新たな環境での学びが進化を刺激する 早稲田大学ビジネススクール

働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」
今回は、
早稲田大学ビジネススクール(WBS)で学ばれた須藤さんです。

変化を「新たな刺激」と捉え、人生に彩りを与えるエッセンスとして取り込む感性が、端々に光って見えるインタビューとなりました。「人生をより楽しみたくて学ぶ」とは?お話を伺ってみました。

須藤 奨さん

早稲田大学教育学部出身。2016年にLINEへ入社後、プロダクトマネージャーとしてLINE公式アカウントやLINE広告などの法人企業向け製品企画を担当。2020年度より早稲田大学大学院経営管理研究科(WBS)に在学中。

早稲田大学大学院経営管理研究科(WBS)
入学年月日:2020年

マネジメント業務から経営の全体像に興味がわいた入社3年目

————須藤さんが学ぼうと思われたきっかけについてお伺いします。

マネージャーになり、経営について体系的に学びたいと思ったことがまずは大きなきっかけとなりました。LINEという会社は、ほとんどが中途社員で、新卒社員は10%を切るような所なんです。そんな中で新卒3年目の僕がマネージャーになり、自分より年上の方々も含めて事業と組織のマネジメントをする必要が生まれました。書籍などを参考に自己流で試行錯誤もしましたが、最も効果的で効率的な方法は何かを知りたいと思うようになりました。

僕の職種は「プロダクトマネージャー」といって、よく「ミニCEO」なんて言われ方をすることもあります。マネージャーとして組織人事を担当しつつ、プロダクトを作り事業成長させる一連のサイクルに対する責任のある立場となります。経営の全体像を理解したいと思うようになるわけですが、経営者って昇進していかないとたどり着かないポジションですし、入社して間もない人間には分かりづらい。ビジネススクールやMBAに興味を持ち始めたのはそういったタイミングでした。



————LINEさんのインタビューで「自分がマネージャーになった方が良い」とご自身で上に提案なさったと答えておられたのがとても印象的でした。

自分の上司が3チームぐらいマネジメントしていたんです。1人がマネジメントできる人数の限界や、その後の組織の拡大が明らかであったことなどを考え、早めに権限委譲しておく方が組織として良いのではないかと思ったんです。もちろん僕自身もマネージャーの仕事への興味もありました。その時の仕事ですでにマネージャーの補佐などもしていて、イメージもしやすかったですし、できそうだと見込めた、ということもあります。

 今後、事業がより拡大成長していく際に、もっとマネジメントレイヤーを増やしていく方がいいと思ったんです。

 


————これを社会人2年目ぐらいで思っていたというのがすごいですよね。どうしてそういう考え方に?社内にそういう方が多いんでしょうか?

ほとんどが中途社員の方なので、そもそも新卒だからどうという思考にならないんです。普通に自分が1人のビジネスパーソンとしてどうパフォーマンスを出すのかという思考になりやすい環境だと思います。あとは僕がもともと生意気だったということなのかなと(笑)

 


————いや、この生意気度合いは良いですよねぇ(笑)。LINEさんの雰囲気も何となく伝わります。この新卒・中途の割合は、そういったカルチャーにも影響がありそうですね。

そうですね。中途でもみなさん違う企業から来ている方が多いので、それぞれの会社での経験や文化や価値観を持っている。みなさん転職してきてるし、転職する人も多い。そこの流動性がベースとして高いから、自立分散型キャリア思考になりやすい環境なのかもしれないですね。

新しいチャレンジに導かれる成功体験

僕は、同じことをやり続けるのが得意じゃないというか、新しいことに目標を決めて日々やっていきたい性分で、自分の時間の費用対効果を最大化したいって思っちゃうんですよね。1日のtodoリスト作って、どうやったら1番色々できるかな?などと考えたりするタイプなんです。

