働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」
今回は、グロービス経営大学院を修了された佐藤正基さんです。
「経営者達と対等に会話したい」。学習塾・家庭教師のトライグループでフランチャイズオーナーに経営指導を5年間行い、経営レベルの知識・会話の必要性を感じた佐藤さん。必ずしも学びに前向きではない周囲と折り合いをつけながら、学び、実践に活かし切ろうとする姿勢には、表面的なリスキリングでは片付けられない大人の学びがありました。
1995年神戸大学国際文化学部入学。トライグループを始め教育支援企業で20年間の経験を積み、MBA取得後、経営コンサルタントに転身。現在は株式会社トリプルバリューにて取締役COOを務め、企業の経営課題を解決する傍ら、日本プロフェッショナル講師協会認定講師の資格を持ち研修講師としても活躍中。
卒業・修了した大学・大学院:グロービス経営大学院
入学年月(年齢):2019年(42歳)
修了年月(年齢):2021年(44歳)
●経営者と肩を並べられる存在になりたい
——— まずは大学時代からのご経歴を教えてください。
大学は神戸大学です。もともと海外への憧れみたいなのがあって、国際文化を学びました。広島の田舎から出てきたので、情報格差や教育格差みたいなものを感じていて、それがバネになればよかったんですが、僕の場合は劣等感にしかならなくて。学部時代は、バイトと音楽活動に明け暮れていましたね。
——— まだネットで情報収集って時代でもないですもんね。就職はどちらに?
2001年に学習塾に就職しました。大学卒業自体が5年半かかっていて、秋卒業だったので、そんなに選べる先もなくって。求人情報誌のanで見つけたのがその企業で、運良く拾ってもらいました。その後、紆余曲折があってトライグループに転職しました。教室で教える立場ではなくて、フランチャイズでトライの看板を背負ってくれる企業さんにコンサルタントをする仕事でした。まる5年働きました。
——— そこでの経験がグロービス進学のきっかけにつながっているのでしょうか?
そうですね、学習塾の中で西日本統括を任される立場になったことがきっかけで、大手フランチャイズチェーンの経営者の方々と会話する機会が増えていきました。学習塾以外の事業もされていて、10億円、100億円規模の売り上げを作る人たちです。塾一店舗の売り上げやマネジメントの視点で会話していては、対等に渡り合える人たちではなくって。もっと時間軸も長く、広い視点が必要だと思うようになりました。そこで、グロービスの単科に通いはじめました。
——— 単科から本科に進もうと思ったのはなぜでしょう?そこでの学びが有効だったからとか、人との繋がりがよかったからとか。
いえ、そんな高尚なことは考えなかったです。MBAを取ることで、年収が上がればいいなとか、経営者とちゃんと渡り合えるようになりたいとか、実利のことしか考えていなかったですよ。そこから、学友たちに磨かれるうちに、学びの有効性や人の繋がりの大切さに気づいていきました。
●インプットだけでは自己満足で終わる
——— 本科に進んでからは、期待した学びは得られましたか?
卒業して半年たった今も、まだ発展途上だと感じますね。フレームワークとかは一定使えるようになりましたけど、じゃあそれがお金になるレベルまで磨きかかっているかといわれたら微妙ですね。通っている時から思ってましたけど、やっぱり授業を受けたり勉強会に参加するだけで、身になるかと言われると疑問ですね。その後ちゃんと使えるようになるには、タイムラグがあると思いますね。ちゃんとどう使うかまでイメージしながら学んだことを使い続けること、使う場に身をおくことが大事なんだと思います。これは、昔のグロービス卒業生からも今はそこが足りていないんじゃないかって。
——— というのは?
MBAってもともとの成り立ちとしては、経営層を養成するためのものじゃないですか。でも今のグロービスの卒業生って、ただの平社員だったりするし、必ずしも全員が起業マインドを持っているわけでもない。それが全部がぜんぶ悪いってわけじゃないですけど、最低でも学んだことを実践で使えるレベルにはなる必要があると思うんです。
——— 職業訓練化しているって話は別のところでも聞いたことがあります。
今は、株式会社トリプルバリューっていう中小企業向けに経営コンサルを提供する会社でCOOとして働いていて、主に補助金申請のサポートやコンサルタント業務をしています。
前者の補助金サポートはMBAでの学びも役に立っていて、結構うまくいっています。補助金の採択って50%通ればいいって言われてるんですが、私がサポートしている起業様は80%くらいの通過率なんです。申請のための事業計画作成をサポートするんですが、これはMBAで学んだ事業分析や資金計画がそのまま生きていると感じます。一方で、後者の経営コンサルの方はまだ道半ばです。
——— 仕事の中でもMBAでの学びがすぐに活きる領域と時間がかかる領域があるんですね。
そうですね、いずれは独り立ちして食べていけるレベルまで、コンサルタントとしての腕を磨きたいですね。
●授業以外の学びと繋がり
——— 佐藤さんといえば、「人的ネットワーク」づくりの教科書 を在学中に共著でされていますよね。
はい、グロービスの2年目にみんな必ず研究プロジェクト(研プロ)に取り組むんです。僕は大阪校のメンバーと人的ネットワークについて研究して、そのアウトプットとして本を出しました。そのあたりからブーストがかかっていきましたね。それまでは授業や勉強会への出席だけで、正直無理してる感もなくて。他の人は徹夜してレポート書いたりしてましたけど、僕はそんなこともなく。寝る時間はちゃんと確保しながら、遊ぶ時間を削ったりするくらいでした。自分の生活ペースを守りながら学んでいました。研プロはただインプットするだけではなく、成果物にコミットしないといけない。そこでやっと学びが繋がりはじめました。何がわかってないからできないのか、本気で考えるようになりましたね。
——— インプットだけだと、わかった気になりますよね。
そうそう。この頃に、今勤めているトリプルバリューを手伝いはじめました。当時はまだ別お会社で働いていたんですけど、トリプルバリューの社長がグロービスの先輩で、求人だしていたので、僕でよければ手伝いますよっていって。社長が一人で奮闘している姿をみて、自分も何か力になりたいと強く思いました。研プロとトリプルバリューでの仕事が僕にとってはすごく相乗効果になっていて。学んだことを実践する場がすぐ近くにあることが、僕にはよかった。今は、この会社を大きくすることが僕の役目だと思っています。
●周囲の理解か自分の信念か
——— 時間軸を戻しますが、入学準備についても教えてください。ご家族の説得や、会社の理解を得るために工夫したことはありますか?
