社会人大学院の経験談を紹介する「先輩インタビュー」

今回は、グロービス経営大学院大学を卒業された田中伸明さんです。

 関西学院大学を卒業後、保険会社に入社。その後グロービスに転職され、勤務の傍らMBA取得を目指して社会人大学院へ。現在は適性検査を提供するイー・ファルコンの経営に携わる田中さんに、社会人大学院での学びと、そこから広がったキャリアについて語っていただきました。

田中 伸明さん

採用や組織開発等で活用される適性検査eF-1Gを提供する株式会社イー・ファルコンの代表取締役。新卒オファー型就活サイト「OfferBox(オファーボックス)」を提供する株式会社i-plug創業メンバー・取締役(元CFO)。グロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻修了(MBA)。一般社団法人人的資本経営推進協会理事。ISO30414リードコンサルタント/アセッサー。

適性検査eF-1Gを提供する株式会社イー・ファルコン

https://www.e-falcon.co.jp

株式会社i-plug

https://i-plug.co.jp

研究内容:経営・BOPビジネス

卒業・修了した(在学中の)大学・大学院:グロービス経営大学院大学

入学年月:  2010年4月
修了年月:  2012年3月

野球への情熱と自分らしさの起点

──OfferBoxを提供するi-plugの田中さんにお話が聞ける日が来るとは思っていませんでした!いつも使わせていただいてます。まずは高校卒業後からのお話を聞かせてください。

はい。小さい頃から野球をずっとやっていまして。自分の中では野球をやっている時が一番自分らしく在れるという思いがありました。高校野球でやり残した感があって、大学でも続けたいと思っていた時に進学先を関学にすることを決めました。

──今回お話を聞くまでに田中さんの記事を様々拝見したのですが「自分らしさ」というキーワードがよく出てきますね。これを大切にされ始めたきっかけは?

結構小さい頃からですね。周囲の目を気にしすぎる子供だったんです。いつの間にか周りの意見に合わせすぎて、自分らしさを見失ってしまっていたんだと思います。自分の心の中ではこんなことしたい、あんなことしてみたいという思いがあっても、それにブレーキをかけてしまう。幼いながらにそれに苦しんでいた時期がありました。

転機になったのが小学6年生の時です。知り合いのおばちゃんに手相を見てもらって。「一か八かのギャンブラーの手相をしている。可能性を秘めているのに発揮できていない。今は分厚い殻に閉じこもっているが、それを打ち破れば自分が広がるから、がんばれ」と。幼心に妙にしっくり来て、そこから毎年「自分らしいこと」に挑戦することを決めたんです。その中の1つが関学の野球部へのチャレンジでした。

──手相が転機とは...!

今でも1年に1個は新しいことにチャレンジするようにしています。若い頃は意識的にやっていましたが、今はそれが習慣化しています。

──無意識にチャレンジできるって、無双モードですね

そうですね(笑)

関学時代に野球部のマネージャーに選ばれたことも、大きな転機でしたね。野球部の1年生の中からマネージャーを選ぶことになり、満場一致で私が選ばれました。プレイヤーとして続けていくことを考えていたのでショックもありましたが、期待してくれる仲間を裏切れないなと思い、自分なりに応えていく日々が始まりました。

練習や合宿のロジ周りの準備や、練習試合のスケジューリングといったハード面の組織運営はもちろん、監督や選手の間を繋ぐソフト面の組織運営まで一挙に担っていました。マネージャーへの転向は一つの試練ではありましたが、この活動を通して、何事も自分次第で道を拓いていけるということに気づけました。

──大学卒業後は保険会社に就職されたそうですが、就職活動はどのように?

野球部の経験から、どんな環境・立場に置かれても自分次第で良くしていけるという自信がついていたので、見本になるような就活はやっていなくて...。エントリーした会社でも10社、面接に進んだのも3社くらいでしたね。

実はその後入社することになる保険会社の最終面接がリーグ戦の日程と重なってしまい、「申し訳ありませんが、大学の野球部の運営に命をかけているので行けません」と一度断ったんです。でも、その日は雨で試合が中止になって。電話をしたら「今すぐ来てください」と言われて。野球部のブレザーを着て、野球部のバッグを担いで面接に行きました(笑)

──映画みたいなエピソードですね(笑)

本当にラッキーでしたね。今でも当時の人事の方とは仲良くて、その年は「変な学生を採る」というのがコンセプトだったそうです(笑)

自分の特性を知っているからこその大胆な決断

──結果、その保険会社に新卒で入社されるんですね?

はい、保険会社で3年9ヶ月働きました。その間に気づいたんです。「このままじゃまずいな」って。

──どういった点で?

