国内MBAの価値を証明する 青山学院大学国際マネジメント研究科

社会人大学院の経験談を紹介する「先輩インタビュー」
今回は、青山学院大学国際マネジメント研究科MBAコース(ABS)に在学中の山鹿 祐綺さんです。

コロナ禍にMBAを取得する事を志し、大学院入学と同時に外資系広告代理店に転職。転職活動の中で、日系企業と外資系企業の間に存在する“MBAに対する認識のギャップ”に驚かされたそうです。

年上の同級生たちともフラットな関係を築きながら、人間力を磨いている山鹿さん。自分が成長し続けステップアップすることで国内MBAの価値を示したい、と修了に向けてパワフルに駆け抜けていらっしゃいました。



山鹿祐綺さんプロフィール

1992年生まれ。愛知県出身。幼い頃からサッカーに明け暮れる。中学卒業と同時に親元を離れ県外の高校へ越境入学。3年間サッカー漬けの毎日を送る。大学時代も4年間サッカーを続けるが、卒業時にプロのチームのセレクションに落ちたことで現役終了を決断。その後、公立中学の教員を経て、第二新卒で広告業界に進む。広告制作会社を経て現在は外資広告代理店にて営業として職務に従事する。

卒業・修了した大学・大学院:青山学院大学国際マネジメント研究科(ABS)
入学年月(年齢):2021年4月(28歳)
修了年月(年齢):2023年3月(30歳)

「経営を学びたい+キャリアアップしたい」がMBAへのモチベーション

—————まずご経歴と、MBAを目指したきっかけを教えてください。

僕はいま広告業界で働いているのですが、広告キャリアのスタートは、広告制作会社です。第二新卒で広告制作会社に入社して、CMプロデューサーを目指し日々仕事に取り組んでいました。当時はとにかく忙しくて、毎日ひたすら目の前の仕事をこなすだけの状態が続いていました。

そこから3年ほど仕事に忙殺されていたのですが、コロナが蔓延し始めて自分の時間が持てるようになってきた頃、改めて「あれ?この仕事って何の為にやっているんだっけ?」「この仕事って、会社から見た時にどのような役割を果たしてるんだろう?」と考えるようになりました。その時にふと気づいたのが、僕はそもそも会社の仕組みを全く知らないということでした。会社の仕組みがどのようになっているのか知りたい、と言うか会社員として会社の経営を学ぶことは必要不可欠な事なんじゃないのか? そんな思いが芽生えました。

学生時代はサッカー選手になるか、教師になるかの二択だったので、MBAのことは何も知らなかったんですが、たまたま上司のデスクの上にあったビジネス雑誌をパラパラ見ていたら「MBAの取得はキャリアアップにつながる」というような記事が載っていて、そこで初めてMBAというものを知りました。会社のルールについて知りたい・学びたいと思うのと同時にキャリアアップも考えていたのでそこでMBAを取得する事に興味を持ち、大学院の受験を志したという経緯です。



—————ご自身の課題感(経営学を学びたい)とキャリアアップしたいという気持ち、それぞれ異なるモチベーションがMBAでつながった、ということなんですね。

そうですね。ただ周囲にMBAを取りたいと言ったら「MBA?名前は聞いたことあるけどイマイチ分からない」「MBAって意味あるの?」という反応でした。会社からは、大学院に通うなら広告業界の最前線で働くのは厳しいからバックヤードでアルバイトとして働くことになると伝えられました。平日の夜は仕事ができないことに加え、土曜日も講義があることを考えると、会社としては当然の判断ですね。



—————そうなんですか?!

会社として当然の判断だと思います。同時に大学院に行くのであれば勉強を第一に考えて欲しい。という優しさもありました。ただ自分としては、2年間大学院に通うとしても、仕事も最前線でやりたい気持ちが強かったのでどうしようか?と迷いました。

会社は大学院に受からなかった時に備えてくれて、籍は残しつつ、もし落ちたらそのまま会社に留まる体制を組んでくれました。当時の上司の方々には1年目から毎晩のように飲みに連れていってもらい、僕の性格の芯の部分(一回やってみなきゃ納得しない性格)も理解してくれていたので、最後は応援してくれました。(お守りを頂いたり、応援用のインスタアカウントを作ってくれたりして嬉しかったです!)