僕の場合、周囲の理解を得るのが一番大変でした。総じて言われたのが「うつつを抜かすな」ってことですね。トライにいた頃からMBAの必要性を感じていたけど、土日も仕事があって学べる環境じゃなかった。なので、転職してから進学したんです。でも新しい会社では、入社して半年も経たずして大学院進学を検討している僕をよく思わない人も多かった、特に経営者ですね。
——— 経営者がそのスタンスだとやりづらそう。
しょうがないなとも思います。経営者って裏切り続けられる存在なんですよ。横領なんかはわかりやすい例ですが、転職も一種の裏切りですよね。他の会社に目を向けたり、勉強して他のことに時間を割くのをよく思わない経営者って多いとおもいますよ。家族でいうと、2017年に子供が生まれて一番手のかかる頃に進学しているので、奥さんからは苦言を呈されましたね。「ちゃんと面倒みれるの?」って。
——— 心から応援される環境じゃない中で、なぜ佐藤さんは自分の意思を貫けたんですか?
そこでの人間関係よりも、自分のやりたいことをやる方が、人生の優先度が高いからですね。会社にしがみつくつもりもないし、4,50歳になった時に会社が僕の人生に責任を持ってくれるとはこれっぽっちも思えなかった。だから、勝手にやりまーすって感じでしたね。でも、その代わりに僕ができることなら全力でやりますってスタンスを貫きました。これは会社でも家庭でも同じですね。
●今後のキャリアビジョン
——— 今後のキャリアビジョンについて教えてください。
自分視点、会社視点、社会視点の3つあります。会社視点としては、今設立5年目のトリプルバリューを設立10年目までに売り上げ10億円の会社にしたいですね。10億はグロース上場に必要な最低ラインと言われている額で、そこまでの成長の過程を見てみたいですね。あとは、僕と社長の小さな会社ですけど、好きな人と働けて、やりがいがあるなって感覚があるので、この人と一緒にゼロイチを作っていきたいと思っています。
社会視点としては、ワクワクする人を増やしたいと思っています。これは僕の信条にも合致しているので、今のトリプルバリューでの事業をとおしてワクワクする人を増やすようなことを仕掛けていきたいですね。自分視点としては、独り立ちしたいって気持ちがあります。グロービスで人的ネットワークの研究をしたくらいなので、ネットワークの重要性は理解しているつもりです。今の仕事も、繋がりから生まれていて、助けてもらってる実感もあります。でも、僕個人の特性としては、あまり多くの人と働くのは向いてない。部下を持つのはいやだし、嫌いな人と働きたくない。今まで人間関係で苦労してきたし、きっと今後もそうだと思うんです笑。だからこそ、いい距離感で人的ネットワークを活用しつつ、なるべく一人の力で世の中に貢献できる経験値やスキルを身につけていきたいと思いますね。
●学んだ先に何があるのか
——— 佐藤さんにとって、大学院で学ぶってなんですか?
うーん、あえて言うなら自己満足ですね。学ぶだけなら自己満足の域をでないと思います。やっぱり、その知識を使ったりお金に変換したり、世の中に還元してこそ学びの意味があると思います。
——— 学ぶってことだけど切り取れば、自己満足ってことですね。学んだ先を考えないと意味ないよねと。では、どんな人に大学院進学を勧めますか?
何か現状を変えたい人でしょうか。よくいるでしょ、変わりたいんですっていう人。でも本来人間は、ホメオスタシスが働いていて、変わりたくないはずなんですよ。それでも変わりたいという強い意思のある人には学んで欲しいなって思いますね。最初はそういったモヤモヤを払う意味で足を踏み入れてみるのはいいとも思います。でも、卒業まじかになったら、この学びをどう活かそうかって考える必要はあると思いますね。
——— 最初は、何かを変えたい、学びたいってモチベーションだけでいい。でも学びに一区切りつけて実践に戻る時には、この学びをどう使いこなしていくかって視点を加える必要がありますね。
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