文系から飛び込んだ製薬業界。もっと学びたい!思いに導かれて社会情報大学院への進学を決断。

働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」

今回は、日本で唯一広報・情報の修士がとれる社会情報大学院(現・社会構想大学院大学)で学んだ大西順子さんです。製薬業界に大きな魅力を感じ、新卒で大鵬薬品工業株式会社に入社。営業部から事業開発部、新規事業部を経て広報へ。スキルアップを目指して大学院へ進学しました。

さまざまな部署で得たキャリアをしなやかに成長させ続けている大西さんに、大学院での経験や未来のビジョンについてお話を伺いました。

大西順子さんプロフィール

新卒で大鵬薬品工業株式会社に入社し、MR(医薬情報担当者)、事業開発部、新規事業部署などを経て3年前より広報を担当。広報への異動をきっかけに社会情報大学院大学(現・社会構想大学院大学)広報・情報研究科(現・コミュニケーションデザイン研究科)で学び、2022年4月に広報・情報学修士(専門職)を取得。

MRを目指したときから製薬業界への熱い思いを抱き続ける

———— まず、大学院進学のきっかけを教えていただけますか?

一つ前の部署である開発事業部にいたときにMBAに興味を持ったのが一番最初のきっかけです。その頃、試しにと思ってMBAの単科を受けてみたんのですが、周りの方が結構積極的でびっくりしてしまって笑。 どれだけ手を挙げて発言するかで評価されるので、言葉を選ばずに言うと、そのガツガツ感が私には合わずその時は断念しました。

———— すぐに社会情報大学院に入学されたわけではなく、MBAも視野に入れていたんですね。そこから広報に異動されて、より実務に近しい大学院で、アカデミックを極めようと?

極めると言うより、年齢も年齢だったので効率よく体系的に学びたいなと思いました。製薬会社の広報って実はいろんな限界あるんです。専門知識がない一般消費者に対しては、限られた情報しか提供できない。他の業界のように、商品をいろいろな角度から魅力的に見せるという、いわば広報の醍醐味のようなことが禁止されている。一般消費者に向けた情報提供ができない製薬会社の広報として何ができるのか。他の業界について学ぶことで、選択肢や知見を増やしたいと思ったのが、進学の動機ですね。

———— 制約の中でも広報としてバリューを出すために学びが必要だったと。この業界で長く働かれていますが、何か思い入れはあるのでしょうか?

就職活動中にたまたま製薬会社に出会い、そこでMRには文系でもなれると聞いて「めちゃくちゃやりたい!」と思ったんです。祖母を亡くしたときに何もできなかったのが悔しくて。

祖父がガンになって余命半年と言われたときに今働いている会社の薬を使って治療した経験もあり、薬の大切さを実感したというのもあります。先生の患者さんに対する思いや患者さんの声を聞いても、すごくやりがいのある仕事だと感じますね。約20年この業界・会社にいますが、就活当初の思いは途切れず、アップダウンはもちろんありますが、楽しく続けています

社外・社内コミュニケーション、ともに担うのが広報

———— 広報では具体的にどんな業務を?

商品に関する広報には制限がありますし、私が担当するのは企業広報なので、一般の方にむけた広報活動で意識するのはリクルートになります。良い人材に入社してもらえるように会社の魅力を伝えるのが大事な仕事です。

あとは、社内的には社員に向けたさまざまな活動をしています。会社がコミュニケションスローガンを作ったときは、それを社内に浸透させるためのアイデアを考えました。オンラインミーティングのバーチャル背景やパワーポイントのテンプレートに登場させたり、社員がオリジナルソングを歌うブランディングムービーを作ったりしたことも。その歌を軸にした社員インタビューを実施し、社員にスローガンを我がコトとして捉えてもらうきっかけを作ったり。そんなことも私たちの仕事です。めちゃくちゃ地道な作業なんですけど、大事なんです。ジワジワと効いてくれって思ってやっています笑。

———— 大学では、インターナル向けの広報に関する授業などはあるんですか?

そうですね、企業理念の浸透といったインターナルコミュニケーションの授業はありました。それ以外にも、企業ブランディング、CSR、昨今重要性が高まっているリスクマネジメントについても学びました。

———— そういった内容を社会人が学べる大学って、他にもあるのでしょうか?

