人生を豊かにするため進学。ビジネスに直結しないことをあえて学ぶ意味 京都芸術大学

働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」
今回は京都芸術大学を卒業予定の加藤綾佳さんです。

大学時代はスイスへ留学していた加藤さん。その後は就職や転職、留学をして現在の仕事に就きます。紆余曲折の経歴と京都芸術大学に進学するきっかけ、大学に対する考え方などをお伺いしました。

 

加藤 綾佳さん

大学在学中にスイスに留学し、国連日本政府代表部でインターンシップ職員として従事する。帰国後に入社した企業で、SE兼プロジェクト専属通訳として、外資系IT企業に出向。その後フランス・リヨン第二大学でブランディング・マーケティングを学び、帰国後、フランス国鉄とスイス国鉄の共同出資からなるレイルヨーロッパで、日本オフィスのローカライゼーション・マーケティングおよびバックオフィス業務を担当する。その後、障害福祉領域のベンチャー企業で経営企画、新規事業立ち上げ、広報に携わり、2021年7月にI&CO Tokyoに参画。チームのカルチャーづくりをミッションに、コーポレート業務全般を担当する。

卒業・修了した大学・大学院:京都芸術大学
入学年月(年齢):2021年4月(29歳)
修了年月(年齢):2023年3月(30歳)

フランスをキーワードに歩んだ過去と現在の仕事

————まずは大学時代からお話を伺ってもよろしいですか?

東京の大学の国際学部に通っていました。私はヨーロッパの思想や歴史を学びましたが、結構幅の広い学部で同学年には、中国の政治や日本の歴史を学んでいる人もいました。いろいろな国や地域の政治や歴史、思想を学んでいる人が多かったです。私がいたゼミは、ヨーロッパの歴史でしたね。

 

————ヨーロッパに興味を持ったきっかけはありますか?

本当に単純で、ハリー・ポッターが大好きなことがきっかけでした。多分映画では描かれていませんが、ハーマイオニーはフランス語も話せるんですよ。小説の中で、ロンがハーマイオニーに対して、フランス語が話せることを知って、非常に驚く場面があります。イギリスの国や文化でさえも、私からしたらすごく素敵なものだと思っていました。しかし、イギリスの人たちが素敵だって思うものって、どれだけいいものなのだろうと思って、フランス語が話せるようになりたいと考えるようになりましたね。

あとは、高校からプライベートでも、英会話スクールみたいな場所に通っていたのですが、そこで出会った素敵な日本人の英語の先生がいました。その先生はカナダに留学していたんですけど、「私はフランス語を挫折した」と言っていて、すごい先生でも、挫折する言葉ってなんだろうと疑問を抱くようになります。その先生を超えたいとか、先生ができなかったことを私はやりたいとか、そういう思いがあったかもしれません。

 

————非常にフランス語に思い入れがあるんですね。

言葉はアイデンティティに深く繋がっていると思います。多分、フランス語の世界に片脚突っ込んでしまったので、もう抜け出せないのかなと思います。また、言語は学ぶのを「止める」って宣言するようなものでもないかなとは思うので、自分の中では忘れない程度には、何かしらをメンテナンスしていくみたいなことはできる限りやりたいなとは思っていますね。あとは今まで使ってきたお金がもったいないというのもあると思います。(笑)

 

————留学の経験はあるんですか?

はい。交換留学先だったスイスのジュネーブの大学に行きました。元々はイギリスに交換留学をしたいと思っていました。しかし、イギリスに留学をして帰ってきた人を見ると、語学力がアップしていないと感じたんです。なので、フランス語と英語で学べるスイスのジュネーブにある大学に決めました。その段階で卒業が1年延びることも決まっていたので、あまり就活のことは考えずに、とりあえず1年間しっかり集中して学ぼうと思いました。就職はまた帰ってきたら考えればいいかなというふうに思っていましたね。

 

————留学から帰ってきて、最初に入った会社について教えていただけますか?

初めは、外資系のIT企業への派遣を取りまとめている会社に入り、プロジェクト通訳や翻訳の仕事をしました。そもそも就職するときに、企業研究をせずに社会人になったので、働いている間も「こんな感じかな」みたいな思いをずっと抱えていました。まだそれでも学んできた英語やフランス語を使えるからいいだろうとは思っていたんです。ただ、やはり、やりがいとか、本当にこの仕事がやりたいのかなという思いが大きくなって、最初の会社は辞めました。

 

————何年くらい働いたんですか?

