をする」というところがポイントです。皆さんのイメージ通り、仕事と両立しながら授業とは別にたくさんの本を読み、大量な宿題をこなさなければいけないのは、そのためです。
大学院側も、問題意識がある人を望んでいます。つまり、学部からストレートで進学する時と違い、社会人大学院の入試では日々の仕事の中で主体的に課題を見つけられる人かどうか、かつそれを研究として昇華する基礎学力があるかどうか見られているわけです。研究に必要な4つの柱「新規性・独自性・論理性・作用性(貢献性)」を立てて研究を行う力があるかどうかも、チェックされます。
社会人大学院の入試で問われるこれらのポイントが、最もはっきり現れるのが「研究計画書」だということです。
キャリアの棚卸しをしながら書く
ここで、えれキャリの受験準備の記事から抜粋したスライドをお見せします。入試に向けてやるべきことと大まかなスケジュールがわかります。
やるべきことは、大きく分けると6つ。まず情報収集ですが、オープンキャンパスや説明会に行くのも情報収集の一部ですね。そこから筆記試験の対策をし、研究計画書を書いて、様々な提出書類を準備して、面接に備えます。スケジュールでは、筆記試験の対策をしながら研究計画書を書き終わらなければいけない時期に差し掛かっていますね。
試験の内容は、大きく分けて書類選考と実地試験です。試験対策のTipsも、えれキャリの記事の中からピックアップしました。
書類選考では、志願理由書と研究計画書という2つが課されるされるパターンが一番多いようです。ただし、研究計画書の中で志望理由や自分のキャリアについて書かなければいけない大学院もあります。書式はまちまちです。
いずれにしても、研究計画と志願理由、それに自分のキャリアの棚卸しという3つを考えて書類選考に臨むことが必要です。
書類選考以外に実地試験として、小論文や面接、筆記、英語の試験などがあります。実地試験については今回取り上げませんが、えれキャリのメディアに記事がありますのでぜひ読んでみてください。
教授に聞いた「研究計画書4つのポイント」
研究計画書の全体像についてお話しする前に、また皆さんに質問なんですが、研究計画書を書く上でやってはいけないことは何だと思いますか?
「既に研究されていることをテーマにする」。先ほど新規性・独自性が大事だとお話ししましたし、確かにそうですね。「研究しきれないほど大きなテーマを置いてしまう」。これも気をつけたいですね。実際に修論を書く期間は半年から1年程度ですから、あまりに大きなテーマを掲げてしまうと書ききれない可能性があります。
「テーマが曖昧」。そうですね、結局答えが出せる問いはごく一部なので、リサーチクエスチョンを明確に定義することも大事です。
さて私の答えですが、研究計画書を書く上でやってはいけないのは、「何のために書くのかという目的を理解せずに書き始めること」。当然のことながら、これだけは絶対にNGです!
