社会人の学びが「普通の営み」であってほしい グロービス経営大学院

働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」
今回はグロービス大学院を修了された犬伏光さんです。

「周りとは違うことを」という軸を持って、就職・転職をして、キャリアを形成してきた犬伏さん。短期間での異動経験や、志迷子で入学したグロービス大学院にて得た学びと、「学ぶこと」についての考えを教えていただきました。好奇心とバイタリティに溢れたキャリア形成についての興味深いお話が伺えました。

 

犬伏 光さん

江崎グリコ(株)グループ人事部にて人事企画、人材育成に従事。研究者→経営企画→人事と異色のキャリアを重ねる中で、ヒトと組織の役に立つべく活躍中

卒業・修了した大学・大学院:グロービス経営大学院
入学年月(年齢):2019年4月(29歳)
修了年月(年齢):2021年3月(31歳)

周りと違うことをして生き残ろうとした幼少期と大学時代

——— 本日はよろしくお願いします!まずはご経歴を教えてください。

現在は、江崎グリコ株式会社で人事として働いています。新卒では食品・化粧品素材メーカーにて研究職をしており、江崎グリコにも研究職として入社しました。何度か職種は変わっていますが、食品業界に身を置いてきました。大学時代は東京大学 理学系研究科 化学専攻で、修士まで修めました。大学の同期は化学工業系の研究職としてファーストキャリアを歩む人が多いですね。研究職の中でも食品系に進む、珍しいケースでした。



——— 研究職からの人事。そして、異例の食品系への就職。色々なこだわりがありそうです。

そうですね。他人と違ったことをしよう、できるだけ「面白い」ポジションでいたい、という信条があります。理由は幼少期まで遡ります。私は3兄妹の真ん中で、幼いながら「兄にも妹にも負けず、両親に構ってもらわなきゃ!」という危機感を持ったんでしょうね。いろいろと気を引こうと頑張っていたみたいです。もちろんそれは杞憂で、家族からは別け隔てなくとても大切にしてもらっていたわけですが…笑。周りと違うことをしようという考え方が、幼少期から自然と根付いていたのだと思います。




———— 真ん中問題ありますよね...。私は長女ですが、時々真ん中の妹から「私は異質だから」と、どきっとするコメントをされます笑。



自分の幅を広げた転職、そして大学院への進学

———— 研究職から人事へのジョブチェンジ、そしてグロービスへの進学。どのようにつながっているのでしょう?

実はグリコに転職してから、一年半の間に4部署を経験してきました。研究職から、研究企画職へ、その後は経営企画職。転職時にイメージしていたキャリアとは全く違って、翻弄されている感覚がありましたね。正直、自分の中で意味付けが全く出来ていないまま、時が過ぎていきました。特に研究職から企画職への異動のギャップが大きく…前職から研究職しか知らず、企画の「き」の字もわからずで。



——— かなりのハイペースで異動されてきたんですね。研究企画というのは、具体的にどんなお仕事ですか?

ちなみにこれは組織再編なども関係したためで、私のように短期間での異動はかなり珍しいです。ご心配なく(汗)。研究企画職は研究所全体の戦略立案や研究支援をする職種です。例えば、大学との共同研究の検討・実行、学会や特許等を通じた調査など、さまざまです。社内の研究者への支援、全体のまとめ役といったイメージですね。



——— なるほど。では、その企画をうまく進めるために、グロービスに行こうと?

そうです。当時、企画職への期待値と現状の能力にギャップを感じる中で、自分に対する反省というか、大きな危機感がありました。異動によってギャップに気づき、周囲の役に立つために何が出来るか、不足する部分を補う努力をしようと考えました。企画職について分からないことだらけで困っていた時に、当時の彼女がグロービス経営大学院の存在を教えてくれました。彼女も勤め先の研修で、グロービスのクリティカルシンキング講座を受講していたのです。「勉強好きみたいだし、受けてみたら?」と提案してくれて、2018年3月頃に体験受講から始めました。

