子供たちの未来のために、ビジネスを学ぶ グロービス経営大学院

社会人大学院の経験談を紹介する「先輩インタビュー」
今回はグロービス経営大学院で学ばれている、湯浅文貴さんです。

トヨタ自動車で医療介護ロボットの開発に携わりながら、グロービス経営大学院で学ばれている湯浅さん。グロービスで学ぶ必要性を感じたきっかけは、ある上司との出会いでした。仕事や世の中、自分たちの子供世代に対する湯浅さんの熱い思いがひしひしと伝わるインタビューになりました。



湯浅文貴さん

大手自動車メーカーにて、リハビリロボットの開発から事業化までを7年かけて漕ぎ着けた。 事業化フェーズで考えてもみなかった課題に遭遇し、右往左往したことをきっかけにMBA進学を決意。 現在は、リハビリロボット事業から離れて志と向き合い中。

卒業・修了した大学・大学院:グロービス経営大学院
入学年月(年齢):2022年4月(35歳)
修了予定年月(年齢):2024年3月(37歳)

会社の理念に共感し、トヨタ自動車に入社

—————まずは経歴から教えていただけますか。

大学では「不便益」について研究していました。工学部でシステムデザインをやっていたので、不便益というものを活用して何か新しいものを生み出せないかということをやっていました。大学卒業後はトヨタ自動車に入社し、勤続して12年目になります。



—————トヨタにご就職されたのは、不便益を研究されていた流れで?

いえ、トヨタを選んだのは不便益とはまた別の軸です。

学んでいたところが京都大学ということもあって、いろんな会社さんがうちの会社に来てって声を掛けてくれました。日本の会社ってすごくて、特定の分野で世界一の技術をもっている企業というのがゴロゴロあって。

その中でもトヨタに決めたのは、会社の理念に共感したからなんです。

トヨタって、世界一の会社になりたいっては言わないんですよ。街一番の会社になろうって言うんです。地域に嫌われて金儲けするのではなく、地域にも貢献して世の中にも貢献するのだというトヨタの姿勢がいいなと思いました。トヨタの先輩たちや社内の人がみんな同じことを言うので、その裏表がない感じも安心できました。



医療用介護ロボットの開発に携わる

—————トヨタの理念に共感し、「ここだ!」と決めて入社したということですね。入社後はどんな仕事をされていたんですか?

医療用の介護ロボットを主に作っていました。工場のラインを作って、マーケティングをして、試作して製品の形を作って、安定したものを作れるようになって、という流れで、ファーストユーザーを見つけて生産ラインに乗せるところまで、営業の仕事以外はほとんどやっていました。

大変でしたが、楽しかったですね。



—————すごい! 楽しく感じていたんですね?

ええ。お客さんの顔を見ながら仕事ができるので。医療用介護ロボットなので相手はお医者さんが多かったんですが、私が持っていった製品に対して、「これは使えない」と率直な感想を言われるんですね(笑)。

でも、そういうお客さんにもどうにかして喜んでもらえるような製品を作りたいな、と思いながらやっていました。

僕が作っていたのはリハビリロボットの一種で、療法士さんの負担軽減を目的としていました。

例えば病気や事故で歩けない患者さんがいて、病院としてはリハビリをさせたいんだけど患者さん自身がその意欲をもてない、と言ったときに、いかに楽しくリハビリをしてもらうか。そのように療法士さんをサポートするロボットを作っていました。

ただ、これをビジネスに転用する、事業化するということにはなかなか苦労していました。



—————この介護用ロボットというのは利益を上げることも求められたのですか?

求められたというよりは、僕が利益を求めていた、という方が正確かもしれないです。もちろん会社でも利益は求められていたんですけど、特にぼくが強く求めていました。

利益を求めるのでなければ大学の研究でいいじゃん、と思うんです。本当に世の中に役立つものなのであれば、対価は支払われるべきじゃないですか。利益をきちんと上げ、継続的にビジネスとして成り立たせ、世の中に役立つものを多くの人に届けたいなと思っていました。

それを実践するためには、開発して世の中に届けるという当時行っていたアクション以外にも何か別の軸で学ぶ必要を感じ、グロービスに進学しました。



事業化に課題を感じ、グロービスに進学

—————作ったものを世に届ける。そのためには経営に関する知識が必要だと思ったんですね。他にも大学院の選択肢はあったかと思いますが、なぜグロービスを選ばれたのでしょうか。選ぶにあたっての軸のようなものはあったのですか?

できるだけオフラインで学べるといいなということは当初から思っていました。名古屋に住んでいたので、名古屋近辺でオフラインで学べるところというと名古屋大学かグロービスくらいしかないはずで、そのあたりが選択肢に入っていました。

もともとトヨタの法人契約でグロービスが提供する動画見放題のサービス、「グロービス学び放題」を見ていたんです。グロービスにはなかなかおもしろい先生がいるな、とそこで思っていました。動画だけで結構勉強になったことがたくさんあったので、こういうことを詳しく学べるならいいなと思い、グロービスに通うことを決めました。



—————通うことで役にも立ちそうだし、面白い先生もいるしということで、グロービス経営大学院に入られたと。実際に入ってみて期待した学びは得られましたか?

