MBAとMFA、わくわくを大切に軽やかに学んでいく。京都芸術大

働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」
今回は、「グラフィックレコーディング≒わくわく記録術」を広めることをライフワークに活動している岸智子さんです。
会社勤めのかたわらで、産業能率大学大学院総合マネジメント研究科に進学した岸さん。2010年に修了後、移住などを経て再び2020年に京都芸術大学大学院学際デザイン研究領域に進学されます。グラレコとの出会い、人との出会い、そして2度の大学院進学。岸さんの歩んできた道のりをお聞きしました。

修了大学:産業能率大学大学院 総合マネジメント研究科 総合マネジメント
専攻研究テーマ:特例子会社における社員の仕事観の創出とロイヤリティの関連性
入学年月日(年齢):2008年4月(38歳)
修了年月日(年齢):2010年3月(40歳)


修了大学:京都芸術大学大学院 芸術研究科 芸術環境専攻 学際デザイン研究領域
研究テーマ:個人の主観的Well-beingを高める「小さな習慣」の有効性に関する研究 (チームでの共同研究)
入学年月日(年齢):2020年4月(50歳)
修了年月日(年齢):2022年3月(52歳)

岸 智子さんプロフィール

ワークショップデザイナー
福岡女子大学学び直しプログラムコーディネーター

小売業での販売、店舗企画、マーケティングに従事した後、情報サービス企業の障害者特例子会社で総務、広報、人材開発に携わる。社内研修に対話型のワークショップを取り入れるなど研修の内製化を推進。

2008年産業能率大学大学院総合マネジメント研究科に進学、2010年修了。

大学院修了後は転がるように「二足のわらじ」世界へ。会社員の傍ら、女子大生や社会人のキャリアや働き方に関するワークショップ、理系男子の婚活ワークショップ、生活者視点で社会課題を解決するデザイン思考を取り入れたワークショップを企画、運営。

2013年福岡へ。現在は多様な働き方を応援するコミュニティ(キャリアバラエティ)の運営やグラフィックレコーディングを広めることをライフワークに活動中。


社会人を経て学部3年に編入。広がっていく学びの世界。


———— 岸さんは、産業能率大学と京都芸術大学の2つの大学院を修了されているんですよね!

そうですね。1つ目の産能大は社会人生活をしばらくした後に通信制の学部3年生として編入しました。

産能大の学部では、もともと産業カウンセラーの受験資格が得られるコースに通っていたんですが、そこで人的資源マネジメントの考え方に出会って。今でいうHRM(Human Resource Management)に近いかな。仕事をしながら通っていたのですが、ちょうどその頃、自分のチームのマネジメントでも悩んでいたので「こういう考え方があるのか!」と驚いて。学校で理論を学んだら、それを職場に持ち帰って試すというのを繰り返す日々でした。実際、チームで変化も見られて、学ぶことがおもしろかったですね。

大学院への進学は、意外と成績が良くて奨学金もいただいていたので、もうちょっと先に進もうかしらって。後に、完全に勘違いだったと気づくんですけどね(笑)。それと、学校におもしろい人たちがたくさんいたことも大きかったかな。





———— なるほど。大学院では何を研究していたんですか?

経営学修士(MBA)が取れるコースだったので、経営学の体系から一通り勉強しました。指導教官は企業研修やコンサルティングを行うコンサルタントだったこともあり、いろいろなフレームワークに当てはめて課題解決をするワークショップが1年間ありました。論文は一応書きましたが、実践をアカデミックペーパーとしてまとめるというものでした。秋山さんが通われた立教リーダーシップ開発コース(LDC)に似ていますね。




———— 確かにLDCに近いですね~岸さんがグラフィックレコーディング(グラレコ)に出会うのもその頃ですか?

そうですね。当時の産能大には長岡健先生という方がいらっしゃって、今は法政の経営学研究科ですが。その長岡先生が大好きで、今でもつきまとっているんですけど。先生は最初の授業でお菓子を配っていたり、その進め方に衝撃を受けました。そういった授業の中で「ワークショップ」という言葉に出会い、ワークショップにハマっていきました。その後、青山学院大学のワークショップデザイナー育成プログラムも受講しましたね。こんなに面白い学び方があるのか!と驚きました。

学んだことは即実践と思い、社内でもたくさんのワークショップを開催しました。そのうちに社外や大学の先生から声がかかるようになって、当時はすごい数のワークショップをやってましたね。


———— 長岡先生といえば、みんなのアンラーニング論が最近だと話題ですよね。先生の影響もあり、ワークショップにハマっていき、その中でグラレコを書く機会があった?

