チャレンジすることは辞めない。失敗から得た生存戦略 明治大学大学院総合数理学研究科現象修理学専攻

働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」
今回は明治大学大学院総合数理学研究科現象修理学専攻を修了された奥野 拓也さんです。

動物のパターン(模様)に興味を持ち龍谷大に進学した奥野さん。その後広大の修士課程を修了し、横浜の企業に就職します。博士の学位を取得し、教授としても活躍する奥野さんのニッチなポジションの獲得方法や失敗に対する考え方をお伺いしました。

 

奥野 拓也さん

1985年生まれ、大阪市出身。2010年に研究成果を世の中に届けることがミッションのIT系企業に就職。システムエンジニアは向いてないと思い途方に暮れるもやったほうがいいけど、やられていない隙間産業がたくさんあることを知り、大学院へ進学しデータサイエンスを本格的に学ぶ。現在は数理科学で世の中が豊かになることを目指し、技術とビジネスの橋渡しができないかと模索中。

本業の他に明治大学、国立情報学研究所が主催するIT技術者教育プログラム「トップエスイー」、早稲田大学が開講する超スマート社会を国際的にリードするイノベーティブ&DX人材の育成プログラム「スマートエスイー」にて非常勤講師を務める。

卒業・修了した大学・大学院:明治大学大学院総合数理学研究科現象修理学専攻
入学年月(年齢):2015年4月(29歳)
修了年月(年齢):2017年3月(32歳)

学生時代の研究を生かして社内のニッチなポジションを獲得

————大学は龍谷大学の先端理工学部数理情報学科をご卒業されたとお聞きしました。龍谷大に入学されたきっかけや在学中に学んだことを教えてください。

僕は高校生の頃から、模様やパターンみたいなものが好きです。龍谷大の数理情報学部は、コンピューターと物理と数学があって、それぞれ好きなものを選ぶシステムでした。その中でパターンに関する研究をしていたので、龍谷大への入学を決めました。受験というものを知らなくて、センターが終わってから探したんですけれど。(笑)

在学中は、数式2本からいろいろなパターンが生成される研究をしました。実際は、蝶の羽や牛の模様をテーマにしていました。例えば牛の白黒の模様っていろいろなパターンがあります。パターンは、規則的にできているのですが、実は個性があるんです。たった2つの式で複雑なパターンが出てくることがおもしろかったですね。

 

————ありがとうございます。その後、どちらの大学に進学したんですか?

広島大学大学院の理学研究科数理分子生命理学専攻(現: 総合生命科学研究科数理生命科学プログラム)に行きました。もともとは、広大は行くつもりはなかったのですが、先生の紹介で見に行ったら、教授がおもしろいおじさんだったのでまあいいかなと思って行きました。「よく遊びよく学べ」という自由な感じがいいなと思ったことを覚えています。

 

————龍谷大と同じことを学んでいたんですか?

広大では、パターン形成には変わりはありません。ただもう少し違う動物の運動をテーマにしていました。例えば4足歩行の場合、前足2本と後ろ足2本をつなげると、左右交互に出るなどのパターンが多くあります。そういう生物の運動に関することを学びました。

他にも数式をロボットに当てはめて同じように動かすみたいな研究もしました。僕はアメーバという単細胞生物を対象としていたんですけれど、ロボットを違う大学のパートナー研究室の人たちと共同で作った経験もあります。

 

————なるほど。広島大学からそのままドクターに行こうとは考えていましたか?

そうですね。そのままドクターに行こうと思っていました。しかし田舎すぎるので断念しています。僕は実家が大阪なのですが、広島に行ったときに、最初の1か月はあまりにも何もなさ過ぎて胃に穴が空いてしまいました。

 

————忙しすぎて胃に穴が開くことはよく聞きますが、遊ぶところがないというのは初めて聞きました。その後は横浜で就職されて、どのようなお仕事をしていたんですか?

最初、3年間ぐらい本当にSEみたいな仕事をしていました。ただまったく向いてなくて、やめようかなと思っているときにたまたまやったのが、音声系のお仕事でした。具体的には、Web会議とかで使われるような、喋っているところだけを抜き出す技術です。例えば、LINEとか音声データを送るとき、無音の部分をずっと送っていたらもったいないですよね。そうならないように、必要な部分だけ切り出して送っていました。会社の性質上、研究者と一緒に取り組むことが非常に多いので、そこで学んできた数式が役立ちましたね。

 

————奥野さんはパターンになっているものが好きというより、数式が好きなのですか?