驚きの毎日です。

最近で言うと、ティール組織などのような組織の形について初めて知って、こういう組織の形もあるのかと衝撃を受けました。今まではそのような組織の形があるということを想像したこともなかったので。マーケティングとかファイナンスについては元々ある程度の知識はあったので、やはり組織の形とか、そういうことが初見でしたね。



—————学んだことを業務で活かしてる事例などはありますか?

社内副業のような形で横の繋がりを増やそうということは意識してやろうとしています。ティール組織を学ぶ中でもそういう話題が出てくるんです。

元々自分は社内副業のようなことはあまり推奨しない、基本的に一つのことに集中して全ての時間をその一つに費やして他のことには興味がない、というタイプだったんですけどね。



—————その社内副業というのは会社が推進しているわけではなくて、湯浅さんの自主的なものということですか?

胸を張っては言えないんですけど、そうですね。私が尊敬する役員の方がそうありたい、という人で、その人の考え方に共感して、自主的にやっているという形です。

胸を張って言えないっていうのは、さっきも言ったんですけど僕はグロービスに入る前、社内副業をやるような、そういう考え方を嫌っていました。

でも、社内副業などに取り組むことによる価値の出し方というのもあるんだなと、考え方が変わったのかなと思います。



ある役員との出会いで、考え方が変わった

—————それってすごく大きな変化ですよね。働き方や、人との接し方が変わるって。グロービスに通われる中で価値観が変わってきたということなんですか?

そうですね。グループワークをしたりいろんな人と会話することを通して変わってきたというのはあると思います。

ですが一番のきっかけは、役員と大げんかしたことですね。さっき社内副業を推進していて、ぼくが尊敬する役員がいるって言ったじゃないですか。その人と大げんかをしました。



—————役員の人とけんかですか?! そんなことなかなかできなくないですか?!

そうですよね。その人が特殊だったんです。

まあ僕も特殊だったのかもしれないですけど…。(笑)

今はとても尊敬していますが、当時はその役員のことが嫌いだったんです。


—————それは事業の方向性だとか、仕事はこうあるべきだとかいったことについて意見を戦わせたということなんでしょうか。

はい。当時、その役員が短期間の随行秘書のようなものを募集していたんです。二週間その人につきっきりで、朝から晩まで一緒に会議に出たり、食事も全て一緒にするというものでした。

僕は社内副業を推進するようなその役員が嫌いだったので、敵情視察にでも行ってやるかという感じで手をあげて、随行秘書をやることになったんです。

ただ、やはり朝から晩まで過ごしてると、考え方が違うのでいい加減にしろよって思うこともあるわけです。仕事について会話しているうちに議論になり、その議論が白熱してけんかのようになることがよくありました。

自分なりに考えながら10年間やってきたのに、そのやり方について意見を言われると、否定されたように感じてどうしても反論したくなってしまったんです。その反論に対してまた突っ込まれるんですけど、悔しいのでまた反論して…という感じで、時には泣きながら議論していたこともありました。

でもそうやって役員と一緒に過ごす中で、その役員のすごさが分かったんです。僕と役員の方はもちろん年齢の差はありますが、役員は僕の考えつかないようなことについていろいろ考えていて。僕も自分ではめちゃくちゃいろいろなことを考えていたつもりだったんですけど、全然足りないんだなと気づかせてもらいました。

今思うとその役員は、通勤時間や食事の時間といった自分の時間もたくさん使って、本気で僕と議論を交わしてくれたんです。とてもありがたかったなと思います。本当に、その役員の方のおかげで人生が変わってしまいました。

今でもたまにお会いして、いろいろな話をしています。人生のメンターのような方です。



—————なんか、すごくいい物語を聞いていたような感じがします。その役員の方はもちろんすごいのだと思いますが、そこに飛び込んでいける湯浅さんのエネルギーもすごいし、湯浅さんの仕事にかける熱い思いが伝わってきました。
ここで通われているグロービスについて少し聞かせてください。通われるにあたっての費用や一日のスケジュールはどのような感じでしたか?

費用は自費です。訓練給付金も取りました。勉強は夜間に行っています。現在4歳と0歳の子供がいるので、仕事と子育てをしながらグロービスに通っています。


—————役員の方との出会いや、グロービスでの学びを通して、今後のご自身のキャリアとか人生とか何か思うことってありますか。

これまで仕事をする中でドクターや療法士の方たちにはとてもお世話になったので、医療系でビジネスを通じて恩返ししたいなという思いがあります。ただ、今それについてすごく迷ってしまっていて。

というのも、実はMBAのビジネスコンテスト、JBCCの今年の大会に出たんですよ。テーマが電子ヘルスメーカーで、「ヘルスケア産業の将来像を描きつつ、自社の10年の事業計画を立てなさい」といったもので、自分にドンピシャじゃん、これはがんばらなければ!と思って、力を入れて取り組みました。

