働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」
今回はグロービス経営大学院で学んでいる町野 友梨さんです。
大学時代は「何も勉強しなかった4年間」だったと語る町野さん。卒業後はサイバーエージェントを経て、当時30名程度だったフォースタートアップスに入社。目標が明確になれば徹底的にやり遂げることができる町野さんですが、自分で「こうしたい」と思えることがなかなか最初は見つからなかったそうです。自分の意思で働きながら大学院で学ぶ現在に至るまでの、その道程について話を伺いました。
慶應義塾大学出身。大学時は学祭の運営、短期留学、海外周遊を経験。”いわゆる大学生活”を満喫し、新卒にてサイバーエージェントに入社。インターネット広告事業本部にて、幅広い業界のクライアントの運用コンサルタント兼営業として従事。死にものぐるいで働いた結果、何のために働くのかと疑問に思っていたところにフォースタートアップスに出会いジョイン。現在はシニアマネージャー・シニアヒューマンキャピタリストとして、スタートアップを人材面から支援。日本から少しでも多くのイノベーションを生み出すために日々頑張っています。
卒業・修了した大学・大学院:グロービス経営大学院
入学年月(年齢):2022年4月1日(28歳)
修了年月(年齢):2024年3月31日(30歳)※予定
●目的なく大学に入学してしまった結果
——— 本日はよろしくお願いします。もともと慶應義塾大学の文学部出身とのことですが町野さんはどんな大学時代を過ごしていたのでしょうか?
いくつか「えれキャリ」の記事を拝見したのですが、皆さんのように大学時代に目的を持って勉強していたわけではないんですよね。「何も勉強しなかった4年間」でした。たまたま姉2人が慶應に通っていたのもあり、何のために大学へ行きたいのかを深く考えずに慶應を受験しました。そのため、大学時代のことを聞かれると正直苦しいんですよね。
それまでは周囲の期待に応えようとし続けて、受験勉強を頑張って頑張って、部活も頑張って頑張って頑張って、その反動で疲れちゃって、大学はひたすら遊んだ記憶しかありません(笑)。でも、ものすごく退屈だったんですよ。
——— 退屈、ですか?
人生経験だと思って海外旅行にもたくさん行きました。ヨーロッパや南米を周遊したり。学祭実行委員会にも入り、仲間と素晴らしい時間を過ごすことも出来ました。そうやって過ごした4年間は、環境としてはとても恵まれていたと思います、友達にも恵まれ、家族は仲が良く何事も応援してくれて、バイトの稼ぎも良かったため、経済的にも自由に使えるお金がありました。
ただ、すごく楽しいのに同時に楽しいだけしか残っていない、そんな虚無感も感じました。何も不満がなかったことに不満だったといいますか……。おもしろくない、平凡すぎる、何も刺激がないと思って、最終的に「何で生きているんだろう?」というところまで行きつきました。いろいろやったんですけどね、短期留学に行ったり、プログラミングスクールに足を運んだり、ボランティアに参加したり。だけど、全然満たされなかったんです。
——— その「満たされない」というのは何だったんでしょうね。
目標がなかったからだと思います。
高校までは、部活なら陸上部で「何秒を切りたい」とタイムを目標にしたり、受験勉強なら「慶應に受かりたい」という明確な目標がありました。大学では目標がなくて、何をしてもそれが繋がってる先が見えなかったんですよね。とはいえ、やりたいことも別になくて、大学生らしく思いついたことは全部やろうと過ごした4年間でした。勉強がおもしろいとも思えなくて、ゼミも途中で抜けました。卒業後は、とにかく働きたい、とにかく何かに打ち込みたいと、新卒ではサイバーエージェントに入社しました。
●「for What」が自身にとって重要だと気づいた2年間
———サイバーエージェントに在籍した2年2ヶ月はどんな時間でしたか?
