社会人大学院の経験談を紹介する「先輩インタビュー」
今回は、マサチューセッツ州立大学のオンラインMBAプログラムで学んでいる知久理人さんです。
ファーストキャリアでは、人事を担当していた知久さん。その後はコンサル業へ転身します。知久さんの大学選びのこだわりや現在の仕事、得た学びをどのように活かしているかなどを語っていただきました。
1994年生まれ。東京都出身。中央大学附属高等学校から、中央大学商学部へ進学。学生時代はテレビ局でのアルバイトを経験。
趣味は映画鑑賞、海外旅行、サッカー観戦。学生時代に多くの国に旅行した経験から、海外旅行の魅力に憑りつかれ、社会人になってからも休みがあれば旅行に行く生活。
卒業・修了した大学・大学院:マサチューセッツ州立大学 オンラインMBAプログラム
入学年月(年齢):2021年2月(27歳)
修了年月(年齢):2023年5月(28歳)
●営業職へのこだわりと現在のコンサルの仕事
————まずはファーストキャリアからお伺いできますか?
最初は、国内大手建設機械メーカーに入社しました。僕は工場で、主に人事をしていました。労務管理や採用、労基など網羅的に業務をこなしていましたね。実は入社するときは、営業を希望していました。
————もともとは営業が希望だったんですね。人事になって、最初はショックでしたか?
非常にショックだったのを覚えています。僕が最初の会社に入ろうと思った理由は、大学のときに環境系のゼミで、インフラと環境が密接に関係していることを知ったことです。インフラから、環境問題にアプローチできるような仕事をしたくて、そこに対して顧客との接点を持ちたいと思い営業を希望しました。
————確固たる理由があったのに、人事だったのですね。今振り返ると悔しい思いもあったと思うのですが、ここでの経験はポジティブなものに変わっていますか?
はい。今のコンサルの仕事に活きていますね。会社がどのように事業を回しているかは、人事をしていると俯瞰して見られる部分があります。例えば、生産管理の進め方やものの流れ方、結果的な営業成績、人事ローテーションなどが見れました。結局業績に連動しているのもあると思うので、人事に入って良かったなと思います。
————その後転職をされると思うのですが、職種を教えてください。
僕は営業をしたくて、その中でインフラに関わりたい思いが強かったので、国内中堅総合商社に転職します。この会社は、海の上で風力発電をする洋上風力発電を担当するプロジェクトに入れることが事前に分かっていました。洋上風力発電はヨーロッパが強いので、世界を意識している部分も少しありました。日本の環境問題の位置づけがわかり、技術的な部分も学べて、面白そうだなと思い入社を決めましたね。
————この会社では、志望動機みたいなものは満たしながら働けましたか?
そうですね。かなり満たされていて、やはりヨーロッパは文化的背景もあって、環境問題に対する意識が国民レベルで違っていました。カルチャーギャップも学べて、結局それが商習慣の違いにも出ているなと感じました。
————その後転職されたのは、MBAに通っているタイミングですか?
そうですね。2021年の5月に現在勤めている外資コンサルティング企業に入りました。今の会社に入った理由は、学んだことを活かせる可能性が高そうだなと思ったためです。また経営課題などを解決する手段として、今はITが必要だと思っています。そうなったときに、やはり戦略からITまでを選択肢に持っている会社であれば、コンサルを勉強できるのではないかと考えました。
————ありがとうございます。具体的な業務内容を教えてください。
僕が今、主に担当しているのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。領域は経営管理で、現在の日本の企業は、実績と営業利益を出し、収益性を確認して、意思決定するまでのサイクルが遅いです。欧米の企業だと週次で見たりするレベルです。これをデータドリブン経営と言って、高速でデータを回して速攻で意思決定ができる環境を整えることをメインで担当しています。
————なるほど。DXはどのように推進していくのでしょうか?中には、そもそも吸い上げるデータが電子化されていない企業も多いと思います。
そうですね。DXは、いつも3段階で実施します。
- デジタイゼーション
- デジタライゼーション
- デジタルトランスフォーメーション
まずは、デジタイゼーションが、紙媒体のものを電子化するフェーズです。デジタライゼーションは、データを活用する段階になり、最後にデジタルトランスフォーメーションをします。日本企業は、デジタイゼーションやデジタライゼーションで止まっていることが多いですね。電子活用でいわゆる変化した姿が、DXです。データがすべて整っていて、それによって働き方が変わっている状態です。
●経営について体系的に学ぶため大学院に進学
————大学院への進学は、DXを担当している今の会社で働いているときに決めた形ですか?