最初は、経営学やマネジメント全般を学ぶことで何か役に立ったらいいな…くらいの気持ちもありました。昔から勉強自体は好きでしたし。ただ期待はいい方向に裏切られ、素晴らしい学習環境や、非常に優秀で熱意ある学友に恵まれ、その後のキャリアに大きく影響する経験となりました。ちなみにその彼女が、今の妻です。人生を一緒に進んでくれている、感謝してもしきれない大切な存在です。



———— 図らずも素敵なお話をお聞きでき、ほっこりしました。新しい仕事での戸惑いがグロービスへの入学に繋がっていたんですね。

 

進学の準備と、パートナーや会社との関係

クリティカルシンキング受講中の仲間とのお写真
————大学院にはいつごろから、どういう形態で通われていたのですか?

2018年4月から1年間は「単科生制度」を利用し通学していました。単科生として受講した単位は、入学後、大学院の単位として算入されます。私は2018年から1年間単科生として通い、その後正式に入学して2年間在学したので、合計3年間通いました。



————受験準備についてもお伺いしたいのですが、何か事前に書籍や論文を読んだり、取り組んだことはありますか?

入試項目であるエッセイを書いたり、面接の準備をしていました。当時はクリティカルシンキングのテストもありましたが、単科生として受講済のため免除でした。入学自体はあくまで通過点ですので、事前に対策をしつつも、面接本番では普段通りに振る舞うことを心がけました。



——— 単科生に免除制度、働きながら学ぶ人にありがたい仕組みがたくさんあるのがグロービスのいいところですよね。本科に入学される際、家庭やパートナーへの説明で困ったことや工夫したことはありますか?

特に反対などはなかったです。ただ大学院進学の時期が業務の繁忙期と重なり、メンタル的にも厳しかった局面では、よく妻から心配されていましたね。ちょうど入籍したタイミングで、ポジティブ・ネガティブ問わず、公私ともに変化が多いと心身の負担になるのだと学びました。私にとってグロービスは「サードプレイス」で、家庭と仕事以外で心許せる仲間と時間を過ごせる大切な場所でした。仕事で疲れていても、グロービスの勉強ではウキウキしていたので、妻も「グロービス行ってき!」と応援してくれました。

さすがにグロービスの勉強と並行してキャリアコンサルタントの資格取得もした時は、家庭の時間を取れず少し怒られました…反省です。色々と大変なことも多かった大学院との2足のわらじ生活でしたが、とても温かく応援してくれました。



————さすがグロービスを勧めてくれた奥さん!犬伏さんのことよくわかってる笑。会社への説明などはされましたか?こちらは反対とかはあったのでしょうか。

会社への説明はしましたが、特に反対もなかったです。入学時に教育訓練給付金の関係で会社に一筆もらう必要があり、私は当時の上司にサインを頂きました。上司も神戸大学でMBA取得していたので、進学については理解を得やすかったです。

 

仕事に活きた学びと、大学院で得られたもの

書籍「人的ネットワークづくりの教科書」出版時のお写真
———— 実際に大学院に通われてみてどうでしたか?在学中に学んだことや感じたことをお伺いしたいです。

3年間で、毎年違った学びを得られたと思っています。最初の1年は能力向上、知識の拡充が大きかったです。それまでずっと理系分野だったこともあり、社会学関連の知見は新鮮で、学習欲の強い私にとっては単純に楽しかったです。今振り返れば、社会人4-5年目の20代後半で、マネジメントや経営学周りの知識をインストールできたのは、ビジネスパーソンとして成長するためにも良いタイミングでした。能力や知識は先にインストールしておいて、実践の中でさらに学びを深められるからです。とはいえ働きながらのため、授業以外でも通勤や夜なべの時間を学習に充てていました。

2年目は「志」について考えさせられた時期でした。当時、経営企画部にて、中長期の未来予測や全社のバリューチェーンについて考える、重いプロジェクトを任されました。当時はとても大変でしたが、時間・空間の両軸で自身の視座を上げる、とてもいい経験をさせてもらいました。

一方、視座が高まる中で「そもそも自分は何をしたかったんだっけ。異動も重ねて、他の人にないキャリアを歩ませてもらっているけれど、自分が専門性を持って価値発揮したいところはどこなんだろう…」と自分の気持ちや方向性がわからなくなっていました。ちょうど同年代が各職場で中堅メンバーとして活躍していたので、横串部門にいて専門性が必ずしも明確ではない自身に焦っていたのかもしれません。グロービス用語でいう「志迷子」ってヤツですね。



——— 志迷子...!