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大学院が見ているポイントを踏まえた上で研究計画書を書けば、限られた時間の中で最大限のアウトプットができるはずです。ある教授によれば、ポイントは4つあります。
第一に、研究テーマが大学院の専攻と一致しているか。基本的なことですが、そもそも一致していなければ指導できる教授もいないし「ここでは研究できません」と門前払いを食らってしまいます。また、大学院の名前や肩書き欲しさで志望している可能性がないかという点も、判断しているそうです。
第二に、経験に根ざした鋭い問題意識を持っているか。先ほど、社会人大学院は個々の学生が自分の仕事に根ざした研究を主体的に行う場所であると言いましたが、自分の経験やキャリアから芽生えた問題意識について「鋭い視点」を持っているか、もポイントになっています。
第三に、研究テーマとキャリアが相関しているか。研究計画書を書くだけなら、自分のキャリアにまったく関係なくても書けますよね。でも、社会人大学院は自分のキャリアの中で芽生えた問題意識を研究する場で、そこが普通の学部から上がる大学院との違いです。国も専門職大学院をキャリアから芽生えた問題意識を研究する場と定義していますので、重要です。
最後は基礎学力、事前学習の程度。これは研究計画書に記載されている参考文献や引用されているデータから判断しているそうです。
皆さんぜひ、研究計画書でこの4つのポイントが見られているということを理解した上で、取り組んでほしいと思います。
4つのポイントを意識して必要要素を書く
では、見られているポイントと書かなければならないポイントの対応表を見てみましょう。
研究計画書では「これまでのキャリア・具体的な研究内容・今後のキャリアビジョン」の3大テーマが問われます。言い回しや順番は大学院によって違いますし、同じ大学院でも年度によって変わることがありますが、大まかに分類するとこの3つに集約されます。
「これまでのキャリア」では、研究テーマとキャリアの相関が見られています。「研究内容」では、テーマと大学院や専攻が一致しているか、経験に根ざした鋭い問題意識を持っているか、基礎学力があるかどうか。「今後のキャリアビジョン」では、研究テーマとキャリアの相関、特に研究が本人のキャリアにとって今後プラスに働くのかどうか、見られています。
最後に、研究計画書のまとめ方について説明します。これも、えれキャリの記事からの抜粋です。
導入は課題感の主張ですね。自分のキャリアや経験を通して、なぜこういう課題感を持ったか、なぜこのテーマを研究すべきなのかを主張します。さらに展開部分では、この研究を行うことが所属している企業や世の中にどのようなメリットがあるのか、主張します。研究の新規性や独自性・論理性・作用性も影響してきますね。そして最後に研究方法、例えば質的研究か量的研究か、仮説などを書いてまとめる流れになります。
お見せしたスライドはこの後参加してくださった皆さんに共有しますので、ぜひ参考にしてください。
これから青木さんが、具体的な書き方やテーマの見つけ方、深堀り方法などを事例を交えて話してくださいますので、イメージが湧くと思います。青木さん、よろしくお願いします。
●Part2 研究計画書を書く上で抑えておくべきポイント by 青木和輝
すべてはテーマ設定から始まる
では、具体的に研究計画書の作り方についてお話しします。
研究計画書で一番大きな壁は、テーマ設定です。志望時の研究計画書に書いたテーマ設定のまま論文を書く人も稀にいますが、入学後も繰り返し悩み抜くのが普通です。ただ、そうは言っても入学前にどのぐらいテーマ設定ができているかは重要な選考基準です。
作成手順は、4ステップです。実務上で何らかの問題意識を抱えていて、それを解決するために大学院に行きたいという方が大半だと思います。最初の段階で、このビジネス上の問題意識を明確に言語化しましょう。その上でその問題意識に関係がありそうな先行研究を探し、読んでいくことになります。
人によりけりですが、最低でも10から30ぐらいの論文を読まないとテーマ設定までたどり着けません。読んだ先行研究すべてをテーマ設定に生かすわけではなく、中には面白そうだったけど私の問題意識とはだいぶ遠いな、といったハズレもたくさんあります。だからこそ、たくさん読みこむ必要があるわけです。入学後も先行研究をたくさん読み込まなければなりません。私のゼミでは最低100は読みなさい、と言われました。入学前から読み込む体力をつけておきましょう。
