フルタイム×博士で理論と実践の橋渡し役に。東洋大



働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」

今回は、学部時代から働く人のマインドセットに魅せられ、今では仕事と研究どちらもフルタイムで掛け持ちされている、岩本(大久保) 慧悟さんに話を聞きました。現在は、人事系の企業内シンクタンクで研究員として働きつつ、東洋大学大学院社会学研究科社会心理学専攻博士後期課程で、「上司による部下のストレス状況の見積もり」について研究されています。

岩本(大久保) 慧悟さんプロフィール

新卒でディップ株式会社に入社し、ピープルアナリティクスを担当。同社在籍中に、東洋大学大学院博士前期課程(修士課程)に進学。その後、パーソル総合研究所の研究員を経て、現在は、人事系の企業内シンクタンクで研究員としてリサーチ業務を担いつつ、博士後期課程に在籍し、研究を行っている。


実務と理論の橋渡し役になりたい


———— 今回はインタビューにご協力いただきありがとうございます。早速ですが、今までのご経歴を教えていただけますか?

学部時代は、当時新設の学部で東京未来大学のモチベーション行動科学部というところに進学し、社会心理学を専攻していました。高校時代から「人が固く信じていること」に興味があって、哲学か心理学を学びたいと考えていました。同じものを見ているようでも、人によって見え方・感じ方が違うことに面白さを感じていました。

新設の学部でしたが、むしろ美味しい経験ばかりで、学部生20名に対して先生が20名いて、ほぼマンツーマンで論文指導までしてもらいました。学部2、3年の頃から学会の研究会で発表させてもらったり、産学共同研究にも取り組んだりと、貴重な経験ができました。選択して良かったなと思っています。





———— すごい贅沢な経験ですね、羨ましいです!学部では何を研究されていたのでしょうか?

「困難を乗り越える心のメカニズム」について研究していました。卒業研究では、就職活動に前向きに粘り強く取り組むために必要なマインドセットについて研究していました。卒業研究以外にも、ストレスの捉え方に関する研究や、就労者の資格取得へのモチベーションに関する研究にも取り組んでおり、卒業後に論文化しています。研究が楽しく、もともと大学院にストレートで進学しようと考えていたのですが、働く人のマインドセットを研究するうちに、働くって面白そうだな〜と思うようになり、一度民間で働いてみようとシフトチェンジし、新卒でディップ株式会社に就職しました。

研究室で民間企業と一緒に共同研究を行っていたのですが、その時に自分が思っていたよりも社会心理学の研究知見って現場で活用されてないということに気がついて、私自身がその橋渡しになれたらいいなと思ったのも、民間で働いてみたいと考えた理由の一つです。





———— たしかに、私も大学院を修了した今は当たり前に知っている理論や研究も、進学する前は一度も聞いたことがないものが多いです。一方現場では、理論ばかりを振りかざして、手を動かせない人は敬遠されますし、知っていても実務に活かせないパターンが多いかもしれないですね...

大学院で研究能力を身につけることは、理論を「振りかざす」だけではなく、実務に「活かす」ことにもつながると思っています。自ら元の論文を参照し、批判的に読むことができるようになれば、理論の適用範囲や限界を認識できます。また、私の領域なら心理学の理論をコンセプト的に応用するだけではなく、適切に測定して分析することもできるようになるはずです。



研究能力を高めることが実務にも還元される


———— 学部卒業から数年経って「やっぱりまた研究をしよう」と思ったのは、何かきっかけがあったのですか?

もともと民間に就職したときも、研究は続けたいなと思っていました。学部卒業後も、大学時代の先生から論文指導を受けてジャーナルに通したり、学会に参加したりと研究活動は続けていました。社会人3年目頃から、学部時代に身につけた能力の中だけで研究するのではなく、大学院に進学して研究能力をあげることが、実務にも直結するなと思いはじめましたね。ちょうど社会人3,4年目というと基本的な仕事ができるようになり、成長の踊り場にあたる人が多いですが、私もそうでした。次なる成長を求めて、という感じでしょうか。





———— 成長実感が感じ辛くなる時期ってありますよね。私も社会人3年目から大学院に進学しました。仕事をやめて研究に戻るのではなく、仕事も研究もフルタイムで掛け持ちしようとおもったのは、なにか理由がありますか?

心理学の知見を実務に活かしたいという思いが強いので、どちらかだけではなく、どちらの世界にも身を置いていたいなと。どちらも楽しいですし。あとはもちろん、生活のためもあります笑 無尽蔵にお金があれば、数年研究に身をいてもいいかと思いますが、それも2,3年の話であって、5,10年研究だけしていては、実務から遠ざかってしまう怖さがありますね。





———— 実務と研究、一方だけでは成り立たないですもんね。実務から生まれる研究、研究を活かした実務、どっちも大事ですよね。
博士後期課程終了後のキャリアイメージなどはお持ちですか?