いえ、2社目の商社で働いているときに決めました。きっかけは、ヨーロッパの会社から、ものを輸入する仕事をしていて、日本のゼネコンさんが取引相手になったことです。サプライヤーからものを仕入れるとなると、しっかりと予定通りものを作ったり、契約をしたり、詰めていったりする必要があります。業務の中で、結構大きな額を取り扱うことも多いので、会社の経営についても考えなきゃいけない場面がありました。過去に大学で経営については学んでいたのですが、改めて学び直して深く知りたい思いが強くなったので、進学を決めました。
————少し意地悪な質問になるかもしれないのですが、身近にいる経営目線を持った先輩に教えてもらえれば、MBAに行く選択肢はなかったかなと思います。なぜMBAの選択肢が出てきたのかお伺いできますか?
大学院で学びたかった理由は、僕の性格的なものが大きいかもしれません。世間で言われている仕事で学ぶのは、確かに良いことだと思います。一方で、仕事は出来事ベースで学んでいるような気がします。
課題にぶつかって初めて学ぶ、部署に行ったから初めて学ばざるを得ない状況になりますよね。すると学びが体系的ではなく、網羅的ではないなと感じました。その部署にいないけれど、他部署が担当している業務を分かっていることが必要だと感じたのです。お客さまやサプライヤーに対して説明するときも、分からないことを相手に言いたくありません。自分で説明するなら、責任感を持ちたい気持ちが大きかったです。
————なるほど。非常に共感できます。
●大学院選びの決め手になった2つの軸
————大学院を検討する上で、軸になったことはありますか?
検討した軸は2つあります。1つ目は、会社を辞めなくても通えるかどうかです。2つ目は、海外の大学で英語を使うことを軸にしました。
————思い切って海外MBAに行くために仕事を辞めたり、休職したりする人もいると思うのですが、なぜ働きながら学ぶことを選んだのでしょうか?
そうですね。少し昔の話で、僕は大学生のときにデザインスクールに通っていました。大学の授業は、結構アカデミックになってしまうのですが、デザインは実学とアカデミックのハイブリッドになることが多いです。僕の性格上、アカデミアはアカデミアで分かるのですが、学んだことの再現性みたいなところにこだわりがあります。僕はアカデミアで学んだことを実際に使って、血肉にしたい人間です。インプットとアウトプットを繰り返すことで、体に入れ込んでいくことが大事かなと判断しました。
————なるほど、アカデミック・プラクティショナーですね。
まさに、そうですね。
————ありがとうございます。デザインスクールでは、どのようなことを学んだのですか?
デザインスクールでは、グラフィックデザインなどを学んでいました。大学では経営について勉強していましたが、元々は美大にも興味がありました。「ものを作るのはいいな」という思いがあって、デザインやもの作りは実学です。大学で経営を学んでいるけれど、実学の勉強もしたいなと思って入りました。また日常に退屈していたこともありますね。大学の授業も結構余裕で、授業で習ったことしかテストに出てこないなと感じていました。
————デザイン系の大学に進もうとは思わなかったのですか?
デザイン系の大学に行くことも考えたことはあったのですが、希少性を考えたときに大学に行きながら、デザインスクールに通っている人間の方が母数が少ないだろうなと思いました。掛け算で会社に行った方が、希少性の高い人間になれるのではないかと思ってあえて逆張りしましたね。
————最初に勤めた会社に入社するときは、あわよくばプロダクトに関わることなど何か見据えていましたか?
どちらかというとデザイン思考を活かしたいなと思っていました。
————もう1つの軸の英語を使うことについて教えてください。
そうですね。僕が商社にいたから思ったことなのですが、やはり日本はファイナンスやマーケティングが弱いなと思うことがありました。日本でも海外でもどこで働くとしても、海外レベルで学んだ方がいいなという考えです。
●現職でも活きている異業種交流とケーススタディ
————大学院に入学してみて、良かったことや得られたことはありますか?
そうですね。やはり異業種の交流ができることは、非常に良かったです。また特に現職では、ケーススタディやタスク管理が役立ちました。
————異業種交流が良かったと思った理由を教えてください。
現職ではコンサルをしているので、事業会社の人が何を考えているのかを交流を通して知れたのは大きかったです。他にも現職に近い他社さんのトレンドや働き方など具体的な話が聞けました。今後のキャリアを考える上でも、貴重な意見交換の場だと思います。
————ケーススタディが学びになったことについていかがですか?