自分にはやりたいことがいっぱいあるけれど、人生において時間は限られている。これも学びのきっかけになっていると思いますが、経営の体系的なことを学ぶなら若いうちがいいと思った、というのもあります。独身で自分のために割ける時間が取りやすく、体力もあり、その後のキャリアが長く残っているうちにやりたいと思ったんです。そしてそのタイミングが20代だった。




————やりたいことがいっぱいあるっていいですよね。「人生をより楽しみたい」というのも学びのきっかけだとnoteで書かれていたと思うのですが、そのあたりも繋がってきそうですね。

ITの業界にいると、IT界隈の人やPMをやってる人など、必然的に似たような属性の方々との交流が多くなります。それはそれで楽しいのですが、自分自身は転職もしていないため、抜本的に日々やってることが変わることはなく、刺激は減ってくる。

日々を作る要因のひとつが環境だと思ってるので、今まで自分が所属してなかったコミュニティや学ぶ環境に強制的にでも身を置いて、新しい刺激を得たい。それが僕にとっての「楽しみたい」という感覚なのかなと思います。

やりたいことや興味あることって、自分がいる環境でだいぶ変わると思うんですよね。

そういう意味でも、自分が所属するコミュニティを1つに絞りすぎないのがいいのかなと考えています。




————私は社会人6年目になって、やっとこの「絞りすぎないことがいいんだな」と気づいたのですが、須藤さんは生まれた時からこう思ってたんですか?

(笑)どうでしょうか。僕の場合は、子供のころから環境の変わる機会が多い方だったと思います。例えば小学校では4回転校していますし、親の転勤でイギリスに行ったり、大学生の時に休学して留学したり、フルタイムでインターンシップしてみたり。

環境が強制的に変わらざるを得なかった場合もあるし、自分で変えに行った場合もあります。その中で、例えばオーストラリアに留学したりインターン始めたりなどの、自分で選択したことが、自分の人生にポジティブな影響を与えていることが多いんです。

新しいことにチャレンジしたらいいとか、自分がいる場所を変えると楽しいなどを経験的に知っている、というような感覚があります。




————ご経歴について。就職先に選んだのがなぜLINEだったのか、というところを少し伺ってもいいですか?

当時LINEが会社としての成長度合いや勢いが凄かったということが1つ。それから積極的にグローバルに事業を展開していたこと。あとはプラットフォームとして、いろんなサービス、多様な事業展開をしていること。そして働いている社員さんとのフィーリングも合いそうだと思った、という感じです。

とはいえ、最後はノリとか勢いみたいなとこもありましたが(笑)。

LINEの選考がとても早く、最初に内定をもらったんです。僕は教員免許も取っていたので、同じタイミングで教育実習の予定も控えていたんですね。日系の企業の選考シーズンは結局受けず、LINEが良さそうだし、教育実習もあるし、就活に時間を割くより早く終わらせて、残りの大学生活を楽しくやった方がいいかなと思って。




————計画的なのに、すごく享楽的な部分もあっていいですね。面白いです(笑)他に比較検討した大学院ってありましたか?

説明会は、青学と明治と。それからグロービスの単科で財務と経営戦略に通っていたので、そこも検討しました。

指向性的に、あまりアカデミック寄りのところには興味が向かなかったので、一橋やつくばなどは検討に入れず、ハイブリッドとか実務寄りなところを中心に考えていました。




————この軸がもう明確にあったんですね。ブログにも書かれていたと思いますが、この分岐がとてもわかりやすかったです。

一番実務にも長けているし、人もいっぱいいて刺激もありそうだし、面白そうだなあと思ったのが早稲田だったって感じですね。

ず、同級生の人数の多さが良いと思いました。色んな業界の方とフラットに付き合い、一緒に勉強したかったのと、そもそも高校から早稲田だったので縁があった、という要素が大きいです。あとは、入山先生や内田先生など、アカデミック系でもビジネス系でも有名な教授がいらっしゃって。学生の数が多いということは教授の数も多いということだし、その辺のバランスもいいなと思い、早稲田に決めました。

※その後の受験対策についてまとめられた須藤さんのブログです

 研究計画書の作成・筆記試験(小論文)対策・面接対策など

 早稲田大学ビジネススクール受験録|Sudo Sho|note




————大学院での学びで、これが良かったなというものはありますか?