—————いい会社ですね!



日系企業では敬遠され外資には歓迎されたMBA取得

—————合格した場合のことを考えて、転職活動もされていたんですか?

はい、正確には合格してから、新しく最前線で働ける場所を探してました。転職活動中に一番驚いたのは、日系企業と外資企業ではMBAに対する評価がまったく違うということです。MBAって何なの?みたいな日系企業も結構多かったですし。ある日系の広告代理店では、最終面接まで行った段階で「大学院に通うなら仕事にフルコミットできないので、2年後にもう一度受け直してくれ」と言われました。履歴書提出の段階から、2年間は平日の夜と土曜日はフルコミットできないと伝えていたので、なぜこのタイミングで?と思いましたね(笑)。

そんな感じで路頭に迷う危機感を感じていたら、友達から「海外ではMBAは高く評価されるから外資系の企業はどうなの?」と言われ、確かにそうだな、と思い受けてみたら、本当に反応が全然違いました。日本企業ではあれほど足を引っ張っていた大学院との両立が外資企業では「MBA?それはいい、ぜひ行きなさい。全力でバックアップするから一緒に成長しよう」と言われて。MBA大歓迎、という反応だったんですよ。



—————最終面接ということは、かなり役職として上の方が出てきているわけですよね?そういう方たちがMBAに対してこれほどネガティブとは!外資とそんなに違うなんてショックだなぁ……

外資系のマネジメントレベルの人たちは、ほぼMBAを保持されています。恐らく、外資系の企業ではMBAホルダーでなければ経営幹部にはなれないのだと思います。

結局、大学院に通い始めて少し経ってから外資系の広告代理店に転職しました。僕の今までの経歴を評価してくれて、MBA取得中でも最前線で働けて、結果的に良い方向に進めたのかな?!という感じでしたね。



—————労働慣行も日系と外資では違うでしょうし、外資系の企業は会社以外で学ぶことを強く推奨する文化があるんですね。

そうかもしれないですね。あと労働時間の面でも驚きました。外資は基本は残業無しで、やる事は時間内に終わらせる。会社として儲けの無い仕事は受けないというスタンスが、強かったです。



英語力向上とSDGsマーケティングの学びを求めて青学へ

—————大学院選びの軸は何だったんでしょうか? 

軸は2つあります。

1つめは、青山学院大学が英語力を重視する大学だったことです。それは大学院も同様で大学院の卒業要項には「TOEIC730点以上を保持すること」という基準があるんですよね。外資企業に入ったタイミングで英語力を高めたかったので、これがひとつ目の理由です。今まで逃げてきた英語にも取り組むしかない、という環境に進みたかったんです。

2つめは、SDGsを活用したマーケティングを研究するゼミがあったからです。現在は興味があったそのゼミで、SDGsコミュニティ・マーケティングに関して学んでいます。



—————授業の取り方や勉強時間のやりくりなど、スケジュールについて教えてください。

人にもよりますが、平日は週に3〜4日+毎週土曜日も講義がありますので、大体週5日程度、大学院に通っています。2年生の後期になると講義は週3日程度まで減ります。2年の前期が終わるまでは大体18:30〜22:00まで講義を受けて、そのあとは家で宿題をして終わるのは24時ごろ、テスト期間は毎晩2時〜3時まで勉強していました。

講義はハイブリッド方式(リモートで参加する人もいるため毎回の授業が録画されている)なので講義の録音データがアップされるのですが、それを職場までの移動時間などに聴いて少しでもインプットする時間を捻出していました。結果的に聴いている最中に気になることがあると調べて、そこから新たな知識が増えていくので良かったです。



—————修了まであと少しですが、一番の学びだと思っていらっしゃることは何ですか?

