働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」
今回は、早稲田大学大学院 経営管理研究科を修了した金井絵理さんです。
大学卒業後は6社を経て人事などを経験。より深く人事領域を学ぼうと、早稲田大学を学びの場として選びました。「周りは当たり前のように挑戦している人ばかりだった」という大学院での2年間を終えると、程なくして金井さんは会社を辞めて独立します。そしていまは再び受験勉強も……?
学びながら走り続ける金井さんの挑戦についてお話を伺いました。
大手人材会社で採用サービスの法人営業を経験後、人事に転じる。東証一部上場企業2社で主に人材育成と制度設計に携わる。人材育成分野にて行政、業界団体、民間団体より3回の表彰。2020年に個人事業主として、企業研修や大学院受験予備校講師などを行う。2021年に一般社団法人日本ハラスメントリスク管理協会を設立。
早稲田大学大学院 経営管理研究科 人材・組織マネジメント モジュール卒業(MBA)
卒業・修了した大学・大学院:早稲田大学大学院 経営管理研究科
入学年月(年齢):2016年4月(35歳)
修了年月(年齢):2018年3月(37歳)
●ずっと東京の大学にコンプレックスを感じていた
——— 本日はよろしくお願いします!最初に、金井さんのご経歴を簡単に教えていただいてもよろしいでしょうか。
現在は、一般社団法人日本ハラスメントリスク管理協会の代表理事と人材コンサルティングを行うカンパニュラの代表を務めています。2020年に独立したのですが、それまでは計6社で様々な業務を経験しました。最後の2社では人事領域で主に人材育成と制度設計に携わりました。
——— 大学院へ入学した2016年当時は会社員として人事のお仕事をされていたと伺いました。そもそも大学院進学に興味を持ったきっかけは何だったのですか?
私は北海道にある小樽商科大学を卒業しているんですね。今となっては失礼な話ですが、東京では知名度の高いとは言えない大学を出ていることにコンプレックスを感じていました。そのため、東京の大学院で学びたいという思いは、実は社会人になってからずっとありました。
——— なるほど。そのなかでも早稲田大学を選ばれたのはなぜですか?
1つは人事領域を学べるカリキュラムが用意されていたことです。2つ目は、早稲田で学んでいる先輩たちの語る言葉が自分にしっくりきたことでしょうか。当時は合同説明会がリアル開催されていたので、7校を見て回ったんです。各校パネルディスカッションが開かれていました。先輩たちが登壇していたのですが、志を持ち、お話に筋が通っているともっとも感じたのが早稲田だったんです。
●持病の不安。「受かってから考えよう」と踏み出す
——— 大学院入学の際はご自身の体調に関する心配事もおありだったと聞きました。
そうなんです。私は、26歳、35歳、40歳のタイミングで3回手術をしています。40歳のときは肝臓移植手術を受けました。社会人1年目の健康診断で膵胆管合流異常が判明し、その数年後に手術を受けました。その後、内服でマネジメントしていましたが、その一環として35歳に行った外科的処置で副反応が出てしまい、体調を崩した期間が長く続きました。大学院の入学式の日も、そのとき入院していた病院から外出許可をいただいて、入院患者を示すバンドをつけながら参加したほどです。
——— そうだったんですね。私なら投げ出してしまいそうです。
私も大学院進学を本格的に考え始めた当初は不安がありました。無事卒業できるかも分からなかったので、入試の段階で「やはり進学はやめておこうか」という考えがよぎったこともあります。でも、そのとき夫に言われたんです。「それは受かってから考えなよ」と。「たしかにそうだな」と思い直しました。受かってないのにモヤモヤするのはやめよう、受かってから考えよう、と。
——— 入学以降の体調はいかがでしたか?
これ、すごく不思議なんですけど、大学院で過ごした2年間では一度も入院をしなかったんです。普段なら、体調を壊して入院していたと思うのですが……気を張っていたのでしょうか。忙しくしていたのが案外よかったのかもしれません(笑)これはあくまで私の例ですが、同じように進学するか迷っている持病をお持ちの方もたくさんいると思うので、その方々の背中を少しでも押せるのなら嬉しいです。
●挑戦することが当たり前の環境で学んだ2年間
——— 大学院ではどのような学びがありましたか?
授業もそうですが、一緒に学ぶ周りの社会人学生の皆さんから学ぶこともたくさんありました。仕事をしながら、わざわざ学校に何百万円も支払って学んでいる方たちなので、何かしら皆さん挑戦をしているんです。あまりにみなさんが挑戦しているので、挑戦することのハードルが下がって私のなかで当たり前になりましたね。私が会社を起ち上げることに躊躇なく踏み出せたのはその影響もあると思います。感覚的には、「挑戦」=「作業」くらい身近な話になってました(笑)。そんな皆さんと今でも関係が続いていることも嬉しいですね。
——— ちなみに、印象に残っている授業はありますか?
