本当にMBAが必要?将来目標から逆算してみる。早稲田MBA

働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」
今回は26歳で大手証券会社を辞職し、起業を目指して全日制の早稲田ビジネススクールでMBAを取得した太田卓さんです。

卒業後金融とは異なる業界で経験を積み、MBA専門の人材・転職サービスや国内ビジネススクール入学対策予備校を運営する株式会社Milkywaysを設立。ご自身の知見やネットワークを活かしながら、活躍されています。

国内MBAを目指す人の課題や卒業後の実態に詳しい立場から、貴重なアドバイスをたくさんいただきました。

太田 卓さん

株式会社Milkyways 代表取締役CEO
証券会社、IT企業役員、ベンチャー企業などを経て2016年10月より独立、2017年7月Milkyways設立。2019年よりMBA専門の人材・転職サービス 「MBA JOBs」、2022年より国内ビジネススクール入学対策予備校 「MBAゼミナール」をスタート。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻(WBS)修士課程卒。
ブログ(ゆっくりベンチャー企業論)Twitterでも発信中。

早稲田大学大学院:商学研究科ビジネス専攻(WBS)
入学年月日(年齢):2010年4月(26歳)
修了年月日(年齢):2012年3月(28歳)

起業を目指し選んだフルタイム早稲田ビジネススクール

———ミルキーウェイズさんのホームページやインタビュー記事など、いくつか拝見しました。新卒で日興コーディアル証券(現在のSMBC 日興証券)に入られたんですね。

はい、2008年のリーマンショックをきっかけに辞職して、26歳の2010 年から早稲田の全日制MBAに行きました。リーマンショックを社会人として経験されていない方には、今のコロナ禍に近い状況と言うとわかりやすいかもしれませんね。景気が悪化してしばらく回復しそうにない状態の中、自分で事業を立ち上げたいと考えたのですが何をやるべきか、どうやって起業すればいいのかもわからなくて。そこで、仕事を辞めて学校へ行く決断をしました。



———早稲田以外は検討されなかったんですか?

慶應も受けました。ただ、慶應はどちらかと言うと大企業の管理職を目指す方向けという印象だったので、起業やベンチャー・中小企業の研究に力を入れている先生がいる早稲田を選びました。早稲田の方が若干学費が安かった、という理由もありますが。




———起業準備、起業の種を探しに行ったということでしょうか。

そうですね、もともと野村総研でコンサルをされていた柳孝一先生という教授がいらして。ちょうど自分が卒業した年に定年退職されたんですが、まさに中小企業やベンチャーの研究をされていて、こういう先生にぜひ学んでみたいと思いました。




———フルタイムの早稲田を2年で修了されて、その後ワークスアプリケーションズに入られたんですよね。やはりベンチャー気質のある企業で働きたい、ということだったんでしょうか?

そうですね、ただ入社してみると当時はもうかなり大企業になってしまっていて、ベンチャーという感じではなかったんです。ゼミの先輩にワークスアプリケーションズに入りました、と言ったら「なんだ、普通じゃないか、ベンチャーに行った方がいいんじゃないの?」なんて笑い話みたいに言われたこともあるくらいで(笑)。結局すぐに辞めて、当時まだ4、5人の小さい会社だったエビリーに入社しました。ワークスアプリケーションズ入社前の展示会アルバイトで知り合った社長に、よかったらウチで働かないか?と声をかけてもらったんです。

エビリーには3年いて、その後アソビュー勤務を経て2016年に個人事業主としてコンサルや開発を中心に事業を始めました。クライアントは勤務時代に仲良くなった企業や取引先が中心で、1年弱で法人化しました。2019年からMBAを取得した方向けの転職サイトを始めて、2022年4月からMBA向けの予備校事業をスタートしたんです。

築いたネットワークが事業に生きる

———大学院で学んだ2年間を振り返って、どんなことが印象に残っていますか?