そんな苦しい状況の中で、グロービスでの3つの出来事が私の道を拓いてくれました。1つ目は志について考えるクラスを受講したこと。「大志=自分が人生で成し遂げたいこと」に引っ張られすぎず、「小志=向こう数年間コミットしたい具体的な目標」について考えます。志クラスではさまざまなプログラムを通して、自身の価値観・倫理観に向き合いながらリーダーシップ開発(”開”いて”発”見)することができました。

2つ目が「あすか会議」というグロービスの年1回のカンファレンスで、ヒト・組織への強い想いを持つリーダーとの出会いがあったこと。トップリーダーや仲間と膝を突き合わせ、熱く語り合うことで自身の志が研ぎ澄まされていく、熱気あふれるイベントです。

3つ目が師と仰げる方に出会えたこと。既にHRとして実績を重ねていながらなお、MBAの学びの場に来られており、多くの学びを頂きました。そのような大先輩とも「同期」として高め合う機会があるのは、社会人大学院ならではでしょうね。ヒト・組織の役に立ちたいという想いが強まり、グロービスの学びのアウトプットも兼ねて、試しに社内の若手とキャリアを考える読書会を主催してみたんですよ。会社の組織・エンゲージメント面に課題意識があったので、小規模ではありましたが濃い時間になるよう設計しました。結果、参加者から思いのほか評価いただいて…自分自身、主催している中で人と組織に向き合うのは「好きx得意」な領域だと直感しました。その後、会社の公募制度を利用して人事部へ異動し、現在に至ります。

補足事項

・あすか会議とは、グロービス経営大学院の教育理念である「能力開発」「志」「人的ネットワーク」を育てる場を提供するビジネスカンファレンスのこと。

(参照文献:http://aska.globis.ac.jp)

・HRとは、Human Resources(人的資源)のこと。また、それらを活用する部署・役職を指す。

——— 会社でも実践、すごいですね!三年目は?

3年目は、人的ネットワークの広がりです。きっかけは「あすか会議」の運営委員になったこと。意識してネットワークを広げようと意図していた訳ではないのですが、全国の運営委員とのつながりができました。当時は新型コロナウイルスが急拡大しており、あすか会議も急遽オンライン開催となり、数千人の参加者を捌くオペレーション部隊の中心となりました。オンライン開催の経験は実務でも役立ち、苦楽を共にした仲間たちとのつながりは今も続いてます。また、大学院最後に履修した研究ゼミの成果を基に「人的ネットワーク」についての書籍を出版できました。仲間とともに学びの集大成を世に遺せたことは、単純に嬉しかったです。書籍や研究内容について各所で講演の機会をいただき、そこで新たな人的ネットワークも生まれました。大学院の3年間を振り返って「ヒトは人的ネットワークの中に生き、生かされている」と実感しています。




———— 毎年違った学びが得られて、濃い3年間だったのがうかがえますね。

自分でも驚いたのが、今、人事の世界に身を置いていることです。実は父や兄もヒト系の職種が長く、あまのじゃくな私は「絶対同じ道に行くか!」と思っていたのですが…いつの間にか私もその道に(笑)。人生の面白さというか、逃れられない宿命みたいなものを感じています。私は全然違う研究者の道を歩んでいたはずが、たくさんの出会いや経験を重ねる中で、同じ方向に導かれていきました。「血は争えない」とはこういうことか、と。

あとは「学ぶ」行為そのものが、自分にとって趣味であることを受け入れられたのもグロービスで得たことの1つですね。社会人大学院に進学する場合、キャリアアップするためとか、実利を目的にする方も多いと思います。でも私にとって勉強することは、映画を見たりスポーツを楽しんだりする感覚なんです。ただ、「学ぶことが趣味」ってすごく意識高そうだし、社会的地位が伴っていないと恥ずかしい気がして、オープンにしにくかった。グロービスで学んでみて、周囲と自分の違いに気付いて、「できる」だけじゃなく「わかる」こと自体を楽しむ自分を認められた。もちろん、学びを実践につなげる努力もしていますよ!