アントレプレナーシップの授業でしょうか。自分たちで考えたビジネスプランに対して、実際のベンチャーキャピタリストの方が講評やアドバイスをくださる回がありました。そのときの「こういうことを学びたかった!」とワクワクする感覚は記憶に残っていますね。
ボストン郊外にあるバブソン大学へ足を運び、英語でプレゼンテーションをする「スタートアップ・ファクトリー」という授業も印象的でした。バブソン大学は日本の多くの経営者も学んだ歴史ある大学です。その大学の先生からプレゼンのフィードバックをいただく貴重な機会をいただきました。それと余談ですが、ハーバード大学の学食でご飯を食べたりもしました(笑)。そういう経験も貴重でしたね。なんといいますか……こういう世界もあるんだということを見せてもらえたのが。当たり前かもしれませんが、海外へ行くと日本はまだまだなんだなということを肌で感じることができました。
——— それは貴重な体験でしたね。
実は、ピッチを勝ち抜いたチームしかバブソン大学には行けない授業だったんです。私はなぜかピッチ前から行けるはずと勢いあまって航空チケットを買っていたのですが、結果的にピッチは負けてしまったんです。そのため本来なら行けないのですが、先生が「そういうの嫌いじゃないよ」と参加を許してくださったというのもいい思い出です(笑)
——— 行動力の勝利ですね(笑)
●大学院を修了後に独立。新たな挑戦のはじまり
——— 大学院を2018年に修了後はすぐに起業したのでしょうか?
2年ぐらい制作会社に勤めて、程なく独立しました。独立に関しては以前から興味がありましたね。体調面で会社員として働き続けることに不安があったこともその一つの理由です。
他にも2020年よりパワハラ防止法が施行されたので、今後この分野がより求められると思ったんです。社会人になってから職場でハラスメントを受けた経験は私にもあります。当初は個人事業主としてこの分野で研修講師をしようと考えていたのですが、世の中の動きを見て「これは法人を立ち上げよう」と思い立ちました。ちなみに独立後の経験から、最近は臨床心理士を目指して受験勉強をしているんです。
——— そうなんですね!あらためて大学院への進学を検討されているということでしょうか?
そうですね。最初はハラスメント対策の仕事でも関わりのある社労士を受けようと思ったのですが、そもそも私には向いていないと感じたのと、すでにハラスメント分野で活躍している社労士に協力を得る方が早いと考え、やめました。同時に、社労士の知識を持っている方に比べて、人の心理面の知識となると学術的に学んでいる人が周りに少ないと気づきました。ハラスメントは法律で罰することもできますが、それは何かが起きてしまった後の話が多い。でももっと手前で予防することはできないかと考えたときに心理学を学びたいと思ったんです。年功序列に管理職に登用するのではなく、適している人を見極めて配置するなど、組織全体の構造をよりよい方向へと近づける支援ができれば、長い目で見ればより大きな効果を期待できるのではないかと私は思っています。
●2024年入学を目指して、毎日勉強する生活を再始動
——— 大学院進学はどういった方に勧めますか?
本音を言えば、経済的なハードルを越えられるのなら多くの人に勧めたいところです。知識を得たり、論理的に考える力をつけることで解消できたり、未然に防げるトラブルはたくさんあるはずです。特に管理部門をはじめとして影響範囲の大きいポジションにいる方々は学び続けてほしいですし、そのために大学院進学も選択肢に一つに入れていただきたいです。
——— ありがとうございます。最後の質問ですが、金井さんにとって大学院はどんな場所ですか?
自分自身を客観的に見つめる場所だと思います。いまの自分の立ち位置、できることやできないことを知れる場所はとても大事ではないでしょうか。特に同じ会社に長くいると、自社の正解は他社にとっても同じであると思い込んだりしますよね。それと、すでに100年前に理論としてまとめられているものを今さら議論しているということも会社で働きながら何度も目にしました。毎回ゼロから考えようとする無駄な仕事を失くして、より生産的な仕事に時間を使うことも勉強することの一つの意味だと思います。私にとって大学院はそういう場所でした。
先ほどの話ですが、臨床心理士を目指して再び大学院への進学を考えています。2024年の春入学を視野に入れて、学校選びと並行して、毎日勉強する生活がはじまりました。学び始めたらとても難しい分野なことに今さら気づいて震えていますが(笑)、がんばります。
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