ケーススタディには、代表的な失敗例や成功例が書かれています。もちろんズバリ的中して現職に活かせるものがあるわけではありませんが「この部分はケーススタディでも似たようなこと言っていたな」と思いつく場所があるんですね。まず現職では、理論で考え尽くした後に、会社にアジャストしていくという話になります。そのときにケーススタディを知っておくと軸として、根拠をもって話ができるようになるため、非常に役に立っているなと思いますね。
————タスク管理はどのように役立っていますか?
やはり社会人をしながら大学院に通っているため、課題の締め切りが決まっている中でどのように1週間を過ごすかを考える必要があります。毎週月曜日に過ごし方を考えるので、このあたりも仕事に活きているかなと思います。
————ありがとうございます。逆に少し残念だった部分や期待していなかったけれど、意外と良かったことはありますか?
僕はもう少し喋りたかったので、ディスカッションがチャットベースだったことが、少し残念だなと思います。日本人だけであればできるのですが、外国人は巻き込みにくいですね。期待していなかったけれど良かった部分は、オンラインでの授業を前提にしていたので、仕事の両立が非常にしやすいカリキュラムだったことです。
●仕事と大学院の両立は意外にも大変ではない
————仕事と大学院との両立はいかがですか?
意外と大変ではないかなと思います。プライベートのMBAの時間を確保するために、業務時間内に仕事を終わらせる意識があることが、良い影響を与えているのかなと思いますね。また、大学生活でのダブルスクールの経験が活きていることもあると思います。
————1日何時間寝ているんですか?
忙しいときは4時間ぐらいですけれど、5時間は睡眠時間を確保するようにしています。
●学びを活かしてキャリアアップしていくことが目標
————卒業した後にやりたいことなどありましたら、お聞きしてもよろしいですか?
そうですね。まず体系的に経営およびマネジメントを含め学んだので、今の会社でキャリアアップしていくことが当面の目標です。僕は今後、キャリアのイメージをファイナンスに置こうと思っています。コンサルは幅広いので、どこかでシニアの知識をつけていかなきゃいけない分岐点にそろそろ差し掛かります。USCPAの勉強も始めようかなと考えていますね。
————やはりUSCPAの資格を持っていないとシニアに上がれないなどありますか?
いや、そういうわけでもないんですが、抜け漏れがないように知っておきたいことが大きな理由です。
————その先のビジョンとかは考えていますか?
今考えているのは、コンサルもある程度足かけじゃ駄目だと思っています。マネージャー、シニアマネージャーなるまで一旦回し切ってから、起業なり、事業会社に行くなり考えようかなとは思っていますね。
————起業も考えているんですね。
そうですね。ただそのときの自分次第だと思っています。長いキャリアの中で、選択肢をいかに狭めないかが大事です。その中の一つに起業も選択肢として残せるような人間でいたいなという意味で申し上げました。
————ありがとうございます。選択肢を狭めないためにも学んで、本業も頑張り、もしかしたら起業するかもしれないということですね。
●大学院は自分の足りない部分を学べる場所
————知久さんにとって大学院で学ぶとは、どういうことでしょうか?
個人的に思うのはほとんどの人は、学生時代は自分がどういう人間かを知らないままで勉強していますよね。社会に出た上で学校に行くことは、つまり社会的に自分を理解した上で学ぶため、学生時代とかなり違うと思います。社会に出ると自分の得意不得意が分かります。
学生時代は、おしなべてすべての科目を学ぶので、気付けなかったと思うんですけれど、結構社会生活の中で得意不得意が理解できると感じます。その上で学ぶことで自分の本音やなりたい自分に、一番足りていないところが何なのか考えられるようになるのではないでしょうか。
————どのような人に大学院をすすめますか?
刺激が欲しい人に、大学院はおすすめです。やはり会社にいるとどのような職種でも割と同じようなことの繰り返しになると思います。大学院に通うことで、違う角度で学べるようになるので刺激になるのです。例えば大学では、他部署の業務を授業で教えてもらえます。大学院で学んだことを活かして、他部署を理解しようと考えることは、結局会社でうまく仕事をする能力にも繋がり、退屈しないと思いますね。もし今の仕事が退屈であれば、受けてみればいいかなと思います。
————なるほど。本日は貴重なお時間いただきありがとうございました!
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