
社会人としての顔を持ちながら大学院に通うことを検討している人の背中をそっと押せる有益な情報をお届けします。
今回インタビューしたのは、IE University日本オフィス事務局ディレクター飯野 香さんです。
IE日本オフィスにて広報・事務局としての役割を一手に引き受けている。自身も2008年にIEを卒業。大手外資ITを2社経験後、現在のIE日本オフィスのディレクターに就任。IEでの多国籍チームの中で培ったスキルをマネージングに活かしている。
IE Universityはスペイン・マドリードに本拠地を置き、世界中から学生が集まります。多様性に富んだIE Universityはスペイン国外77カ国からの留学生、教授陣も50%がスペイン国外出身。
学生の学びの最大化のために、世界各国から最新の知見とスキルセットを携えた教授陣を集結し、ひとつの手法にこだわることなく様々な方法や最新の教材を用いて、実践的で楽しく受講できるように効率的に設計されています。まさに最高の環境がここにあると言えるでしょう。
フルタイムMBAやExecutiveMBA他、さまざまなコースを提供しているIE Universityの中で今回はパートタイムMBAのお話を中心に伺いました。働きながら海外MBAの取得に興味がある方必見です!
※記載は2025年4月時点の情報です。
●グローバルな環境でリーダーシップスキルを磨く
—————まず初めに、IEビジネススクールのパートタイムMBAの基本的なスケジュールについて教えていただけますか?
IEでの授業は週1回、土曜日の日本時間でサマータイムだと午後6時から、冬は午後7時から始まります。授業は約3時間半ほどです。時差を考慮して設計されているので、日本にいながら時間帯的には無理なく参加できるのが特徴です。
—————週1回で3時間半というのは、仕事を続けながらでも十分対応できそうですね。参加者はどのような方が多いのでしょうか?
基本的に皆さん仕事をしながら学んでいます。現在の仕事をレベルアップしたい方や、キャリアアップのために学ぶ方が中心です。また、女性で育休中の方や、駐在に同行している配偶者の方など、キャリアの間を生かして学ぶ方もいらっしゃいます。多様なバックグラウンドの方が集まっているのも特徴ですね。
—————プログラムの特徴として「起業家精神」が挙げられていますが、これは具体的にどのような意味を持つのでしょうか?
「起業家精神」というと起業したい人向けの学校と誤解されがちですが、必ずしもそれだけではないんです。会社内で改革をしたい方や、大企業でも新規事業を立ち上げたい方向けのマインドセットを育てるものでもあります。トランスフォーメーションやリーダーシップの発揮、特にグローバルレベルでのリーダーシップスキルを養うことに重点を置いています。
—————なるほど、社内変革やアントレプレナーシップを養うということですね。グローバルな環境で学ぶことの強みもありそうです。
そうですね。それぞれの社内の多様性よりも圧倒的に多様性に富んだIEでの環境で、授業内外問わずリーダーシップを発揮する練習ができます。前日の授業やグループワークで学んだことを翌日の仕事で実践し、またその経験を学びに還元する。この実践と学びの行ったり来たりのサイクルを働きながら経験できるということが醍醐味でもありますし、IEが期待してる効果でもあります。
—————仕事で経験したことをIEの中で試してみたり、逆にIEでの学びを仕事ですぐに活かしたり、リアルタイムで両輪をグルグル回しながら学びや経験を深めていけるんですね!
●少人数制とスクーリングで深い学びを提供
—————クラスの規模はどれくらいなのでしょうか?
1クラス約20名の少人数制です。通常のMBAだと50人くらいのクラスサイズが一般的ですが、オンラインの特性を考慮して小さく設計しています。これにより、発言の機会が増え、より密度の高い学びが可能になります。全体では4〜5クラスあり、全学年で100名前後の規模です。
—————IEの授業はどんなスタイルですか?ケーススタディ?ディスカッション中心?