やはり経営を体系的に学べたのは良かったです。

また、ゼミの先生との出会いが僕にとっては大きな学びにつながりました。マッキンゼーでパートナーをしながら早稲田で客員教授をされている佐藤克宏先生という方なのですが、会社以外でメンター的存在に出会えた思いです。物事に対する考え方や、人生の楽しみ方に至るまで。

ゼミの仲間や同級生の中でも、今後も一生仲良くしていくんだろうなと思える、年代も年齢も性別も仕事もバラバラの人たちに出会えた、ということも良かったです。

 

そして学ぶ習慣や分野が強制的に幅広くなったことも良かったと思っています。授業の数も種類もすごく多いので、もともと自分が興味なかったことに対しても、興味の幅を広げられたのが良かったと思います。経済学やアントレプレナーシップやファイナンスなど。お金に関することって普段の仕事であまり関わることないと思うんですが、会社が何のために存在していて、そのお金はどこから集めてきて、事業活動を通じて誰にその価値を提供していくのかというような。ステークホルダーとのリレーション的な話も、それまで持っていなかった視点に気付かされました。

その他にも、周りの人の影響を受けたことはありますね。皆さん大人なので人生の楽しみ方をそれぞれ持っていたりするんです。それまで興味のなかったワインが好きになったり、大学院の友達とゴルフ始めたり、勉強だけでなく色々始めるきっかけになったかなと思います。



 

————全く想定外だったとか、いい意味でも悪い意味でも裏切られたな、みたいなことはあったりしますか?

修士論文を書くことが本当に大変でした。研究論文でできることには限りがあると気付いたんですよね。定量分析も定性分析も、学生が証明できることなんて本当に小さなことです。それが直ぐに実務に活きてくるかというと、そこもまた難しい。そういった経験を通して、アカデミックの世界で生きてる人はすごいなという尊敬が生まれました。



 

————差し支えなければテーマを伺ってもいいですか?

「ハイブリッドアントレプレナーシップと両利きのキャリア」というテーマで、起業の形式に影響を与える要因分析について書いた論文です。

日本は、経済状況もあまり良くないですし、人口も減ってるしなかなか苦しい。海外と比べて起業する人の数が少ないし、ユニコーンの数も少ないです。日本でもっと起業家を増やして行くにはどうしたらいいんだろうか、というテーマです。

海外だと、ハイブリッドアントレプレナーと呼ばれる大企業とかで働きながら副業で自分でビジネスを始めて、軌道に乗ってきたら本業にする、みたいなケースか意外と多いんです。

日本において、いきなり起業してる人・副業起業をしてる人・サラリーマンとして会社で働いてる人にどういう違いがあるんだろう、ということを定量的なアンケートに400人くらいの方に答えてもらいました。人間の性質・育ってきた環境や価値観といったことが何か影響を与えているのかを知りたいと思ったんです。あとは10人ぐらいの方にインタビューして、なぜ副業起業をしてるのか、起業するにあたって何が後押しをしてくれたのかとか、ということを定性的にも分析しました。



 

————それは興味深いですね。私もまさに副業起業をしようとしているところなので。

入学前の研究計画書に書いたテーマが「日本から生まれたITサービスアプリケーションを海外で流行らせるためのローカライズ戦略」みたいなことでした。

日本人の使っているWebサービスアプリケーションは、海外で生まれたものが多いと思うのですが、逆に日本のサービスが海外にもっと進出すべきで、それを実現するにはどうしたらよいかという研究をしたい、と書いていていました。

しかしそれを研究するのは相当難しいと分かってきたんですね。

そのような経緯や、そもそもの日本の経済や教育などにも興味を持っていたこともあり、だいぶ悩みながら変更しました。WBSの夜間主総合の人はM2でゼミが決まるので、ゼミが決まってから論文のテーマを固めに行くのですが、僕はテーマを決めるまでに4ヶ月くらいかかり、色々悩みつつこれにしました。

学びと実践を自由に行き来しながら進化する

————会社やご家族への説明で大変だったこととかはありましたか?