でも、予選で落ちてしまって……。正直、予選でダメだったらセンスがないってことだから諦めようと思っていたんです。でも迷っているってことは、諦めきれない、やめられないという思いが根底にあるのだろうなと。それで、これからどんなことをやっていこうか考えがまとまっていないような状態です。



素晴らしいこの世界、次の世代にバトンを渡す

—————お話を聞いていると、やはりエンジニアリングとビジネスを掛け合わせたものをやりたいという思いが大きいことが伝わってきます。

そうですね。それに関係して、ちょっと話題はずれるんですが、少子高齢化について最近思うところがあって。

僕自身の基本的なスタンスとして、少子高齢化には真摯に向き合っていかないといけないと思っていますし、なんとかしたいなって思いをもちながら医療介護ロボットを作ってきたつもりでいます。でも、ずっと腑に落ちないことがあって。

それは、少子高齢化とは「ぼく自身の課題」なのか?ということです。だってこれまでの時代で子供を産まなかったのってぼくじゃないじゃん、と。

もちろん少子高齢化の問題が進むと僕自身が困ることになるので解決しなければいけない課題だとは思うんですが……。もっと上の世代の人たち、あなたたちの課題だろう?と思っていました。上の世代が子供をあまり産まなかったから少子高齢化になっているんじゃないか、ということです。僕が中学生くらいのときに、少子高齢化ということについて学んだときからなんとなくもやもやしたものを抱えていました。

最近、東京大学の社会システム学教授の牧野先生の話を聞く機会がありました。牧野先生は50代くらいの先生なんですが、少子高齢化についての研究もされているようなんです。牧野先生によると、少子化というのが1970年代くらいから始まっているそうで、それって牧野先生が子供のころのことなんですね。

子供の頃って、やっぱり兄弟がほしくなるじゃないですか。でも牧野先生の親は子供を産まなかった。なんで産まないのって牧野先生が親に聞いたら、「あんたが死なないから」と言われたそうなんです。つまり、1970年代から「子供が死なない」ことが当たり前の世界になったんですね。

そのことを知り、少子高齢化についての見方が変わりました。少子化というのは結果でしかないんです。むしろそれは、医療が進歩して生まれた子供が死なないで天命を全うできる世界になった、と言えるのではないかと。さらに言うと、高齢化というのはつまるところ20代30代でやりたいことをやり、結婚したくなったら結婚して子供を産み、子育てを頑張って子供が巣立った後はセカンドライフとしてもう一度やりたいことができる、という世界だと言える。それって、とても素晴らしい世界なんじゃないかと思うんです。

もちろん、今のこの少子高齢化が引き起こす問題というのはさまざまなものがあることは認識していますが、それは次のフェーズに行くための、過渡期の歪みみたいなものだと思います。逆に言うと、その過渡期にいる僕らが次の世代にきちんとバトンを渡すことができたら、次世代の彼らが暮らす世界はとても素晴らしい世界になるのではないかと思うんです。

そう思えたとき、「少子高齢化」が自分自身の問題になりました。だから、その課題解決に繋がる仕事がしたいなと思います。僕が今携わっている医療ヘルスケアはわりともろに繋がる仕事だと思っているので、やはりこういった分野の仕事を頑張っていきたい。

私は大学院で学ぶことで自分がやりたい仕事に生かせる知識を得たり、学びを深めたりすることができています。

ですので、今の時代のような「時代の転換期」に貢献するために、社会に出たあとでも大学院のようなところで学び直す意義というのはあるのではないかと思います。



—————なるほど……。少子高齢化が湯浅さん自身の問題になり、その課題を解決するためにもこれから大学院で学び続けていきたい、ということですね。
最後に、湯浅さんの立場からどんな人に大学院を勧めたいですか?

今の社会に貢献したい人、でしょうか。私は大学院でMBAを学んでいますが、100年後の社会に貢献したい、という方にはMBAは勧めません。今から10年後、20年後の社会をよくしたい、という方にこそMBAを勧めたいです。

自分の子供たちの世代に貢献したいんだけど、何をすればいいかわからず悶々としている人は、大学院に行くことで見えてくるものがあると思います。そういう悶々としている人たちにも勧めたいですね。



—————湯浅さんがやっている仕事において、エンジニアリング的な技術とか基礎研究といったものだけでは、短いスパンで世の中に価値を出すという意味ではやはり足りないと思いますか。

そうですね。結局顧客が何を求めてるかを知らないと何も意味がない、無駄になってしまうかなと思うので。素晴らしい技術もちゃんと低コストで利益を出し続けるような形に昇華させないと、その技術を使った製品が世の中に普及しない。つまり世の中の役に立たない。

そう考えると技術だけじゃなくてビジネス的な観点も必要になります。最終的にエンジニアとしてやっていくとしても、MBAを勉強しておいて価値はあるんじゃないかと思います。



—————優秀な方たちがみんな湯浅さんのような考え方でやってくれれば日本はすごくよくなる、そう思いました。
本日はたくさん面白いお話を聞かせていただき、ありがとうございました!






執筆者:aida



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