自分の課題感に沿った先行研究が見つかったら、そこからリサーチクエスチョン、研究テーマを設定します。この時「ビジネス上の課題を学術上の問題に置き直す」ことが必要ですが、これが簡単そうでなかなか難しいところです。後ほど詳しくお話しします。
テーマを設定したら、課題解決のためにどのような調査をするか見通しを立てます。
この4ステップを歩めば必然的に、今までの経験や将来のキャリアと研究テーマとの間で一貫性が取れるはずです。
テーマを自分や自社から切り離して 抽象度をあげて
さて、先ほどの「ビジネス上の課題を学術上の問題に置き直す」とは具体的にどんなことなのでしょうか。都立大の水越先生のブログには「自分の問題から(少しだけ)切り離せ」と書かれています。これ、非常に的確な表現だと思います。
実務上の難しい問題の解決を目指すのがビジネススクールでの研究ですが、単にコンサルタントのように問題の原因を指摘し解決法を考えるといったアプローチを取るのではなく、その問題を一度当事者から少し切り離す、実務からは少し離れたところから捉え直すということが一番のポイントです。そうすると、それなりに抽象度が上がった問題設定、リサーチクエスチョンが導き出されるんですね。
さらにこの段階で問題設定できて終わりというわけではなく、この問題設定で本当にいいのか、ずっとずっと問い続ける。実際に調査し論文を書いている間も、ずっと繰り返していく必要があります。だからこそ入学前に、どのぐらい置き直しができているか注目されるわけです。
もちろん研究計画書だけでなく筆記試験、志望動機などとセットで評価されるので必ずしもここまで高度な問題設定ができる必要はないかもしれません。でも、合格の確率を上げるためにはやっておいたほうが良いので、やや抽象度が高くわかりにくいかもしれませんが、後でスライドを読み返して、咀嚼していただければと思います。
一貫性を持つ・研究内容に重点を置く
次に、実際の作成作業のポイントを作成前、作成中と作成後の3段階で説明します。
作成前に最も意識するべきなのは、内容の一貫性です。これはどこの志望校であろうと同じで、先ほど秋山さんがおっしゃったように、なぜその大学院でなければならないのか、これまでのキャリアと修了後の展望まで一貫していることが必要です。
ただし、一貫性の表現は志望校ごとに期待されるレベルが異なります。先行研究をある程度理解しているレベルでいい大学院もあれば、都立大のように学術研究としての新規性や話題性が必要な大学院もあります。筑波など、今すぐにでもこのテーマで研究できるぐらいのレベルを求められるところもあります。志望する大学院が求めるレベルを調べ、ゴールを見極めたら、とにかく書いてみることです。頭の中でいくら考えても深まらない。自分の言葉で表現してみて初めて人とも共有できますし、アイディアを深めていけます。書いてみると「この問題設定はちょっと違うかな?」と気づいて、検討することもできます。書けるところから、どんどん書き始めましょう。
書く段階で陥りがちなのは、背景に力を入れ過ぎてしまうことですね。ビジネススクールに行かれる方は実務上で問題を抱えているので、テーマの背景については非常に流暢に書ける人がほとんどです。ただ、研究計画書は文字通り研究の計画ですから、背景より研究の内容、問題設定や問題解決のためのアプローチ方法がコアになります。背景は簡潔にまとめましょう。
専門外の人にもチェックしてもらう
書き終わったら、複数の方に見てもらうのが一番大事です。予備校や修了者だけでなく、まったく専門外の人にも読んでもらってある程度は理解可能か、確認してもらいましょう。面接官の先生方は皆さんの業界の専門知識を持ち合わせていないケースがほとんどですから、問題意識の背景を含めて自分と異なる専門分野の人にもちゃんと伝わる文章か、チェックが必要です。また、このテーマ設定でいいのか、そもそもこの大学院が適しているのかという点も、この段階で再度考えてみましょう。
そして最終的に修士論文を書く時は、研究方法や既存研究との関係についてなどのポイントが審査されます。これらをクリアする研究計画書が入学時に必要かどうかは、大学院によって異なります。入学後に考えていけばいい大学院もありますので、志望校が要求するレベルを確認してください。