いや、パターンが好きだったのですが、みんながやらなくて自分ができるから担当していました。もう生存戦略ですよね。

 

————なるほど、数式が出てきたからもう少し頑張ろうと思った?

そうですね。他の人がやらない部分なので、数式ならできるなと思って担当していったという感じです。そこから音声系の仕事ばかりになりましたね。

 

————そこから博士に行こうと思ったのは、研究をして専門性を仕事に活かそうといった文脈ですか?

はい。その時の次の仕事がPOSデータと呼ばれる購買データを分析する仕事でした。そこで、どのような特徴の人がいるとか、どのような購買のパターンの人がいるとか、お客さんである研究者の方と一緒にディスカッションしていたのが結構おもしろかったのを覚えています。続けていくなら博士を取った方がいいかなと思いました。また当時は、2014年だったのでデータ分析のブームが来そうな感じもしていたんですよね。実際に博士の学位を取った後は、一緒に仕事をしたお客さんとの技術を製品化しています。

 

————博士以外にも国家資格を取る道もあったと思います。博士を選択した理由はありますか?

そうですね。情報系で生きていくなら、国家資格を取った方がいいなと思います。しかし私は、SEの道は向いていないと思いました。情報の部分は、得意な人に頼めばいいかなと考えていました。

 

————SEとかではなく、基礎研究というか現状に近いものを学ぼうと考えたんですね。

はい、研究と実務の曖昧な領域を学ぼうと思いました。

 

博士を使い授業を持つようになる

————ありがとうございます。博士の在学中、良かったなと思ったできごとなどありますか?

在学中は学割がよかったですね。(笑)旅行するときとかでもすぐ使えますから。それ以外は、それほど恩恵を受けていませんね。

 

————では、卒業後に恩恵を受けたことがあれば教えていただけますか?

卒業した後は、博士を使って授業ができることはよかったなと思います。今は大学で、8個ぐらい授業を持っています。学生向け3個で、社会人向けが5個ですね。

 

————授業をしていてよかったなと思うことを教えてください。

やはり授業をすると、他の知らない人と知り合えます。また授業の中で、「この資格取ったら、この後データ分析やっていけるよ」みたいな話をしているのですが、授業期間中に生徒が取ってきます。結構、資格の取得は難しいのに。その生徒を見て優秀だなと思ったり、ひっそりと「これは教え方がうまいせいだな」と思ったりします。(笑)

社会人に教えるメリットは、大手の企業の方が来るので、課題感とか聞けることです。教えたものをどういうところに使うか話を聞いています。学生向けの授業も、毎回楽しみにしています。

 

————なるほど。そこでまた循環もできるんですね。

 

失敗を寛大に受け止める会社の風土

————先ほど、お客さんと技術を製品化していたとおっしゃっていたのですが、どういったことをしていたんですか?

POS関連で製品化しています。当時は「これを買った人はこれを買っている」といったAmazonのレコメンドのようなものが流行っていました。しかし私たちは少し思考を凝らして、パーソナルレコメンドみたいなものを製品化しようとなり、個別におすすめをカスタマイズするみたいな感じで売り出しました。今でこそ概念として結構出ているけれど、やはり一人ひとりで計算するとコストも高かったですね。チャンスだと思っていたのですが、乗り遅れた感じがありました。僕らが出したときから、競合がバンバン出てきて、結果的に価格競争になり、上手くいきませんでした。

 

————なるほど、奥野さんが製品を閉じたときは上司に怒られたりしましたか?

怒られなかったですね。当時の僕を見てくれた社長や周りが寛大でした。続けても仕方がないからやめようとなりました。

 

————そうなのですね。なぜ怒られなかったのでしょう?奥野さんの会社では、失敗を許すとかそういう文化があるのですか?

そうですね。失敗してもめげずにチャレンジしているからですかね。幸いなことに周りにチャレンジする人が多い会社ではないので、たまには私みたいな人がいてもいいと思っているかもしれません。また1回失敗するともうそいつには任せないとか、空振りが多い人はどこかに異動させるみたいな風土を変えたいと考えている人がいると思います。

 

————なるほど、いいですね。「こいつは失敗したやつだ」みたいなラベルが貼られない組織ってことですよね。

 

明治の学費免除制度を使いドクターを修了

————明治はフル免除で行ったのですか?