そうそう。ワークショップだけではなく、ミーティングの議事をイラスト入りでとっていました。未来のことを語り合う場であり、本来楽しいはずのミーティングなのに、議事録はなんでこんなに硬いんだ!とか思いながら。

ただ、当時はグラレコって言葉も知らず。最初はスケッチブックプレゼンと呼んでいましたね。ワークショップをやるときに、スライド代わりにスケッチブックを使って紙芝居のように手描きで描いたのが始まりです。そのうち、いろいろな場所にスケッチブックを持ち込んで描くようになりました。

これが「わくわく記録術」という名称にもつながっていきます。

教える側になり学びの意欲が再燃


————
そこから2020年に、次は京都芸術大学の大学院に進学されますよね。MBAとは一見分野が異なる領域ですが、進学に至る経緯が気になります……!

先ほどの続きで言えば、大きいのは結婚を機に2013年に福岡に移住をしたことです。がらっと生活が変わったんですね。東京生活は楽しかったんですが、定年まで会社員をする未来も想像できませんでした。個人的には「これもご縁だから行ってみよう」ぐらいの軽い気持ちでしたね(笑)。

移住後は、夫が経営する会社のサポートをしていたんですが、東京の頃と180度違う生活でした。友達もいないし、会社と家とスーパーの往復ばかり。所属もないし積極的に活動もしてなかったので名刺交換も億劫になり、外に出て学ぶことも減っていました。学びに関しては鬱々とした引きこもりのような生活が約1年間続きました。





————
あれだけ外に学びに出ていた岸さんが!そこからの転機は何だったのでしょうか?

青山学院大学のワークショップデザイナー育成プログラムの同期の方が自身で開催するワークショップに声をかけてくれたことですね。その頃はグラレコからも遠ざかっていて、久しぶりにスケッチブックに描いたら「ワークショップって楽しいんだ!」と改めて実感しました

ある日、先ほどの青学のプログラムで一緒だった先輩から「ファシリテーターを探してて」という連絡が来たんです。福岡女子大の学生が企画をしているそうで、一緒に場づくりをして欲しいという依頼でした。やってみてすごく充実した時間でした。その仕事がきっかけである日、福岡女子大の学長特別補佐の方から「社会人向け講座のコーディネーターを探している」と突然メールが届いたんです。

そこから2年間はフルタイムの有期雇用の職員として事務局業務をしてました。経理の伝票を起こしたり、報告書を書いたり、受講生のサポートをしたり、先生たちと一緒にプログラム作ったり。2年間の契約を終えたとき、そのまま職員になる道もあったのですが、時間的に両立が難しかったので一部の講座で教える側にシフトし始めたんですね。

教えるようになって「もっと良い講座にしたい」「そのために学びたい」という思いが強まっていったのがこの頃ですね。





———— 教える側になって、もっと学ぼうと。

というのと、学びに来ている社会人の方たちがすごく楽しそうだったんです!始めたときと比べて皆さんの顔つきがどんどん変わっていくのを間近で見てきました。プログラムの最後にアクションプランを発表してもらうのですが、素晴らしいことに半数以上は修了後も実行し続けて、そのまま起業した方もいて。

でも当時は、進学という選択肢は真剣に考えてなくて……。きっかけは、ある日Facebookで京都芸術大学が芸術修士(MFA)を取れる講座を立ち上げるという広告が流れてきたことです。「デザイン思考×伝統」という言葉が印象的でした。

というのもデザイン思考の講座をちょうど担当していたので、もっと専門的に深く学びたいと思っていたところでした。2年間ガッツリ学べ、かつ完全オンラインとのことで「私のためのプログラムだ!」と勘違いをしてしまい(笑)、他大学と比較検討せずに一択で決めましたね。目的は「福岡女子大の講座を良くしたい」という一点でしたね。



————
ご自身のキャリアがどうとかではなく、純粋に担当されているプログラムのクオリティを上げることにフォーカスして進学を決断されたんですね。

学生と講座設計者の2つの視点で行ったり来たり!


———— 大学院のプログラムはどんな感じでしたか?