指摘をどう反映するか判断して修正
私が出願した時、都立大では研究計画書のフォーマットが指定されていました。まず志望理由が1ページ。研究テーマと研究の意義、先行研究、関連した職務経験、研究方法を盛り込んで4枚以内で書く指定です。大学院によってレギュレーションがある場合は、それに沿って書く必要があります。章立て、ページ数などまちまちですのでよく確認して取り組みましょう。今日は私の研究計画の紹介ではなくあくまで書き方の紹介ですので、内容については後ほど読んでいただければと思います。
背景は端的に、研究計画は現実的に
「研究テーマ」については「リサーチクエスチョンの形になっていることが望ましい」と提示されているので、それに則って書いています。私の場合、テーマは最終版とドラフトでほとんど変わっていません。「研究背景」は1ページに満たないぐらいのボリュームです。図を入れた方がわかりやすいなら、私のように入れても良いと思います。
「研究内容」では、トピックを3つ挙げました。3つぐらい書いておけば、どれかそれなりに使えるものがあるだろうと考えたからです。実際に修士論文では、2と3を半分ずつ採用しました。「読んだ文献」は実際に読んだものをその通り書けばいいと思います。受ける研究室の先生の関連著書があるなら、必須ではありませんが入れておきましょう。「職務経験」もそのまま書けば良いと思います。
「今後の研究計画」では、実際に研究がちゃんと成立するかというところが見られています。修士論文を書く期間は1年程度ですので、その間で実現可能な内容になっていることが大事です。皆さんも実務で経験があると思うのですが、短期間の中で大きな手戻りがあるとリカバリーが難しいですよね。研究でも同じように、ある程度確度の高い方法を想定する必要があります。研究指導に確度の高い方法が示されてきますが、この段階でも意識しながら書いておくといいと思います。この後は参加されている皆さんの質問やニーズに合わせて進めますので、一旦秋山さんにお返しします。
秋山:では、ここから皆さんにいただいた質問にお答えしていきます!
●Q&A 質疑応答
Q1 先行研究がすべて海外の文献でも問題ないでしょうか?
青木:問題ないと思いますよ。
秋山:そうですよね。むしろちゃんと読んでいるというアピールにもなると思うので、積極的に海外文献を入れていいのではないでしょうか。
Q2 論文を効率よく見つけるスキル、検索ヒット率を上げる良い方法はありますか?
青木:とりあえず何か一つ、近そうなものを読んでみる。とっかかりになる論文を見つけたらその参照文献から当たってみる、また論文の冒頭の要約に列挙されているキーワードを使って検索するといいのではないかと思います。
秋山:その領域の論文をまとめた論文、論考論文を読むのもお勧めです。領域に関わることを網羅的に見つけることができるので、効率がいいと思います。
Q3 研究の進め方や想定される成果は、どのように設定すればいいでしょうか?これから研究することなのでいまいち成果の設定がイメージできません。
青木:いわゆる「仮説」に当たるものですね。問題設定したら、なんとなくこうなるだろうという仮説は、ある程度頭の中に浮かぶだろうと思います。大事なのは一貫性で、その仮説に対し論理立てて「こういう理由だからこうなるんじゃないか」とちゃんと説明できる必要があります。なんとなくこう思う、では弱いと思いますね。
秋山:たぶんリサーチクエスチョンが明確なら、自ずから成果も明確になるのではないかと思いますね。私の研究計画書を例に説明します。
テーマは「個人の自己実現と会社の事業成長を両立するためにはどうしたら良いか」です。先行研究や自分の会社がやった調査をもとにキーワードを導き出し、「自分が意義を感じる仕事に携われていたり、周囲から承認されている状況が続くと自己実現が進み、それが事業の成長につながる」という仮説を導いたんですね。まずこの仮説があり、それを明らかにするために以下のような調査を行い相関分析をする。この相関が有意であれば、仮説が正しいと証明されるわけです。
今から研究するわけですから「成果」は書きづらいものですが、「A or B、C or D」というようにリサーチクッションを論理立てて書ければ成果も書けると思います。まずは、とにかく研究テーマをちゃんと結論を導き出せるレベルまで絞り込むことが大事だと思います。
Q4 事前に研究室を訪問して、研究計画書を見てもらったりましたか?