それが水を得た魚のように働いたんですよ。
「一番難しくて、一番忙しい仕事が欲しいです」と入社時に伝えたら、ありがたいことに新卒にとってはチャレンジングな難易度の高いクライアントを担当させてもらったので充実していました。ただ、単純に業務量が多かったのと、「その日の仕事はその日に全部終わらせたい」という当時の私の完璧主義のような仕事の仕方がたたって、ちょっと疲れてしまって。
そろそろセーブしないとなと思ったタイミングで「あれ、何をしたかったんだろうか、自分は」とふと思ったんです。
——— そこでふと立ち止まったと。
そうですね。高校時代までしていた「頑張る」を仕事でもう一度やってみたけど、結局それは何に繋がるんだろうか?と思ったのが社会人2年目の冬でしたね。そのときにあらためて気づいたのは、「いい大学に行って、いい会社に入る」というつまらない教えのようなものに対する怒りが自分のなかにあるんだなということでした。
——— そのあたり、もう少し詳しくお聞きしたいです。
そもそも学校教育への違和感が昔からあったんですね。画一的で、全員が制服を着て、100点を目指すような教育はつまらないなとずっと思ってきました。それなりにちゃんと点数を取っていい子にしていれば褒められる。だけど自我を持って主張する人は怒られる。ルールに則ることが強く求められてることに対して、窮屈さを感じていました。
学校という場は人生を決める場、そういう場に関わりたいと教育学部を受けて先生を目指そうか大学の進路選択で悩んだくらいです。結局は、ビジネスパーソンとしてのスキルをまずは身に着けてから考えようと、いまの道を歩んできているのですが。
ちょうど社会人2年目で自分を見つめ直したときに、自分のコンプレックスや社会に対する怒りがそのあたりにあることに気づいて、サイバーエージェントからフォースタートアップスに転職することにしました。
——— フォースタートアップスへの入社の決め手はなんだったのでしょうか?
16年9月に設立された会社ですが、転職先を探していた18年1月ごろに出会ったので、会社として設立されてまだ1年ちょっと。まだ30人ぐらいの会社でした。せっかく転職するなら、急成長する組織でチャレンジしたいという想いからスタートアップで探していたので、求めている規模感に近かったというのが1つです。
もう1つはビジョンへの共感です。敷かれたレールを生きるのではなく、自分らしくチャレンジする人を増やしたいという想いが自分のなかにあるので、フォースタートアップスが掲げるチャレンジャーを応援して成功まで導くビジョンに惹かれました。加えて、代表の志水に出会い「この人本気だな、この人に人生を懸けてみたい」って思ったことも大きいです。最後は直感で決めましたね。入社してもう4年半ほど経ちますが、組織、自身の課題が目まぐるしく変わるので毎日楽しんでいます。
●「あなたはどうしたいの?」にうまく答えられなかった
——— ここから大学院のお話も伺っていければと思います。グロービス経営大学院への進学のきっかけは何だったのでしょうか?
2つあります。
1つは、「応援したい」と思える起業家のみなさんに対して、高付加価値なサービスや気づきなどを提供できるようになりたいというものです。ヒューマンキャピタリストとして、会社経営のパートナーを目指していますが、信頼してもらえる相手になるためにはやはり経営がわからないといけません。そのためには経営者と共通言語を使って話せる必要があります。
もう1つは、フォースタートアップスをもっと大きな会社にして、自分が解決したい社会課題にアプローチしていきたいためです。そのために経営に携わりたいと思っています。いずれにせよ経営を学ばなくてはこれ以上は難しいと感じ、グロービスに通いはじめました。
——— 学部時代の「勉強」とは捉え方が違うと思います。
そうですね、今回は旦那も置いていってるので(笑)
21年4月に旦那がシンガポールへ転勤になったのですが、大学院で学ぶためにも、ついて行かない選択をしました。私は「何のために」が明確になると決断は早いタイプなんですよね。これまでは「何のために」を自分であまり考えたことがありませんでした。受験勉強のようにやらなくちゃいけないことで頑張ってきたので、自分の意思というものがわからなかったんです。フォースタートアップスに入社したときも「あなたはどうしたいの?」と聞かれると「どうして欲しいですか?」って聞いちゃっていたり。私自身すごく困っていたのですが、4年間問われ続けたおかげで自分の中で「こうしたい」っていう意思が出るようになったんです。
——— 自分で自分のやりたいことを決めると。
そうですね。自分で決めることは苦しいし、大変です。正直プレッシャーも感じますね。いまはタレントエージェンシー本部をどうしていくのかを、役員陣とすり合わせながら決めていますが、そこはお伺いではなく「自分としてはこうしていきたい」という意思がないと経営判断ができません。責任も大きいですし意思をぶつけ合うのは体力もいります。お伺いするのって楽だったんだなって振り返ってみて思いますね。
——— 大学院での学びがそういった意思決定の役に立っていると実感しますか?