広報の専門職大学院は、社会情報大学院が初だと思いますね。私自身、他の大学院は全然検討しませんでした。広報関係の雑誌に社会情報大学院が紹介されていて、面白そうだと思い、説明会に行ってそのままなんとか入学しました。ここなら自分が携わっている仕事にすぐに生かせる内容を学べそうだと感じたので。

同期は25人くらいで、その中に同じ製薬会社の方が私を含めて4人もいてびっくりしました。大学院での人との出会いも私にとっては貴重な財産になりましたね。広報以外には、マーケティングの方もいます。マーケティングの授業も多いですし。その他にも自営業の方や、地方自治体の方など、さまざまな方がいらっしゃいました。

———— 受験準備は具体的にどんなことをしましたか?

試験は筆記と面接でしたが、研究計画書を作成した以外はあまりしなかったと思います。

仕事と学業で、平日は朝からずっとパソコンの前に座る日々

———— 入学前後でギャップを感じた部分はありますか?

夏休みの宿題を最後まで残してしまうタイプなので、もっといっぱいいっぱいになるかなと思ってたんですけど、意外とイケたなって思います。コロナ禍でオンライン授業の時が多く通学に時間を取られませんでしたし、社会人向けの大学院なので先生方も理解がありめちゃくちゃ厳しい感じでもなくて。課題も思っていたよりは多くなかったです。

平日は、朝7時半〜8時くらいに仕事を始めて、夕方6時ぐらいに終わって6時半から9時40分まで授業。土曜日はフルで取ると朝10時半〜夕方5時50分くらいまで 。日曜日は休みです。入学当初は平日で週3〜4くらい受けていました。

そこまで宿題もなかったかな。授業後にミニッツペーパーを提出しなければいけなかったのですが、授業が終わってから30分くらいでやっていました。

———— 大学院に行くと決めたとき、会社の方との調整は苦労されましたか?

推薦書を書いてもらった上司には事前に大学院に行きますとは伝えましたけど、それ以外は特に調整ごともありませんでした。周囲の方々も理解してくれて。ありがたいですよね。

———— 平日3-4日の授業とかなりお忙しかったと思いますが、大学院での一番の学びはなんですか?

修論を書く経験はとても良かったと思います。もう、どれだけ自分に理論的な思考が欠けているかを実感 笑。自己効力感が上がるかなと思っていたのに「ダメだ私!」とダダ下がりで。こんなに考えられないのか、書けないのかと悲しくなりますよね笑。そんな中で、

コロナが少し落ち着いてきた時に同期と行った飲み会はすごく楽しかったです。授業とちがって、フランクなディスカッションができるので、学びが深まるんですよね。もっとあったら良かったなぁと思います。オンライン飲み会はちょくちょくやってましたけど、やっぱりリアルで話せると違いますよね。

明確なビジョンがなくても、学びたくなったら飛び込めば良い

———— 学んだことを実務に生きている実感はありますか?

例えば、不祥事が起きた時に記者会見を開きますよね?その対応を練習するメディアトレーニングというものを社内で毎年行っているんですが、そこに大学院の授業で学んだことを盛り込んだワークシートを作成し広報メンバー自身のトレーニングに組み込んだりしました。

———— 「これだけは2年間でやっておいたほうが良いよ」と入学当初の自分にいま言いたいことはありますか?

「研究報告書はもう少し早く書き始めたほうが良いよ、読んだ論文はちゃんとまとめとけよ、忘れるよ」と言いたいです笑。研究報告書は、ヒアリングをした結果、仮説が途中で変わったりして、最終的に実施したかったコミュニケーションの提案部分が薄くなってしまったとも感じていて。後悔はしていないですが、反省はしています。

———— 卒業後はどういうキャリアイメージをお持ちですか?

正直なところ、まだキャリアイメージはありません。広報に配属になって面白かったからもっと学びたくなり、効率よく体系的に学べる環境に身を置いたというだけなので、特に広報にこだわりはないんです。これからも面白いなと思うものがあればそれを満喫してもいいかなと思っています。

人生で一回は行ってみたいと思ってたんですよね。社会人になってから、大学時代にもっと勉強しておけば良かったなと思っていたので。興味のある分野だったら、もう一回いってもいいかなって思いますね。

———— 大西さんはどんな方に進学を勧めますか?

学びたいと思ったら、あまり考えずに1回飛び込んでみてもいいと思います。ただ学費はそれなりにかかりますのでその覚悟は必要です。私の場合はこれ!という明確な目標なく比較的ゆるく行っちゃいましたけど、もっと目標を明確に描いて進学する方のほうが残るものは大きいのかもしれません。でも、あまり深く考えて構えなくても良いんじゃないかとも私は思います。

私自身、広報は専門外で知らない情報をたくさん聞けて楽しい時間でした。ありがとうございました!

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