1年目は必修科目で経営の基礎をしっかり学ぶことができましたし、単位もかなり取れました。2年目は起業のことを考えながら実務に近い授業を取り、在学生や卒業生・授業のゲストで来られた方などに会ってお話を聞くようにしていました。今でも卒業生や在学生と連絡を取っていて、そのつながりから仕事が生まれることもあります。学びとは異なりますが、ネットワークはかなり役に立っていますね。

2年を通じて基礎知識と実務に役立つ知識を両方学んで、一通り理解できたと思っています。新卒で証券会社に入ってからずっと金融の営業をやっていたので、入学前は他の分野のことはよく知らなかったんですが、人事や組織・法務の分野の方ともお話しすることができるようになった実感があります。




———必要になった時に、大学院で学んだ基礎知識を引っ張り出してくることができますよね。

起業して果たして役に立っているかどうかと問われると、役に立っている部分もあればそうでもない部分もあり、正直何とも言えないんですが…しばらく時間が経つうちに忘れたり錆びついたりしている知識もありますから。ただ、企業のフェーズによっても求められることが変わってくるため、これから役に立つことも出てくるかもしれません。予備校でこれから大学院を受験する人たちに教える立場として、実務ではあまり使うことのない研究計画書や小論文などアカデミックの要素については改めて学び直しが自分の課題です。持っている知識を今の時代に合わせて実践的に使うためには、必要なことだと思っています。

単科講座で事前調査、手強いのは小論文

———今はまさに受験をサポートする事業を行っていらっしゃるわけですが、当時ご自身はどんな準備をされていたんですか?

まず会社を辞める前、進学するかどうか検討している段階でグロービスのクリティカルシンキングの単科講座を受けてみました。そもそも自分にとって興味があることを学べるのかどうか、どんな人が来ているのか、確認できたという意味でもかなり良かったと思います。当時は仕事でパワーポイントを使っていなかったのでグループワークで周りに迷惑をかけちゃいましたし、成績は悪かったんですが(笑)。

特に社会人の方はいきなり大学院へ行くより、単科講座や科目履修などを一度経験してみて付いていけそうかどうか、楽しいかどうか、通えそうかどうか試してみるのもおすすめです。




———モチベーションにもなりそうですね。試験準備としてはどんなことに取り組まれたんですか?

早稲田の試験は筆記と小論文、研究計画書と面接でした。確か面接については、ほとんど練習しなかったと思います。研究計画書は当時の「ウインドミルエデュケーション」の飯野さんという方が書かれた本に載っている合格事例を参考にしました。ウインドミルは現在弊社の競合に当たるアガルートという会社さんに買収されたようですが、飯野さんは早稲田の卒業生でもあり実績がある方です。自分のキャリアと近い方の事例は、かなり役に立ちました。

小論文は四谷ゼミナールに小論文講座を1回受けました。受講料が3万円ぐらいだったのですが、起承転結など基礎的な文章の書き方についてだったため、ビジネススクール入試の小論文に役に立ったかどうかはあまり覚えていません。今自分が教える側になって改めてわかるんですが、仕事でアカデミックな文章を書く機会が多い方って少ないじゃないですか。普段から本を読んだり新聞をしっかり読んだりと、基本的なインプットから始めてアウトプットに繋げていくのが良いと思います。

MBA取得を逃げ道にしない

———国内MBA志望者から相談を受ける立場でもいらっしゃるわけですが、どんな人に大学院を勧めますか? 

MBA受験の予備校説明会では、予備校に行く必要があるかどうかの相談よりも、そもそもビジネススクールに行くかどうか迷っている段階の相談の方が多いんです。例えば、今の仕事を辞めて全日制のビジネススクールへ行こうか迷っているんですがどう思いますか?とか、学部卒からビジネススクールには入学できますかといった相談もあります。そういう方にお話しするのは、まず仕事やプライベートにおける将来の目標から逆算して、行く必要があるなら行った方がいい。逆に転職や他の資格取得の方が目標に近づけるのであれば、わざわざお金と時間をかけて大学院に行く必要はない。色々なキャリアがありますから一概には言えませんが、自分で考えて行った方がいいという結論に達した方には、進学をお勧めしています。また、企業派遣のように会社から費用負担がある場合には進学を勧めています。



———あくまでもMBAは一手段ということですね。

そうですね。MBA取得者の転職サポートも行っていますが、正直MBAを取ったからと言って劇的に評価が上がるわけじゃないんです。海外の有名ビジネススクールなら別ですが。「今の仕事がちょっと辛いからビジネススクールに行って大幅にキャリアアップにつなげたい」という方にとっては、解決にならない可能性が高い。まず今なぜ仕事が辛いのか、なぜ辞めたいのかしっかり自分で研究することが大切です。大学院に行ってキャリアチェンジしてうまくいくこともあるかもしれませんが、おそらく結局同じ問題で詰まることになりますから。ふわっとした感じで迷っているならしっかり考えた方がいいですよ、とアドバイスしています。