一番は決められないですが本当に色んな角度から学びがありました。

知識としては、アカウンティングが大きな学びでしたね。財務諸表の分析、企業の財布事情を紐解くことで、企業がどのような状況に陥っているのか、どのように成長しているのか、それらの状況を鑑みてどんなふうに変えていくのが良いのか、さらにどの企業に投資をすると良いのかがわかってきます。

仕事としては、同級生も先輩後輩も非常に優秀で刺激をもらえることですね。同級生の半分以上がGoogleやAmazon、PWC、EYやデロイト、サウジアラムコなどが外資系企業にいる方たちで、色々な話が聞けて学びになりました。同級生に外資企業の方が多いのは、青学が英語に力を入れているからだと思いますね。英語で行われる授業が多いですし、英語でのプレゼンテーションも求められます。英語に対して貪欲な方が多く入学していらっしゃるんだと思います。

その他には政治家を目指してる方や事業承継の準備をしている方、起業を志す方など本当に色んな方がいて面白いですね。

人間的な学びも大きいですね。同級生の平均年齢が40歳ぐらいなんですけど、僕は入学時に28歳だったので、周りはほとんど年上です。そういう人たちと利害関係なしの同級生という立場で接することができるのは、本当にいい経験になっています。

様々な企業の中間管理職・経営者・事業承継者など社会的立場が高い方々が、一生懸命勉強しているだけでなく、家庭にもしっかりコミットしている。僕も今、人間としてもっと頑張らなきゃ、もっと追い込めるはずだ。そんなふうに思うようになりましたね。



—————青学はお洒落な人が多い、という話を聞いたことがあります。

他の大学院を知らないので何とも言えませんが、スマートな人が多いような気がします(笑)。これは自分の感覚なんですが、お洒落でカッコいい人って仕事もできるイメージがありますよね。ちゃんとセルフマネジメントできている、ということかもしれません。



—————逆に期待していたのに得られなかったこと、裏切られたと感じたことはありますか?

経営学を体系的に学ぶことはできるんですが、セルフマネジメント力が強い人なら、基礎科目に関しては知識として本でも学べるんじゃないか、とは思いました。ただ、本で学んだ知識をどう活用するかは、大学院でなければ得られない部分ですね。



受験時にKALSで学んだことが知識のベースになった

—————実験の前に、特に準備したことはありますか?

河合塾の予備校・KALSに通って、経営学とは何ぞやというところから学びました。アカウンティングやファイナンスなど数字を扱う分野は除いて、マーケティング戦略や組織戦略について基礎知識を叩き込んでいただいたので、大学院に入った後で役に立ちましたね。例えば授業でフレームワークが出てくると「ああ、あの時KALSで鄭(てい)先生が言ってたアレだな」とわかるので、下準備としてすごく良かったと思っています。

マーケティングについても定義からしっかり教えていただいたので、受験の面接にも応用できました。研究計画書にSDGsマーケティングに関心があると書いていたので、最近面白いマーケティングをやっている企業はあるか、仕事でどんなマーケティング戦略に携わっているのか、など聞かれたんですよね。こういう質問にも答えられたのは、KALSで基礎を学んでいたからだと思っています。



—————ちなみにKALSの学費は、いくらぐらいだったんでしょうか?

僕の場合、知識のインプットと小論文対策・面接対策をセットにした3ヶ月のコースで、30万円ぐらいだったと思います。知識のインプットについては、15回ぐらいしっかりした授業がありました。動画配信だけの予備校もあるようですが、KALSは違いました。

冬の入試に向けて9月中旬からKALSに通っていたので、受験まで3ヶ月しかなくて正に崖っぷちでしたね。ちょうどコロナ禍で学び直しのブームが来ていたので倍率も3〜4倍に上がっていて、本腰入れて勉強しなきゃ落ちる。と危機感を感じたのを昨日のことのように覚えています。在職していた会社が受験勉強のために業務を軽減してくれてたこともあり、最後はなんとか合格する事ができました。ちなみにKALSで出会った人たちの中には、今でも懇意にしていただいてる友人もいます!



—————他の大学院の人たちに出会えるのはいいですね!

青学に進学した人と早稲田に進学した人なんですが、今でも連絡を取り合っています。



—————学費について、奨学金など取得されましたか?

訓練給付金は申請しました。2年で卒業すれば121万支給されます。学費の総額が350万、それに教科書の購入費など入れて2年で合計370〜380万ぐらいだったので、奨学金を活用すると実質250万位ですかね? 当時は貯金を崩しても全然足りず親から借金しました。親には「MBAを取ったら必ず返すから」と言って貸してもらい、やっと今年の10月に親からの借金と学費を完済しました。



国内MBAの価値の高さをステップアップして証明する

—————修了後にチャレンジしたいこと、成果として残したいことなどありますか?