多分、2年くらいです。

 

————その後は、そのまま就職されたんですか?

いえ、フランスに1ヶ月行って、ファッション系の勉強をしました。24、5歳のときですね。ファッションは、他の人からどうやって見られるのかの象徴的な存在というところに興味がありました。また、ポップカルチャーとしてではなくて、哲学的な文脈で勉強したいと思ったことも大きな理由です。そのときは日本でファッションを学術的に学べる大学があまりなかった段階で、フランスの方が進んでいました。とりあえずフランスに1ヶ月行ってみるかみたいな感じで留学を決めました。

 

————フランス留学から帰った後はどうされたんですか?

フランスから帰ってきたときに、今までよりもフランスに近い仕事をしたいなと思っていました。その時、日本にフランスの商工会議所があるのを知ります。そこはフランスの企業が日本進出したいとか、フランスに進出したい日本企業を手伝う団体です。企業間のやり取りだけではなく、人材や採用を斡旋する人材プールのような事業もしていて登録をしました。しばらくしたらフランスとスイスの国鉄が共同出資しているベンチャー企業の日本支社を紹介されて入社した感じですね。

 

————その企業にはどのくらいいたんですか?

そこでは2〜3年働きました。マーケティングや総務、経理などさまざまな業務を担当していました。結構好きな仕事だったんですけど、コロナの関係で日本支社の撤退を宣告されたんです。「グッドニュースとバッドニュースがあるよ。ボーナス1ヶ月分出るけど、東京オフィスは明日でクローズだよ」と言われました。

 

————え、明日?

そうです。これが外資かと思いました。あのときはびっくりしましたね。

 

————その後は転職を?

はい。次は日本の福祉系のベンチャー企業に入りました。人間と動物の福祉の事業をしていました。スイスに交換留学をしていたときに国連の人権理事会でインターンをしていて、人権問題とかソーシャルなことにも取り組みたいと思っていたので、この会社に入りました。

経営企画部に配属になるのですが、この会社の経営企画部は、広報やマーケティング、経営企画など何でもやる部署でした。何でもやるというのはとても楽しかったのですが、よりステップアップできる場所を求めて、転職活動をして、今の会社に就職します。

 

————ありがとうございます。それで、今の会社に転職するんですね。

はい。今の会社では、経理・広報・総務・採用・人事など、一般的な会社のバックオフィスの仕事をしながら、会社のカルチャー作りをする部署で働いています。忙しいときは、バックオフィスの方に仕事が取られたりするのですが、今は企業哲学や経営理念などをまとめたCULTURE DECKを作る話が上がっています。バックオフィス以外にも、そのあたりも担当しています。

 

進学のきっかけは充実感と世の中の動き

————再び、大学に進学したきっかけをお伺いできますか?

大学は2021年の4月に入学したのですが、この当時勤めていた会社で充実感が得られなかったので、何かしら充実したことをやりたいと思って進学しました。仕事を変えるたびに学生に戻りたいかもという思いもありました。正直、仕事に課題感を感じてとか、仕事に活かせるようなことを身につけたいといったことは考えていなかったですね。

 

————人生を豊かにするために勉強しようと思ったんですか?

そうですね。また、金銭面と精神面で余裕ができたことも大きかったです。

 

————他にも進学するきっかけはありましたか?

人文学系のことで、アカデミックの方に戻りたいみたいなことはずっと考えていました。ただ、その道に進むっていうことは、普通に会社で働くことを捨てるみたいなことだと思っていました。仕事か学業どちらかを取って、片方は捨てる必要があると考えていたんです。しかし新型コロナウイルスの影響で、オンラインで学べる環境とか、土日だけ通うみたいな学び方が増えてきて、これならできるかもしれないと思いました。それが分かって、仕事か学業のどちらかを選ぶ必要がなくなったことは、結構大きかった気がします。

 

————世の中の動きが大学進学への後押しになったんですね。

はい。今までずっと毎年夏と冬に海外旅行に行っていましたが、海外旅行ができないなら、国内にいる間に今までずっと学びたかったことをやろうと決めました。

 

大学で身についたアウトプット力と作り手目線

————大学で得られた学びはありますか?

私が現在働いている会社はデザインを扱っています。大学での学びを通して、アウトプットされた作品と、人の目がどのように物事を見ているかの関係を考える瞬間などは、仕事と大学の学びがリンクして、点と点が繋がってきたような気がしますね。会社でも、デザイナーが良いと言ったものを他の人に説明するときに何がいいのかとか、逆に何がダメなのかとかを説明できなければいけません。そのときに学びが活きていると思います。大きなレベルでは、意外と共通しているのかなって思います。

 

————仕事でも活かされた学びとは、どのようなものだったんですか?