大学でいいポストがあれば嬉しいなとは思いますが、実務もとても楽しいので、いい意味で流されながら、そのときの最良の選択をしていきたいですね。





———— こだわりすぎずに、軸を持って流される。ポストが約束されているわけではない昨今のキャリア形成において、大事なスタンスですね。

ハードだけど軽くなる


———— 学部時代とは違う、働きながら大学院に行ったことでの気付きはありますか?

やっぱり職場と大学の二つの組織に属することで二つの世界を行き来している感覚があります。今日はあっちではダメだったけど、こっちでは一つ新しいことにチャレンジできたからOKでしょ!みたいな感じで、前向きに捉えられることが多いですね。体力的にはハードなんだけど、心理的に軽くなる、と言いますか。





———— すごく共感します。職場でもない、家族・友人でもない、第三の場所ができる感覚ですよね。一つの組織にしか属さないと「ここで評価されなかったら終わりだ」と必要以上に気負ってしまって、リスクを取った発言や行動が難しくなりますが、その制限が外れて自由にできる幅が格段に増えました。囚われなくなるというか。

そうなんですよね、体力的には大変なはずなんだけど、なんか楽になっている自分がいて、不思議な感覚でしたね。

あとは、研究と実務の間のテーマに関して、兼業の話をいただけるようになりました。「〇〇やりたいんだよね〜」みたいな軽い相談をされたときに、関連する研究を紹介したり、調査や分析の方法論に基づいてやり方を提案すると、自然な流れで仕事に繋がることが何度かありましたね。





———— 研究と仕事の距離が近くなっているんですね。
私の周りでも、学費高いなと思っていたけれど副業や昇進で回収できそう!という方、ちらほらいますね。

明確なWillを持たずとも受け入れてくれる場所


———— フルタイムの両立はかなりスケジュール的に大変だと思いますが、どんな生活リズムで過ごしてますか?

今は週5日勤務しながら、ゼミや授業があるときは仕事のミーティングが入らないようにブロックして、1日の中で両立させています。短期的な緊急度で仕事優先になりがちなので、研究に専念する時間をちゃんとブロックするようにしています。ありがたいことに、在籍している会社がすごく自由にやらせてくれるので、不自由はしていないです。また、研究が実務に活きることも多いので、単純に時間が二重にかかっている、という状況ではないですね。研究でまとめたレジュメを、会社のメンバーに共有することもあります。





———— 研究と仕事の距離が近いと相乗効果も生まれやすいですよね。岩本さんの場合、二つの距離がちがいので、進学時に会社からの反対とかはなかったですか?

そうですね、一社目のディップ在籍中のタイミングで進学したのですが、当時の上司がとても協力的で快く送り出してくれました。会社としても、そうした個人のチャレンジを応援してくれる風土だと思います。ただ、「環境に恵まれてた」だけでは読者の方のお役に立たないですよね(笑)一応社内に説明しやすいように、私の進学が会社にとってどれくらいプラスになるのかを上司にプレゼンしました。もちろん研究で身についた専門性が実務に活きます、というのは大前提ですが、それ以外にも、採用広報に貢献できるという文脈でもアピールしました。実際に、働きながら学べる環境だと私の実体験交えて採用広報の記事にしました。





———— 採用に協力するのはとてもいいですね!最近、所属する企業で新卒面接をしていて、社会人大学院のことを必ずと言っていいほど聞かれます。みんな面接官の名前で検索して、私が大学院に行っていることに興味を持ってくれるみたいです。ポータブルスキルを身につける前提で就活している大学生の多さにびっくりしますが、そういう時代ですよね。

キャリア初期に大学にもどって学ぶことは、「まだ、はやい」と言われることが多いですが、私個人的には良かったと思います。自分も人生の満足度あがったなーとおもうので。これを社会人10年目とかまで先延ばしにして、働く残りの年数が短くなるのは勿体ないかな、って思ったりします。

味があるなら年齢とか気にせずに、ぜひ進学してほしい!という気持ちですね。進学してみたいなという気持ちがあれば、明確な研究目的や課題感が無くてもいいんじゃないかなって思います。少なくとも修士課程。もちろん、研究科やコースによって志向性や特徴は様々ですが、そうした方の受け皿になってくれる場合が多いと思います。





———— 働きながら学ぶ・研究することが、特別ではない世界になっていくといいですよね。ありがとうございました!

博士後期課程で学ぶ人のインタビュー

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