異動やグロービスでの経験から考える今後のキャリア

————今後のキャリアイメージっていうのは何かありますか?

現在、33歳。30代は自分の特性・強みを活かしつつ、人事としての専門性を深めていきます。私が得意なのは「つなげて」考えること。自身の経験や知見、定性情報と定量情報など様々な要素を俯瞰し、分析し、具体的な施策につなげていく。30歳前後の多感な時期(?)に「研究→経営企画→人事」のキャリア転換と大学院での学びを経験できたことが、基盤となっています。

専門性について、第一には実務に真剣に向き合う中で深めていきます。加えてプライベートでは社労士の勉強をしています。師と仰ぐおひとりが社労士なのも影響していますが(笑)。私は22歳で人事の道に入った人より、10年遅れている。実務面でも知識面でもその3倍以上の努力をしなければ追いつけない。『スラムダンク』で桜木花道がシュート2万本特訓をしている気持ちで…しらんけど。

私の今の志は「『頭に思い浮かぶあのヒトたち』のイキイキを彫り起こす」

全てのヒトを、なんて大それたことは言えない。でもせめて私が関われる、頭に思い浮かべられるようなあのヒトたちが、よりよく生きられるよう。誰しも子どものころ豊かに持っていたはずの、分厚い不器用な皮を被ってしまったイキイキを、彫り出す存在。机上の理論、ベストプラクティスとしてのケーススタディ、そして実践の難しさの差分も踏まえ、地に足ついた人事パーソンでいたいですね。

 

社会人の大学院進学へのは特別ではない

———— 一度社会に出てから大学院に戻って学ぶことは、犬伏さんにとってどういうものでしょうか?

何でもない、特別ではない、普通のことだと思います。きっと「可能性を開く」「夢を叶えるため」「新たな自分に気づく」…みたいな格好いいコメントを期待されているのかもしれませんが(笑)。興味関心や必要に応じて、個々人のタイミングで学び、バージョンアップしていくのが人生100年時代ではないでしょうか。ストレートで大学を出て「バージョン22(歳)で打ち止めです」では寂しい。社会人大学院への進学を特別視せず、「フツーの人生の営み」と位置づけてほしいなと。



———— 最後に、どんな人に進学を勧めますか?

「行きたいタイミングで、誰でも行ってください」です。私自身、自身のキャリアに思い悩む中でふと勧められて踏み出した一歩が、思わぬ道につながっていました。進学を普通の営みとして捉え、真剣に学んでほしいです。何気なく踏み出した一歩が道となり、その一歩が道となる。迷わず学べ、学べば分かるさ、いくぞー!ということで。

一方、私自身がとても恵まれた環境だったのは自覚しています。進学当時はまだ独身で、進学後も家族や職場に応援いただき、自分のために時間やお金を使えました。もちろん各自のご事情も加味して、無理なさらないように判断してほしい。ただ、私よりもっと社会や家庭で重責を担い、時間がない中でも言い訳をせずに通っている同期がほとんどでした。彼ら彼女らもまた、進学の判断は正解だったと口を揃えます。学びたい時に学び、教え導く者と出会う…「卒啄同時」は学びと実践を繰り返せる社会人大学院だからこそ、得られるものでしょう。




——— ありがとうございました。きっかけは何だとしても、真剣に学ぶ。学びを特別視しない。これから学ぶことを考えている人にとって、心強いメッセージをたくさんいただきました!同じ人事として、ご活躍を応援しております!



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