大学時代の野球部マネージャーの時の経験だけでは、もう限界が来るなと感じたんです。ちゃんと経営について体系的に学ばないと。ただ、当時の保険会社で働きながら学びに行けるほど、自分を制することができないタイプだと思っていたので、思い切ってグロービスに転職したんです。

──ほー!それは思い切りましたね

グロービスに転職すれば否応なしにMBAが取得できると思って(笑)

自分の中でちょっとだらしない面があるので、逃げられない状況を作りたかったんです。会社の補助もあって通えるというのは知っていましたし、グロービスの中で上に上がっていくためには、経営大学院を卒業する必要があるというのも明示されていました。

──自己理解があってこその決断だったんですね。

学びを実践に

──グロービス在学中はビジネスプランコンテストにも積極的に参加されていたそうですね?

いろんなアイディアを形にしては「けちょんけちょん」にやられて(笑)

でも、めげずに次から次へとチャレンジしていました。

──失敗を恐れない姿勢がすごいですね。何が原動力だったんですか?

その過程自体が本当に楽しかったんです。学んだことを使ってアウトプットする面白さ、フィードバックから得られる気づき。それに、何より「できなかったことができるようになっていく」という成長を、仲間と一緒に実感できることが嬉しくて。

──その中で起業の構想も生まれていったんですか?

実は最初から起業しようとは思っていなかったんです。むしろグロービスでの人材開発、組織開発の仕事が楽しくて。ただ、大学院の仲間とビジネスプランコンテストにチャレンジしたり、一緒に時間を過ごす中で、いつの間にか起業への道が拓けていった感じです。

創業当時の田中さん

10年後の未来を創る。志の起源

──その起業にもつながる気付きが在学中にあったそうですね。

はい。現在立教大学にいらっしゃる中原先生や、同志社女子大の上田先生、神戸大の金井先生が主催された「不確実性を楽しむ」というテーマのワークショップに参加したんです。その時の出来事が、今の私の原点になっています。

──どんなことがあったんですか?

そのイベントの懇親会で司会進行を務めた学生さんが「10年後に何をやっているか決まっている人はいますか?」という質問を投げかけたんです。私は直感的に「これは自分への質問だ」と思って、すぐに手を挙げて「10年後、日本の就職活動を変えます」と宣言したんです。

──すごい勇気!周りの反応はいかがでしたか?

その学生さんに「面白くないですね」って一刀両断されたんです。(笑)「不確実性を楽しむって言ってるのに、何を決めちゃってるんですか?」って。誰も知らない中でそんな宣言をして、みんなの笑いものになったんですが、中原先生が「田中さん、良かったよ。応援してるよ」って声をかけてくださって癒されました。

──結果的に、その宣言は現実になったと

そうですね。その後起業したOfferBoxという採用プラットフォームを提供するi-plugは上場を果たし、日本の就職活動の選択肢の一つにオファー型採用が定着することになりました。あの当時の宣言が、何がなんでも実現させるんだ!と自分の志をはっきりと定めるきっかけになったと思います。

適性検査の在り方を変え、新しいスタンダードを実現する

──現在はそのi-plugが買収したイー・ファルコンの代表を務められていますが、今後の展望について教えていただけますか?

はい。適性検査eF-1Gを提供しているのですが、私たちが目指しているのは、「ポテンシャルディスカバリー」という新しい適性検査の利活用の在り方を世に広げていくことなんです。人々の真の可能性を可視化し、引き出し、それを組織や社会の力に変えていく。そんな利活用が当たり前になる世界の実現を目指し取り組んでいます。

──具体的にはどういった形で?

日本における従来の適性検査は、どちらかというと「ネガティブチェック」「スクリーニング」が主流なんですよ。特に日本では、解雇規制のこともありエントリーマネジメントのツールとして使われてきた。でも、本来はそれだけじゃないはずなんです。

──適性検査って受検する時なんか緊張しますよね

それこそが問題なんです。「何を見られるんだろう」「いい印象を与えなきゃ」って考えること自体が、本来の趣旨とは違うと思っています。むしろ、個人の理解を深め、キャリアを育むためのポジティブな道具として使っていただきたいんです。配置や育成といったポジティブな人材開発のツールとして、もっと活用できる可能性があると考えています。人々の可能性に蓋をするのではなく、それを開花させる。そんな未来を作っていきたいですね。

 

──なるほど!旧来の適性検査に対して新しい波を起こそうと。

そうです!かつてOfferBoxで新卒採用における新しい選択肢を提示してきたように、今度は適性検査の分野で新しい価値を提供していきたい。10年かければ、きっと変えていけると信じています。

 

──最後に、いま振り返って、大学院を検討している方へのメッセージをお願いします

大学院に行くだけで何かが変わるわけではありません。そこでの学びや気づきを積極的に活かそうとするか、得られた機会を生かそうとするか。自分がプロアクティブに動くことで、初めて人生にプラスの影響を与えられるのだと思います。私にとってはすごくエキサイティングな2年間でしたし、楽しみながら学ぶことが結果として次の機会につながることになりましたから。

──入って満足するな!楽しめ!活かすことを考えろ!ですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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