芸大ではあるんですが、デッサンのようなものはほぼなかったです。デザイン思考のプロセスを用いて、プロジェクト形式で課題解決の練習をすることが多かったです。もう一方の柱が「伝統」ということで、歴史的景観を自分で一つ選んで、それを利活用する方法を調査・検討してレポートにまとめたりもしました。

ここで学ばなかったら「伝統」について考える機会もなかったと思います。身近な風景の中にも歴史的な資産があることに気づけたので、それはとても良かったかな。

1年生のときは、個人が取り組んだ課題を同じグループのメンバーが読んでフィードバックをしてもらい、それに対してまたやりとりをするっていう演習を延々としていました。
そして学生同士のディスカッションの後、先生からは動画で講評が届くんですね。日々の小さなフィードバックは学生同士、全体的なフィードバックは先生からもらうという学び方でした。





————
岸さんは仕事で大学の講座を設計しているので、講座設計も気になってしまうのでは?

そうそう。あのような学びの形式が成立していたのは、学生が優秀だったのか、自然とそうなるような絶妙な仕掛けがあるのか……とかね。でも結局は、謎なままの部分も多かった。まさに学習者としての自分と運営側を見ちゃう自分の狭間で葛藤がありましたね。加えて、チームに貢献できていないという劣等感もあり、1年次は特に苦しかったですね。

2年次からは、5〜6名のグループワークで一つの解を合意形成しながら作っていくことになりました。グループ演習のみをずっと1年間やっていた感じです。そこから、かな。潮目が変わったのは。
チームのカラーみたいなものがものすごく出ていて、それもおもしろかったです。
グループワークになってからは産能大や青学時代の「自分が知らないことを知る楽しさ」が戻ってきた感覚がありました。



「こういうことをやってきたんだ」って思えること


———— 大学院生活のタイムスケジュールを教えてほしいです。

決められた時間に会社に行く働き方じゃないので参考にならないかもしれないのですが、平日の夜や休日に仕事をすることもあり、大学院の勉強も決められた時間ではしてないんですよね。そうはいっても、レポートの締め切りや修了研究のための毎週末の夜のミーティングに合わせて、この2年間は平日21時以降は予定をブロックして、作業や学習時間に当てていたように思います。





———— この2年間で特に学びになったと感じるのはどのあたりですか?

先ほども少し触れましたが、プログラムの全体像や運営方法などを俯瞰で見ている自分がいたんですね。学び手としての自分と俯瞰で見ている自分、その行き来は苦しみもありつつも私にとっての学びもあったような気がします。まだ自分の中でも消化しきれてないんですけどね。

「あの演習のあのワークを取り入れてみよう」といったような、プログラムで学んだことを分かりやすい形でそのまま自分が教える講座に反映っていうのはないんですけど、エッセンスというか、考え方は活かせそうな気はします。





———— でもこれは結構皆さんおっしゃいます。すぐ仕事に活きるとかではないけど、考え方そのものが変わったという方が多いなという印象です。

それと、自分の不得意なことがスッゴイよくわかるようになりましたね。

同級生たちがものすごくて。能力的に、キャリア的にすごいというのもあるんだけど、努力の仕方が半端ないというか……。「そこまでやるんだ!」って言いたくなるくらい徹底的にやる人たちが一定数いたんですね。もちろん、そつなくいいレポートが書ける人もいて、多分私は後者のタイプ。とはいっても、いいレポートが書けたことはないんですが(苦笑)。とことん深ぼらないし、やり切ることをやらずにきちゃったんだなっていうことに、大学院では強烈に気づかされました。とことんやることや惜しみなく努力することの大切さを知ったことは、一番の学びだった気がします。





———— 一緒に学んだ人の姿勢からも多くを受け取っていたんですね。最後に、岸さんはどんな方に大学院進学をおすすめしますか?

そうですね〜。自分で学習できる人、そして不便をおもしろがれる人でしょうか。特に私たちは京都芸術大学の一期生だったからっていうのもあるんですけど。「きーっ!」てならず、そういうこともあるよねって言えるようじゃないと厳しいかも。でもこれ一期生に関わらずかもしれないですね、仕事と両立していたりすると。





———— 一期生はカオス耐性が求められそうですね。最後に、大学院へ進学してよかったなって思いますか?

言葉を選ばずに言うと、本当はまだよくわからないんです。でも一つよかったなって思うのは、コロナ禍で身動きが取れない2年間に「没頭できること」があったことですね。大学院で自分がアップデートできたかは自信ないです。でも何もない2年間ではなく、自分自身に負荷をかけて、「こういうことやってきたんだ」と言えることがあって、よかったなって思います。



インタビュー・編集:秋山 詩乃
執筆:中田 達大

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