特にはなかったです。会社からの支援(お金など)はありませんが「やっていいよ」という雰囲気でしたし、社内にWBSへ行っていた人の先行事例がありました。そもそも定時などはなくフレックス制の会社だったこともあり、特に問題はありませんでした。

MBAなどの選択は、今の日本ではまだ普通とは言えないと思うんですよね。少なくとも働きながら行くのは少数派。多分会社でも周りの人も「なんで行くの?」となってしまうことは多いと思いますが、徐々に理解度は上がって行ってるのかな?という気はします。




————「なんで行くの?」から「なんで行かないの?」になって欲しいですね。
会社負担が無かったということは、実費だったと思うんですが、資金面は奨学金など使いましたか?

訓練給付金を使いましたが、僕は休学しているので、途中からは出ていなくて、通常の人の半額ぐらい。ですが、それでもそれなりの金額は頂きました。

休学は5万円ぐらいでできるので、例えばお子さんが生まれるとか、仕事がどうしても難しくてとか、そういう時に融通を効かせることもできる。入ったからには必ずノンストップというわけでもないんです。




————卒業後に思い描く姿や具体的なキャリアイメージなどはありますか?

転職しようという気持ちは今のところはありません。理論を学んできたので、LINEの中でより自分に近い学びを実践する機会を作っていきたい。そして、本業以外も色々と新しいチャレンジをしていきたいですし、本業以外でも学び続けたい。新しい経験を続けたいです。今のところ博士課程には興味がなく、ここからは一旦は実戦のターンかなと思っています。




————須藤さんご自身にとって、アカデミックと実務の場を行き来することとはどういう意味を持つことなのでしょうか?

「探索」と「深化」って感じですかね。深めつつ広める。

「探索」というのは、新しい機会との出会い。新しい分野や人や教授といったヒトやモノの観点でも学業の観点でも、新しいことが入ってくる。そして学んで自分を「深化」させる。

みんな何かしら学んでいると思うんです。仕事のインプットに対するアウトプットの量や、自分の時間や仕事の仕方のクオリティなど。OJTや本から得た先人たちの知恵や、他の会社の事例などを学び、ビジネスパーソンとしての自分の能力を「深化」させていく。そんなイメージです。




————最後に、どんな人に大学院進学を勧めますか?

うーん...。20代後半以降のサラリーマン全て(笑)

進学にメリットしかないと思っているんです。家族など、より優先順位の高いものがある場合は仕方がないですが。

何かしら仕事や学びに対してのモチベーションがある人、課題意識がある人にはお勧めしたいです。大学院には、自分の中のモヤモヤをクラスメイトや教授と話したり、先行事例を使ったりして仮説を証明していく人が多いように思います。

それから、自分が井の中の蛙になっているのではないかと気になる人。現在の環境が何だか凝り固まっているなと思う人には特にお勧めです。例えば、すごくトラディショナルな会社に居てそれが全てだと思ってる人や、ITで同じ環境しか知らない人も。

大人になると、利害関係なく新しいコミュニティをそれなりの規模感で作れる場所って、なかなかないですよね。そういった場所がない人は、飛び込んでみると良いのではないかと思います。




————そうなんですよね。その利害関係がないっていうのが本当に特殊な環境ですよね。

その上で共通言語ができ、お互い共通してる経験も考え方もフレームワークもある。自ずと建設的な議論はしやすくなりますよね。

街中にいる人を100人集めて1個のテーマについて話してくださいと言っても、多分話をすることが難しくて、議論がかみ合わないと思うのですが。大学院の人たちは違う価値観を持っていたり違う経験もあるから考え方はバラバラだけど、恐らく最後には収束すると思うんですよね。




————ありがとうございます。また後日談などぜひお聞かせいただきたいですね。

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