大学院は自分が学んだことの答え合わせをする場所 早稲田大学大学院経営管理研究科

社会人大学院の経験談を紹介する「先輩インタビュー」
今回は、早稲田大学大学院経営管理研究科を修了された村上 亮さんです。

営業から人事へ転身し、その後経営者として活躍している村上さん。大学院には、学んだことの答え合わせを目的に進学しました。今回は、村上さんの大学院に対する考え方や生き方についてお話を聞きました。


村上 亮さん

大手旅行代理店を経て人材ビジネスの世界へ。求人媒体、派遣、紹介部門の立ち上げやマネジメントを行う。その後、ヘッドハンターを経て人事へ転身し、責任者として六本木ヒルズのIT会社をIPO/一部上場へ導く。また、こども向けの職業体験テーマパークの部長職などを歴任。

2014年 村上HR研究所を設立 所長 就任
2015年 株式会社kokonotsuに社名変更 代表取締役 就任(現任)
2020年 株式会社SAKURUG 社外取締役 就任(現任)
2021年 株式会社ピアズ 非常勤監査役 就任(現任)

卒業・修了した大学・大学院:早稲田大学大学院経営管理研究科
入学年月(年齢):2016年4月(40歳)
修了年月(年齢):2018年3月(42歳)

営業から人事へ。経験から学び活かし続けた経歴

————今までのご経歴について、教えていただいてもよろしいでしょうか?

私は、新卒で大手旅行代理店に入社しました。そのときは、法人営業を担当していました。

そして大手人材サービス会社に転職し、派遣事業部、紹介部門などの立ち上げやマネジメントを担当します。立ち上げた部署は、およそ100億円までの規模になり、別の採用手法を体験したいと思い、期間限定でヘッドハンターになりました。

次に入った会社は、六本木ヒルズにあるITの会社で、人材紹介の新しい事業の立ち上げです。この会社は当時、黎明期に入っていました。そのため新規事業を始める予定で「IT専門の人材紹介事業を担当してくれ」と社長に誘われます。独立も考えていたのですが、自分の資金で始めるよりもリスクが少ないこともあり、その会社にお世話になることを選びました。

この後、人事に異動になり、社会保険労務士でもあったので、IPOから一部上場までを担当するようになると、この頃から、人事関係の講師も頼まれるようになります。ただIT企業しか知らないのは成長が限られてしまうと考えたので、次に子ども向けの職業体験テーマパークを運営している会社の人事責任者に転じました。そしてそのまま独立し、法人を設立した流れです。



————ありがとうございます。これまでで印象に残っている経験はありますか?

IT会社で働いていた頃は、印象に残っていますね。人材紹介業の兼務として最初は中途採用部門の人事だけを担当していたのですが、会社がどんどんうまくいって1年半で80人だった従業員が600人にまで膨れ上がりました。およそ毎月30人ペースで入社していますね。

その後、新卒採用や制度設計も担うようになり、最終的に人事責任者を任されることになりました。IPOから一部上場まで、上司もいなければ教えてくれる人もいないので、模索しながら働いていました。



————なるほど。教えてくれる人がいない中で、80名から600名への大成長。なぜ成し遂げられたのでしょう?

実は、父も姉も人事です。2人から人事の話を聞いていたこともありますし、自分なりにもたくさん勉強しました。もともと私は営業畑の出身なので、人事に限らず、直接的に売り上げを生み出さない管理部門に対して、偏見を持っていました。しかし実際にやってみると奥が深い仕事で、とても面白かったですね。

営業経験は人事にも活きています。特にベンチャーの採用だと「君はうちに来たら絶対活躍できるよ」とか言うことありますよね。しかし、私は言いませんでした。「こういう感じなら来たほうが良いけれど、そうでないなら別会社を検討したほうが良い」とかもはっきり言います。こういうことを言うと、意外にも人は来てくれます。



————お父さまもお姉さまも人事なのですね!営業畑出身とおっしゃっていましたが、営業の能力はどこで磨いたんですか?