科目によって最適な学び方があります。例えば先にやり方を知らなくては元も子もない科目、会計などは先にレクチャーで会計知識やファイナンシャル・ステートメントの作り方を学びます。十分な知識がついたらディスカッションに入っていきます。一方マーケティングや戦略などはケーススタディ中心です。教授によりますが初回からケースをやっていくことが多いです。
—————地域ごとに授業が分かれているというもの耳にしたことがあるのですが
時差の関係で大まかに2つのシフトに分かれています。日本からアジア太平洋圏の学生だと土曜の18時/19時スタートのシフトに入ります。もう一つのシフトは日本時間で日曜に日付が変わる時間帯のスタートです。そちらにはアメリカ大陸やヨーロッパからの受講者が入ることが多いです。国籍自体は90%以上がスペイン外の出身者であり非常にインターナショナルでマジョリティがいない環境です。
—————オンラインだけでなくスクーリング(対面授業)もあると聞きました
はい、17ヶ月のプログラム期間中に3回、1週間ずつのスクーリングがあり、学年全員がマドリッドに集まります。スクーリングでは通常のオンライン講義とは異なり、ワークショップやソフトスキルの練習に集中します。チームビルディングやプレゼンテーションスキル、コミュニケーションスキルなど、ロールプレイングの場面があるものや対面で行った方が効果的なものを重点的に行います。一部ハードスキル授業もあり、データ分析など細かい作業も対面で進めた方が良いと考えているので現地で行なっています。また、このスクーリング期間を通して他のクラスや他のシフトの学生とも大いに交流できる機会になっています。

●カリキュラムの特徴
—————カリキュラムの中で特徴的な科目はありますか?
ファイナンスが非常に充実しています。全くファイナンスやアカウンティングを触ったことがない方でも理解できるよう設計されています。また、最終的にグループプロジェクトがあり、企業プロジェクトか会社内で行うプロジェクトを選んで実践することができます。
—————そのプロジェクトはどのような形で行われるのですか?
3学期目に3~4人程度のチームで行います。コーチングを受けながらアイデア出しから始め、最終的にはFACE TO FACEのモジュールで発表します。実際のビジネス環境での実践を想定した内容で、学びの集大成となります。
—————他のMBAとの差別化はどんなところにありますか?
やはりリモートと対面を経ての人間関係の構築でしょうか。対面でしか築けないリレーションがある一方で、リモートで世界中の仲間と協業しなくてはいけません。リアルなビジネスで必要とされるグローバル人材としての実力が身につきます。
—————IEの教授陣にはどんな人がいますか?
実務家の教員が9割以上を占めています。とはいえ彼らの9割がPhDホルダーであり、自身の研究分野を持っています。特にアントレやデジタル系の授業では実務家の教員が多く、実際のビジネスを熟知している経験を交えて授業が進みます。また、教授用の部屋というものが一部のフルタイムファカルティを除いてはないため、WhatsAppなどで気軽に連絡を取って、放課後にコーヒーチャットに誘うことも可能です。
●学位の価値とアルムナイネットワーク
—————IEのパートタイムMBA、学位としての価値はどのように位置付けられているのでしょうか?
学位としての価値は通常のMBAと変わりません。公式の学位として認められており、クオリティの担保もしっかりされています。履歴書上も「IEのMBA卒」と書かれ、卒業証明書にもオンラインMBAと表記されることもなく、「グローバルMBA」と表記されます。
————— IEには毎年20~30名ほどの入学者がいますが、アルムナイネットワークが強いと聞きました。その理由は何でしょうか?