美術史で最初にする作業に、ディスクリプションという作業があります。例えばモナリザの絵を見たことがない人に、あの絵を想像できるように言葉で説明する作業です。美術史の基本的なスキルです。自分が見ているものと自分の言葉でアウトプットするものの間には、絶対的なギャップがあると思います。言葉にして初めて、意外にも全ては見えてないんだなって思いますね。ディテールまで見たりするときも、かっこよさの裏側には緻密な計算など作り手の目線があるのではと考えるようになったので面白いなと思います。

ヴィトゲンシュタインの「言葉の限界が思考の限界」という言葉があって、言葉とかでアウトプットができないと、見えているものも見えていないものになってしまうんだなと思いましたね。

 

大学は概論を教えてくれる場所ではない

————大学に行って驚いたことはありますか?

大学に限らず全般で言えることなのですが、大学は概論みたいなことは教えてくれないということです。いきなりニッチな話をされて、知っていて当たり前の部分は教えてくれません。なので、授業を受けて初めて自分の無知さに気づくことはほぼ毎回ありますね。次第に当たり前の幅が広くなってきます。美術史について広く浅く勉強したいみたいなメンタリティを最初は若干持っていたので、大学はそういう場所ではないことを思い直しますね。

 

————そうですよね。概論みたいなのは、自分で網羅的な書籍とかを読んで身に付けたんですか?

そうです。

 

————大学とかアカデミアに戻って学ぶことは、加藤さんにとってどのようなことだと思いますか?

私の中では、デザインや絵画を言語化して伝える楽しみなど、結構大きなレイヤーでの仕事とアカデミアとの共通点が見つかってきたような気もします。ただ、同時に、美術史などビジネスに直結しないことを学ぶことに関しては、自分の中でいいリフレッシュ方法になっていますね。西洋美術史みたいなものって一般的なビジネスやお金とは切り離されたものだと思っています。私が今学んでいることは、自分がお金を稼げる人になるための手段でもありません。美術史を勉強することは、自分が資本主義に生きていたらメリットは多くないと思っています。しかし、経済活動から切り離して、自分がやりたいこととか、自分が意味を見いだせるものに時間を使うのは、非常にいいことだなとは思いますね。

 

今後はリベラルアーツ系の実証パターンを作る

————今後のキャリアなどは考えていますか?

最近は、社会人に求められるリベラルアーツとかそういうのが流行っていると思います。その辺の実証パターンみたいなのを作ったり、自分がなったりするのがいいかなと思っているのですが、うさん臭くなっちゃうかなとも思っていますね。(笑)

 

————また大学で学ぶみたいなことは考えていますか?

はい。今度は180度転換して、MBAに行くか考えている最中です。仕事での課題感や深めたい部分が大学で学べるのでは、と思い始めています。

 

————これからも学び続けるということですね。

はい。でないと私は本当に自分で勉強できないんですよ。何か自分だけでやるとモチベーションが保てないなと思います。少しでも辞めたいなと考えていたときに、何かしらの理由をつけて辞める気がしますね。ある程度コースとかプログラムみたいな決まっているようなものに縛られないと、本当にダメです。

 

————自己認知力が高いですね。

ただ、勉強するのは好きなのですが、レポートや論文を書くのが本当に嫌いなので、また同じ苦しみを繰り返すのかという思いはあります。

 

大学進学は1つの同意や共通の答えを出したい人には向いていない

————最後に、どのような人に働きながら学ぶことをすすめますか?

これまで体系化されたもので、自分が生きている時間では到底学びきれないものに関心をもった人ですかね。大学に行くと、過去の「巨人の肩」に立てるだけではなく、仲間や教授といった人たちの助けも借りれるので、学習の質や効率が上がると思います。

 

————では逆に、大学が向いていないと思う人はいますか?

そうですね。おそらく1つの同意や共通の答えを出したい人とかは、向いていないかなと思います。大学の教授は、必ずしもその答えを教えてくれるわけではありません。自分なりの答えが出ても、同時に疑い続ける力が必要だと思います。

 

————本当にそうですね。

自分なりの答えを出さないと卒業はできません。なので、誰かに答えを求めちゃダメだと思いますね。

 

————いろいろ話を聞けて楽しかったです。ありがとうございました!

 

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