そうですね。まだ学びはじめてから1年ちょっとなので、体系立てて思考したり、意思決定に結びつけたりするまで使いこなせてはいないのですが、経営者の使っている言葉がやっと理解できるようにはなってきました。
それまでは知っていることもすべて「点」の知識でしたが、それが「線」となって繋がりが見えてきたのは大きいですね。アカウンティングは経営にこう関わって、マーケティングはこう関わって、戦略はこうやって描いて、そこにマーケティングや人事戦略は紐づいて……みたいな。パズルの全体像がわからなかったところから、ピースの足りなかった部分が埋まりはじめて、どこに何を埋めるとよいのかが見えてきた感覚でしょうか。やはり学ぶだけではなく、実践を通じてその学びを引き出し続けることを積み重ねていくことが重要で、大学院に行ったからといって経営ができるわけではないと思います。
●MBA=ビジネスにおける運転免許証
——— 大学院での学びのなかで、印象に残っているものはありますか。
いくつかありますが、まずはアカウンティングとファイナンスですね。
それまでは、経営って何を意識しながら進めるべきなのか、そのあたりのコスト意識ってあまり持っていませんでした。何をコストとして見て、何を投資として見るのか。なぜ利益率が高いのか、低いのか。この授業で学んでからは、数字を使って考えて意思決定をしていくという意識がかなり強くなりましたね。
——— 他にもありますか?
もう1つはちょうど学んでいるところで、リーダーシップ開発と倫理・価値観という授業があって、そこで社内のメンバーに360度評価でフィードバックをもらう場があったんです。一緒に働くメンバーからフィードバックをもらったことで、自分には戦略的思考が足りてないのが見えてきました。そのうえで、じゃあどうしていくのかを言語化しているところです。組織を動かしていくうえでも、良い学びになりました。
——— 町野さんはどんな人に社会人大学院を勧めますか?
悩みますね。「会社に言われてとりあえず来てます」という方も正直いらっしゃるのですが、私の場合は大学時代に目的なく学ぶことに意味がなかったことを痛感しているからこそ、目的が最初にある方がよりよい学びの場になるんじゃないかなと思ってます。なので「学びたい」と思ったときに大学院に行くといいんじゃないでしょうか。でも、学ぶ中で見つかるとも思うので、成長したいと思う人は全員行ったほうが良いと思います。
——— なるほど。
私の場合は、組織を動かすには知らないことが多すぎて、自分の足りなさに「もう限界」って思ったタイミングが進学を決めたきっかけなんですね。通い始める2年ほど前から、グロービスに通うことを勧められておりました。そのとき勧めてくれていた上長の言葉を借りるならば「MBAって運転免許ぐらい経営やビジネスをするうえで重要だよね」って。それがあるからビジネスができるという話ではないけど、その基礎があるから右に曲がる方法やアクセルの踏み方がわかるので、みんな持っておくべきだよねって言っていた意味がいまはものすごくわかります。
なぜなら経営って何でもやるから。全てにおいて意思決定が求められるので、360度アンテナを張るのが重要。いろんな専門領域の人と話したときに「ここ変じゃないですか」とかって言える引き出しを持っていたいです。私はまだまだ使いこなせてないですが(笑)。
——— ありがとうございます。最後に皆さんにもお聞きしているのですが、町野さんにとって大学院とは何ですか?
自分にとって大学院……そうですね。今回は学びたいことがあって、「何のために」を明確にしたうえで入学しています。さらに学生時代は周囲の期待に応えるために頑張っていたところもありますが、いまは誰かの評価というよりも、ここでどんな学びを得たのかの方が大事だと思っています。そういう意味では、私にとって大学院は「初めて意志を持って学んでいる場所」と言えるかもしれません。
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