現実世界からの地続きMBA。都立大MBA

働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」

今回は、税理士事務所・監査法人の代表を勤める坂本さんに話を聞きました。
戦略的・現実的な人生選択の裏には、会計・監査領域の未来を見据えた、坂本さんの思いがありました。

坂本兼一さんプロフィール

株式会社TAMAアカウンティング代表取締役
多摩監査法人 代表社員
坂本兼一税理士事務所所長

https://tama-accounting.jp/
http://tamaaudit.or.jp/


長崎県出身
2008年 東京大学経済学部 経営学科卒業
2011年 監査法人に就職
2019年 独立
2020年 東京都立大学MBAに進学し、2022年3月に修了

社会人大学院の本音と建前

———— まず、MBAを検討された理由を教えてください。

ぶっちゃけた理由は、箔をつけたいと思ったからです笑。税理士事務所・監査法人として独立したこともあり、お客様や見込み客の方々に良い印象を持ってもらえるのでは、と思いました!表向きの理由は、最前線の監査理論を学び、会社やお客様に還元したい、ということです。国公立なので学費が安いのと、家から近いから都立大を選びました。南大沢に住んでいて、都立大の学部キャンパスがすぐ近くにあり、ジムや図書館を使えたらいいな、なんて。でもコロナウイルス感染拡大でジムは閉鎖になってしまったんですけどね...とにかく、自分の生活スタイルからなるべく無理せずに通える場所を探していました。


———— これまた現実的な理由ですが、仕事と学業だけでも大変なので、なるべく生活を安定させるという視点は欠かせないですよね。都立大だと、高尾先生が有名ですが、どんな教授から学べるかなどは意識されましたか?

それが私、高尾先生の授業うけていないんですよね....先生、申し訳ございません!先生では選ばずに、自分の生活から手が届く範囲で大学選択しました。


———— キラキラわくわく!上昇志向!じゃない現実MBAですね。声をあげにくいけど、求めている人は多いはずです。

「監査人交代研究」から芽生えた経営者としての危機感


———— MBAの中でも、会計学専攻とのことですが、研究はどんな内容を?

研究は「監査人の交代理由についての研究」を行いました。約300法人の監査人交代理由と有価証券報告書の内容を比較し、どんな理由で監査人交代が起きているのかを分析しました。その結果、監査人交代理由に監査報酬への言及がある場合、実際に交代後の監査報酬が下がっているという傾向が見られました。

ただ、つい数年前までは画一的な交代理由しか開示されて来なかった経緯があるんです。そういう意味では、不透明だった交代理由の開示が透明化した、という見方もできます。しかし、監査の現場を知る身としては、市場の番人として質の高い監査を行うためには、正当な監査報酬が必要です。本来であれば、ここの監査法人は質が高いから、報酬が高くてもここにお願いしよう、と選ばれる存在でなければなりません

———— 研究結果を踏まえて、ご自身の事業に変化はありましたか?

まずは監査の質を高めていくこと、価格で切られないサービスを提供するように努めることですよね。あとはこの研究結果を示すこと自体、コンペやお客様への交渉材料になります。単にマーケティングとして価格の安い監査法人を選ぶのは危険ですよ、と謳うのではなく、価格理由だけで監査人交代するのは必ずしも正しくないことを理論的に示すことができます

———— 箔をつけるため、と仰っていましたが実務にもプラスになっていますね。

あとは、実践的な統計手法を学べたことは経営上も有益でした。お客様にデータを見せる時にも、色々な切り口で示すことができます。

さまざまな価値観の中で新しい視点をインストールする


———— 2年間の中で、坂本さんご自身が変化するきっかけや、気付きはありましたか?

同じ職業の人が集まりがちな専門職大学院とはちがい、MBAはさまざまなバックボーンを持った人たちが集まるので、その中で議論するのは学びがありましたね。都立大は組織行動論やキャリア開発論を専門とする人が多い中、私は会計学を専門としていました。30人の同期の中で会計学に軸足を置く人は数人しかおらず、マイノリティなんです。僕はどちらかというと、ファイナンス視点で戦略的に事業を大きくする視点で考えますが、都立大MBAの多くの人は組織論に造詣が深く、視点は組織や個人寄りになる。授業の中でケーススタディやグループワークをすると、専門性の違う人たちがそれぞれの前提や思想をベースに話すので、ぶつかることもあります。そんな闊達な議論の中で揉まれて、新たな視点を取り入れることができました。組織優先で考える人達の存在は、自分で会社経営をする上で、必要なインサイトでした。大学院での出会いは貴重です。卒業後もSlackで繋がっています。

———— 生活スケジュールはどんな感じでしたか?

都立大の授業は夜のみなので、昼の仕事に影響することはありませんでした。一年目はほぼ毎日授業を入れて、なるべく多くの単位を取るようにしました、週4-5コマですね。 二年目はその分授業は少なく、好きな授業を数コマとゼミのみでした。自分の専門に近い財務・ファイナンスを多く選択していました。専門性に近くて得意な科目は、授業中にあらかた片付ける。苦手な数学系の科目は、週末にまとめて勉強するというサイクルでした。箔を付ける、会計理論を学ぶことが目的で進学したので、新しい知見を身につけるような科目はあまり受講しませんでした。

———— 徹底してますね、生産性高い科目選択スタイル。時間軸が前後してしまいますが、受験準備はどんな風にされましたか?

大変恐縮ですが、ノー勉です。会計士という専門資格を持っているので、すでに勉強を終えていたというのが正しいかもしれませんね。都立大の専門科目は、経営戦略論・経営組織論・マーケティング・会計学・データサイエンス・数学から一科目選ぶ形式で、私は会計学を選びました。

簿記三級を受けるつもりで大丈夫

———— 坂本さんのように、仕事や生活とリンクした現実的な進学理由を持っている方はなかなか表には出てきてくれないので、とても参考になることばかりでした。坂本さん目線で、どんな人にMBA進学をおすすめしますか?

お金と時間さえ工面できれば、僕みたいな省エネ人間に是非おすすめします。遠隔授業の大学も増えていますし、通うハードルも下がっています。簿記三級をとる、くらいの気持ちで通ってみてください。入ってみると、割と無理なくたくさんの学びを得られます。

私も、簿記三級を受けたつもりが、一級レベルの学びがあった。そんな感じです。ネットワークが広がり、今後の実務の課題も見え、良い財産になりました。

———— 現実世界からの地続きMBA、もっと広まって欲しいですね。ありがとうございました!

東京都立大MBAの先輩インタビュー

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