青木:いや、僕はしてないですね…研究室訪問のシステムがある大学院も存在するんじゃないかと思うので、大学院側に問い合わせてみたらどうでしょうか。
秋山:教授にコンタクトしちゃダメという大学院もありますし、院生ならOKという大学院もあるみたいです。私の場合は一期生なのでそもそも研究室がまだ存在せず訪問できませんでしたが、東大の物理系の研究科に進学した友人は教授に研究計画書を見てもらってましたね。。色々なパターンがあるので、まずはコンタクトを取ってみることをお勧めします。
Q5 先行研究として検索した文献の価値はどのようにして判断したらいいのでしょうか?
青木:価値…難しいですね。どういう目的かによりますが。
秋山:よく言われるのは、引用数ですね。それから掲載されているジャーナルのランク、ちゃんと査読を通っているか。その3つぐらいだと思います。
Q6 先行研究はどうやってまとめればいいのでしょうか?
秋山:スプレッドシートやEvernoteでまとめている方もいらっしゃいますが、私がお勧めするのはPaperpileというサービスです。
有料サービスで年間3,000円ぐらいかかりますが、登録するとGoogleの拡張機能によって1クリックで論文情報とPDFを取得できます。アカデミックでは論文引用の書式に面倒なルールがあるんですが、Google ドキュメントで書く場合は特に、Paperpileを使えばすごく簡単です。
Q7 自分の研究テーマが広範囲にわたるので、どこにフォーカスするか決めきれません。
青木:実際に私の同期で、経営戦略と組織両方に興味があるという人がいましたね。でも、最終的にはどちらかに決めなきゃいけない。この研究室ならどんなテーマが研究できるのか、考えてみるのも一つのやり方だと思います。
Q8 大学院の志望動機について。もともとその大学院に唯一性があればいいのですが、そうでもない時はどう書けばいいですか?
秋山:ちなみに青木さんの場合は卒業した学部の修士を受験されたわけですが、絞った軸や背景はありましたか?
青木:わかりやすいのは「この先生の研究室で研究がしたい」という志望動機ですね。そういう先生を探すのが難しい場合は、研究室を選んだ理由の他に何か他の理由をつけ加えておけば良いのでは?「この授業がおもしろそうだから」というのもいいかもしれません。
秋山:なるほど、体験授業で受けて面白かった、とかですね。アドミッションポリシーを参考にしてもいいかもしれませんね。どんな人を求めているか大学院が明言しているので、それに共感しているのであれば取り入れて書けばいいと思います。
●CLOSING
秋山:皆さん、たくさんの質問をありがとうございました。青木さん、1週間前に突然巻き込むという暴挙にもかかわらず、貴重なレクチャーをありがとうございました。
青木:こちらこそありがとうございました。参加者の皆さんに、何かしら持ち帰っていただけるものがあればうれしいです。今後は研究計画書の添削についても、えれキャリさんを通してご相談いただければと思います。
秋山:「えれキャリ会」は、これからも月1回のペースで開催していきます。えれキャリ会に参加していただいた方は、トライアル価格でラーニングコミュニティ「えれキャリ+(プラス)」に参加できますので、ぜひご検討ください。
では、また皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!ありがとうございました!
ラーニングコミュニティのお知らせ🐘
Elephant Careerでは、社会人大学院受験を応援するラーニングコミュニティ、えれキャリ+を運営しています。2ヶ月間の短期集中で、読書会をベースに入学後も役立つ自律的な学びをサポートします。
その他には、実務から芽生えた課題感やモヤモヤを研究計画書に仕立てるお手伝いや、キャリア棚卸しでなぜ今大学院が必要なのか、一緒に言語化していきます。ただ受験に合格するだけではなく、本質的にみなさんのキャリアにとって社会人大学院へのチャレンジがプラスになる伴走をしていきます。
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