はい。明治に龍谷大・広大の知り合いがいて、免除の制度があるから使ってみないかと声をかけてもらいました。直接知り合いが指導者になったわけではありませんが、紹介で入りました。支払ったのは、年間2,000円の保険代ぐらいですね。これも通いやすかった要因だと思います。

 

————会社では学費の支援をしてくれる制度はありますか?

会社は、マスターで指定の大学に行くなら、会社が費用を出すよという制度があります。ドクターは、お金は出していないと思いますね。

 

コワーキングスペースを活用しながら仕事と学業を両立

————仕事とのバランスはコアタイムもないので、うまく自分で両立していたのですか?

はい。当時はフレックスと言っても9時、10時〜15時がコアタイムでした。それでもゼミ自体が19時からだったのでなんとか両立できていましたね。

 

————仕事とのやりくりのしやすさで言ったら、ドクターの方が自由度は高いんですかね。

非常に高いです。授業に縛られないので。

 

————ゼミの前日はどのように過ごしていましたか?

基本的には締め切りに追われているので、家で1時、3時ぐらいまで作業していましたね。ゼミも結構融通きいて、「今週少し忙しいのでごめんなさい」とかよく言っていましたが、さすがに続くといけないので、1か月に1回はきちんと出席しようと決めていました。それでも忙しいときは「うわ、ディスカッションできる中身ないな」と思いながらゼミに行くときは憂鬱でした。

 

————土日はコワーキングスペースに行かれていたとお聞きしました。詳しくお伺いできますか?

土日は結構学校もあったのですが、横浜と中野だと少し遠いので、コワーキングに行きました。ドロップイン利用が多かったです。学費も払っていなかったので、費用などは気にならなくてよかったですね。

 

————そうか。集中できる環境にお金かけて、自分を追い込むと。

はい。また僕は性格が怠けたいタイプなので、コワーキングは閉店時間が決まっているところに行っていました。24時間営業しているところは、絶対行かないみたいな感じでした。

 

今後もチャレンジすることは辞めない

————今後何かやりたいことはありますか?

今後やりたいことはよく聞かれるのですが、難しいですね。ただもう1回製品を作って、チャレンジしてみたいです。有名な企業の創業者でも3回ぐらい失敗していると聞くので、まだもう少しいけるかなみたいなことは考えています。

 

————3回なので、まだ失敗できますね。

はい。失敗できたら何か学ぶことはあるだろうなと思います。なのでそういうチャレンジすることは辞めないと思いますね。

 

————なんか元気になりますね。元々チャレンジャーな性格ですか。

そこまでチャレンジャーというわけではありません。ただおもしろいことをするのが好きというだけです。

 

————他にチャレンジしたいことがあれば教えてください。

MFAとかすごい考えていますね。僕は実務にも気持ちがあって、クリエイティブがどういうものかいまいちわかっていないので、学びたいです。武蔵野美術大学の造形構想学部の修士ができていて、入試問題とか見ましたが、まったく何を書いているかわかんないなと思いました。

最近では海外で、データ分析とデザイン思考というの掛け合わせが流行っているので、今だとまだそこにいっている人は少ないなと思います。学部は増えてきていますが。最近は、AIなどのデータサイエンス学部も多いけれど、僕の中ではそれだけで食べていくのは難しいなと思っています。

 

————確かに、そうですよね。最終的に人を動かすみたいになったとき、ロジックだけじゃなくて感覚的な部分とか、UI・UXなども必要になりますよね。

そうですよね。そこら辺を学ぶのは、おもしろそうだなと思っています。

 

————他に取得したい資格はありますか?

他は、技術士です。実務側の最高の資格みたいな感じで言われます。僕は、マーケから入っているので経営工学部門に行くか、最近は電気の仕事をしているので、電気電子部門に行くか考えています。ただいきなり技術士の試験を受けるのは少しつらいので、ユーキャンで電験三種から取ろうかなとか考えています。

 

————博士を持っていて、技術士の資格を取得したらまた珍しい存在になれますね。

そうですね。基本的に隙間産業で生きているので。授業でも言っています。「得意の1個を持つ人は多くいるけれど、5個を掛け合わせている人はなかなかいないから」と。僕自身も人と同じではなく、何かアレンジするのが好きです。

 

————なるほど、ありがとうございました。また何か新しい柱を立てるときには、教えてください。話を聞きに行きます。お忙しいと思いますが、頑張ってください!

 

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