学生のときに、モテたいと思って試行錯誤したことが営業に活きています。うまく転用できたので、何を売っても成績は良かった覚えがあります。モテるために自分を売ることと、営業は、アプローチ方法が一緒でしたね。



学びに行くのではなく答え合わせをするために早稲田へ

————大学院進学のきっかけについてお聞きします。そもそも大学院はどのタイミングで知ったのですか?

2015年に私が顧問をしていた会社の事務所移転パーティーがきっかけになりました。たまたま友人にパーティーで久しぶりに会って、その友人のFacebookを見たら、早稲田の帽子投げるMBAの卒業式の写真があったのです。「MBAって海外だけではないんですよ」と言われたのを覚えています。当時の私はMBAが日本にあることも知りませんでした。

色々調べてみると、早稲田以外にもいろいろな大学があるのを知り、私も大学院に興味を持ちました。




————なぜ大学院に興味を持ったのでしょうか?

私は、極端に言えば、学びたくて大学に行ったわけではありません。どちらかというと、今まで自分が経験を通じて学んできたことが、学術的に合っているのかという「答え合わせ」をしたかったのです。

また、私は大学までスポーツ推薦で進学しているので、受験する人たちの世界観を知りません。受験する人たちの世界を一度は見た方が良いなと思ったのも理由です。私がコンサルをするお客様も、受験を経験した方が多いので、その世界の人たちのコンテクストを理解することが、コンサルタントとしてさらに良い仕事をするために必要だと思ったのです。



————ありがとうございます。大学選びにはこだわりがありましたか?

どうせ行くなら、早稲田か慶応に行きたいなと思っていました。まず、学術的な答え合わせするなら、ハイレベルな人が集まる環境を求めていたからです。また、残念なことに日本は最終学歴の国です。東大出ていても、最後が早稲田卒だと早稲田出身だと見なされるので、最終学歴名にはこだわりを持ちました。

そして、場所や平日の夜と土曜日に学べるかも重要でした。色々検討した結果、早稲田に絞り込んで、そこしか受けなかったです。



早稲田で得られたのは、人とのつながりや学ばせる方法

————在学中に得られた学びなど印象に残っていることがあれば教えてください。

そうですね。大学院に進学したのは、答え合わせをしたかったからで、授業は「おさらい」の意味合いが強かったなと思います。

簿記は持っていて、組織論もマーケティングもすでに独学で勉強してきました。そのため新鮮味という意味ではあまり驚きがなかったのが正直なところです。

それでも卒業して良かったと思うのは、同級生との議論を通して新しい考え方や価値観を取り込む機会になったからです。経営についての知識をインプットするのは実際に経営者として自分でやってきた自負がありますが、多面的により深く学術的に体得する、という意味では大学院で学び直して良かったなと感じています。

もう一点、非常に良かったなと思うのは、同級生の繋がりができたことです。在学中も卒業後も仕事の依頼をもらうことも多いんです。企業の役職者も多いし、事業継承する2代目・3代目の社長たちが学びに来ていたり、企業規模や歴史もさまざまでした。その方たちから「人事制度を作ってくれ」と言われることもありました。





————その他、大学院で得られたことはありますか?

大学院で学んだことを自分でカスタマイズして、自分が講師として行う研修資料の参考にさせてもらっていました。コンテンツを真似するというよりも、「こうすると学習効率が上がる」「こうすると学びが深まる」といった、学びのスタイルとして大学院の授業スキームを参考にしていました。



逆算する生き方で人生を迷わずに進む

————ここまで話を聞いてみて、多種多様な経験から、再現性あるスキルまで昇華するのが得意な方だと感じました。たくさん経験はしているけれど、それがポータブルなスキルにまで昇華できない、職種を変えたら活躍できないという人との違いはなんだと思いますか?

その人たちと比較すると、私は要領が良いタイプだと思います。私は何をやっても無駄にならないと思って生きていて、体験したことを自分の特技やプレゼンにうまく繋げるのが得意です。

変な話、新卒のときに取った簿記が今は経営者とMBAで活きました。BBQ検定も持っていますが、それもネタになります。とりあえず行動して、走りながら修正することは、これまでやってきた経験から無駄にならないものだと思っています。



————なるほど。村上さん自身、振り返りをすることはありますか?