IEの特徴として、世界各地にオフィスを持ち、卒業生のケアに力を入れていることが挙げられます。日本オフィスでは私がフルタイムで勤務しており、卒業生向けのイベントやネットワーキングの機会を積極的に提供しています。卒業してからも継続的なサポートがあるというのは大きな強みだと思います。
リクルーティングの面でも各地にローカルを配置するというのは大きな特徴であり、私自身はアルムナイの統括だけでなく、企業の人事部の方とお話をしてエグゼクティブ向けのカスタマイズプログラムを設計することもありますし、国内の高校生や先生と話したり、大学で説明会をしたりもします。全部一人で幅広くやっています。
—————卒業生も受験を検討してるフェーズの時に飯野さんにお世話になったって言ってましたよ!それにアルムナイがいいからIEを選ぶという方もいました。
私自身もIEの卒業生なので、そう言った意味でも相談しやすいのかなと思いますね。
IEの卒業生はネットワークに「貢献したい」という考えの人が多いです。むろん、起業の壁打ちやメンター、インターンなどでお世話になるということもありますが、それ以上に次は自分がGive backするという考えの人が多いです。

●IEに入るためのリアルな情報
—————IEの入試はどのくらい難しいですか?合格率や必要なスコアを教えてください。
合格率は非公開ですが、IEの求める人材と基準にマッチしていることが重要です。実際に運用可能なレベルの英語力となると、TOEFL100というスコア以上に面接でシビアに見てくるので、注意が必要です。
—————受験生によくある「失敗するポイント」と「合格するためのアドバイス」は?
エッセイをそのまま他校の名前に入れ替えても通用してしまうようなものは印象があまりよくありません。しっかりと学校やプログラムのことを調べたうえで受験しているとわかるものは好印象です。
また、今後のキャリア目標と、なぜそれをするのが他の人ではなく自分でなくてはいけないのか、というところがなかなか結びつきづらいので、その点は意識して突き詰めるとよいでしょう。
—————日本人受験者に向けた「IE合格のためのおすすめ勉強法」は?(英語力、GMAT対策など)
スコアメイクは予備校などにお任せする方が多いと思いますのでそこは割愛しますが、一番重要なのはコミュニケーション能力と突破力だと思います。IEの日本人学生は、たとえ留学経験が以前になくとも積極的に多様な人とかかわろうとする人が多いです。また、ネイティブの発音でなかったとしてもそれを理由におとなしくしているのではなく、積極的に授業内で発言し、プレゼンスを出していく人が多いです。入学したらあとは無事卒業を待つだけ、という人には向いていません。市場でIEというブランド認知があるのは確かですが、その看板を活かしてというよりは、IEという場の中でまず何者かになりたい、と思っている人が有意義なMBA生活を送ることができるパターンだと思います。
●卒業後のキャリアーーIEのMBAで人生はどう変わる?
—————実際に、IEのMBAを取得すると年収はどのくらい上がりますか?
グローバル全体で見ると、Financial TimesのランキングでIEのパートタイムMBAの卒業生を調査したところでは、卒業3年後に給料が平均で約45%アップしているそうです。もちろん、この平均上がり幅はオンラインMBAの中でもトップです。
—————IEの卒業生が活躍している業界・企業を教えてください。
転職組は外資が多いと感じています。業種は様々でコンサルもいればテック系やエンタメ系、製薬などもいます。
—————「IEを卒業して起業した人」の成功事例があれば教えてください。
卒業して起業した中では、同じオンラインフォーマットではありますがExecutiveMBA卒業後、アルダグラムを起業した長濱さんや、GMBA卒業し数年後にアンプトークを起業した猪瀬さんなどいらっしゃいます。
●最後に:IEで学ぶべき人へ
—————最後に、IEビジネススクールを検討している方へのメッセージをお願いします。
想定できる範囲の未来ではつまらないから、何かを変えたいという人にピッタリの学校です。 IEでは、働きながらグローバルな環境でMBAを取得できることが最大の魅力です。オンラインでありながらも質の高い教育と、対面でのスキル習得の機会があり、学位としての価値も通常のMBAと変わりません。そして何より、卒業後も続く強力なグローバルネットワークが、長期的なキャリア発展をサポートします。現在の仕事をレベルアップしたい方、グローバルな視点でリーダーシップを発揮したい方にぜひ検討していただきたいプログラムです。
—————貴重なお話をありがとうございました。IEの魅力がよく伝わってきました。これから社会人MBAを検討している方にとって、とても参考になる内容だと思います。