実は大学院に入ってから別の外資系広告代理店に転職したので、ここで早くレベルアップしていきたいと思っています。幸いにも得意先やチームメンバーに恵まれていて、みんなが色々教えてくれます。まだ入社して4ヶ月ですが、難しい仕事の矢面に立ち色々と経験させてもらっているので、同期入社の人の3倍くらいのペースで色々吸収できていると思います(笑)。その分、キツいことも多いですが、とりあえずやってみる精神で日々全力で仕事に取り組んでいます。

今は広告戦略の立案と実行が業務の中心ですが、より深い、広告戦略以外の部分に関わるコンサル的な案件もあるので、MBAを活かしてそこまで幅を広げていきたいですね。

キャリアプランとしては、やはりキャリアアップは考えています。特に給料は社会の自分に対する評価だと思っているので、上げたいですね(笑)。



—————給料は自分の価値の基準として大切なことですよね。

お金は大事ですよね。広告業界に進む前に実は1年間だけ教師をしていたことがあるんですが、よく子どもたちに「先生、給料いくらもらってるの?」と聞かれることが多かったんです。

そこで思ったのは「なるほど、子どもでもこんなにお金に関心があるんだ」ということでした。お金を稼ぐのは大変だということは、全世代が知っている。そう気づいた時に、あらためてお金って大事だなと感じました。

お金よりも大事なのはやりがいだよ!と言う人もいますが、それは自分がそれなりに稼げる人、稼いだ人が言わなくては説得力がありません。僕もお金より大事なものがある!と心では薄々気づいているのですが、この気持ちはまずは自分がそれなりに稼いでから言いたい。そのほうが説得力があるし、カッコいいな、と思います。



—————なるほど、やれるかどうかやってみてから、ということですね。

国内MBAって価値があるの?と聞かれることもあるんですよ。でも僕自身、キャリアアップできていますし僕の周りも同じです。周囲でMBAは意味がないと言っている人の大半は、MBAホルダーではないと思います。真剣に2年間仕事と両立して毎日勉強したことに、意味が無いはずがありません。必ず自分の何かしらの能力が養われています。ですからそういった無責任な人たちの言葉で、誰かのMBAに対しての興味関心が削がれている可能性を考えると非常に残念だな、と感じます。

また、MBAだけでなく社会人の学び直しって意味があるのか?と言われることもありますが、私はあると思います。まず何歳になっても学ぶことをやめない人は素敵ですし、そこで学んだ知識が例え仕事で活用する機会が無くても、必ず違う場面で活用する機会が訪れると思うからです。そして面白いことに、忘れかけた時にそのような場面が訪れてそれが人生の転機だったりするから、人生わからないですよね。



人間力が上がる・勉強する習慣がつく→どんどん成長!

—————大学院で学ぶことって、山鹿さんにとってどんなことでしょうか?

人間力を養うことですね。さまざまな立場の方たちとフラットな関係で話をすることによって、さまざまな価値観に触れることができました。勉強だけでなく幅広い経験ができて、人間力が上がったと感じています。30代になる前に大きなことを学べて本当によかったです。



—————具体的な変化はありましたか?

勉強する習慣がついたのは本当に良かったな、と思っています。周囲が飲み会に行ったりYouTubeを観ながらダラダラしている時間はチャンスです。その時間に、自分は勉強する。それが結果にもつながります。こういった価値観をあらためて感じて実行し続けたこと、そして結果になって返ってきた成功体験を得られることが一番いいことかもしれません。



—————最後にどんな人に進学をすすめますか?

キャリアアップしたい人ですね。しっかり勉強したことを活かす事が出来れば絶対にキャリアアップできるよ!と言いたいです。

MBAに行って強制的にでも勉強して、知識が増えていろいろな人と出会って、人間として幅が広がって魅力的になったら、社会が放置しておかないと思います。

あとは今20代後半の人。同級生には20代でMBAに入学してるのが羨ましい。と言われますが、僕からしたらさらに僕よりも低い年齢で入学している子たちが羨ましいです。とにかく若いうちに年上の素敵な方と同級生になって人間的に色々学べるのでおすすめです。



—————呼ばれる人になりますよね。

結果的にキャリアアップして人生も豊かになって、どんどん成長していけると思いますね。



—————雪だるま式の成長ですね!ありがとうございました。






執筆者:八重田 暁子



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