———確かに大学院が逃げの一つになるのは良くないですね。

コロナになってからビジネススクールの倍率が、かなり上がっています。原因はまず、在宅勤務で残業や移動時間が減って自由になる時間ができたということ。その次に、先行きが心配なので勉強しよう、資格を取得しようと考える方が増えている傾向があるからでしょうね。自分も景気が悪くなったことがきっかけだったので、理解できるんですが。やはり後ろ向きの理由よりは、将来こういうことがやりたい・そのためにこういう勉強がしたい、という筋道がある方がいい。

2023年度入学の受験がまだ先ですし今は検討している時期でしょうから、ある程度ふわっとした志望動機でも仕方ないかもしれません。でも、相談に来た方の話を聞いていると、自己分析が十分ではないため今のままだと面接で通らないだろうなと思うこともあります。

大学院はダイバーシティを重んじる傾向に

———年齢の面でアドバイスはありますか?

全日制、デイタイムのコースに行くなら若いうちがいいですね。一度仕事を辞めて行くと収入がストップしますし、一般的には年齢が上がると転職も厳しくなるかもしれません。企業派遣でなければ、やはり20代30代ぐらいまでがいいんじゃないでしょうか。

また、学校にもよりますし社会人経験がないからと言って直接的なデメリットにはならないと思いますが、学部卒だと経験が足りない、グループワークが難しいなどという課題があるかもしれませんね。実務で役に立てたいのであれば、数年は仕事をした上で入る方がいいでしょうね。学校のHPで平均年齢を公開している場合もありますので、参考にしてみるのも良いと思います。




———条件として2〜3年の実務経験を課しているところが多いですよね。

そうですね。一橋や筑波のような国公立と慶應や青学のような全日制は学部卒でもOKですけど、入るのが難しい学校もあります。国公立の場合、博士号取得や大学教員を目指す方やシンクタンク系の方が多いので、そちらを目指すなら良いと思います。

それから今、学校側にはダイバーシティを重視して、業界・職業・性別・年齢はもちろん国籍もバランスよく学生を集めたいという意向があるようなんです。




———なるほど、色々な人がいると学びも面白くなりますよね。

そうですね、学校にもよりますがその中でも若い人に来てほしいという意向も強いようです。若い人は卒業後に年収が上がりやすいという理由もあります。また、特に女性に力を入れて集めている、とも聞きましたね。20代女性は、現状かなり手薄な大学院が多いので受かりやすいかもしれません。逆に40歳前後の男性は志望者が多くて、その層は全体の倍率よりも高倍率になる傾向があるようです。




———こういうデモグラ的な背景があるとは…受験対策として有用な情報ですね。

仕事柄、卒業生や仲のいい先生、同じ業界の方などのお話を伺う機会を作っています。最近も中央大学のビジネススクールを卒業した方や法政大学ビジネススクールの教授とお話しをして、平均年齢はやや高めで40歳前後だと伺いました。早稲田はおそらく30代半ばぐらいだと思いますが、全日は中国人などの留学生も多いのでもう少し若いはずです。コロナの影響でここ数年は留学生が減っていますから、変動はあるかもしれませんが。

現在、関西圏のビジネススクールの情報がやや手薄で、これから開拓していく予定です。地方では、グロービスに行く方がかなり多いですね。現在年間の入学者数が1千人以上で、大阪・福岡・名古屋・仙台にもありますから。余談になりますが、JBCC(日本ビジネススクール・ケース・コンペティション)という大会があって、グロービスの方が非常に多く参加されているんです。出題されたケースに対し経営戦略を策定してプレゼンするコンペで、優勝者は賞金30万円を獲得できます。弊社で去年と今年スポンサーをさせていただいております。

かなりハードワークな上にファイナルは昨年は10月、今年は12月に行われるので修士論文がある大学院の方は厳しいかもしれませんが、グロービスのように修論がない学校はプロジェクトとして積極的に取り組んでいる方も多いです。もう一点重要なのは、この大会が他の大学院の方との横のつながりを作る場になっていることですね。MBAに限らないと思いますが、ネットワークはとても重要なものになりますので、他のイベントなども含めて積極的に参加してみるのもおすすめです。




———ネットワーク作りには絶好の機会ですね。貴重な情報をありがとうございました。

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