むしろ逆です。27歳のときに人生の道しるべを作ったのですが、結局その通りに生きています。なので振り返るのではなくて、考え方的には逆ですね。

道しるべの通りに生きていきたいわけではなくて、その通りにやった方が自分が楽なんです。



————27歳のときに作ったという道標のゴールは、一体なんですか?

そのときにぱっと浮かんだのは政治家です。地方自治をやりたいと思いました。道路の舗装や公園の建設を決定するのは、政治の力だと知っていたので、漠然と27歳のときに60歳で政治家になろうと決めました。

60歳という年齢は、単純に定年だったためです。また、仏教の言葉で「忘己利他(もうこりた)」がすごく好きです。この言葉には、自分のことを忘れて、他人に喜んでもらうことが幸せで、仏さまの行いだという意味があります。60歳を過ぎたら、忘己利他のように他の人のために生きたいと思っています。



————では、政治家になる目標のために人生を計画したのでしょうか?

そうですね。60歳からは逆算して作りました。



政治家になるかどうかは分からない。道しるべを(仮)にする意味

————今でも政治家になることが目標ですか?

道しるべには書きましたが、現時点で政治家に興味があるかというと、疑問符が浮かびます。



————そうなのですね!

はい。しかしそれでも良いと思っています。60歳になったら、政治に興味を持つかもしれません。

道しるべで計画していたとしても、結果的に政治家にならなくても良いと思っています。それは選択なので、自分が「なれるのにならない」ことと、「なれない」のは違いますよね。「なれるのにならない」のであれば問題ないと決めています。



————絶対ではないのですね。それはなぜでしょうか?

政治家になってもならなくても良いと道しるべを(仮)にすることに意味があると思います。やらなければならないと決め付けちゃうと自分にストレスが溜まりますよね。(仮)のプランだと自分の中で思っていると、気が楽になります。



————(仮)で良いと思うと、安易に変えてしまいそうな気もします。

そこは私も思いましたが、今の道しるべを超える目標が浮かばないんですよ。経営者になって、さまざまな世界を見てきたので、今はやりたい事業もどんどん増えています。私は、2022年で47歳になりましたが、やりたい事業をするにはあと13年だと足りません。なので少し政治家への意識は、正直薄まっていますね。



大学院は、答え合わせと人との出会いができる場所

————最後に、大学院進学はどのような人におすすめか教えていただけますか?

そうですね。大学院進学をすすめたいのは、答え合わせをしたい人です。答え合わせをした方が良いと思っている人は、無駄な自信を持っていることが多いですね。そういう人に限って自信がないことを隠しているのではないでしょうか。その人たちは、根拠作りのために是非大学院に行ってほしいです。



————大学院での人との出会いについても語ってくださいましたが、人脈を作るという面ではおすすめできますか?

人に出会うために行くのも良いと思います。社会人になると仕事と家庭以外のつながりで出会うことはあまりありません。大学院は特殊で、年が違う人と同級生になれます。社会人でできた仕事と関係ない友人は、財産になると思います。

大学院で出会った人たちと、損得抜きに話せることは大きな学びになりますね。社会に出ていて、いろいろな価値観を持っている人と、きちんとした議論ができるのは貴重なことです。人と出会うという面でも大学院は非常におすすめですね。



————そうですね。仕事などが絡んでくると、どうしても損得が発生してしまいます。

本当にそうです。私は、大学院に通っていたとき、全国規模で行うMBAのビジコンの幹事をしました。幹事を担当したのも他の大学の人と関係を持ちたかったという理由です。早稲田だけに閉じこもるのはもったいないですよね。



————確かに、大学院でいろいろな人と出会うのは大切です。本日は貴重なお話ありがとうございました!

 

Elephant Letter

毎月、大人の学びに効くコンテンツをお届けします。

ステータスを選択してください
close

Elephant Letter

毎月、大人の学びに効くコンテンツをお届けします。

ステータスを選択してください
close

Elephant Letter

毎月、大人の学びに効くコンテンツをお届けします。

ステータスを選択してください
コメントを残す

CAPTCHA


関連キーワード
おすすめの記事