綺麗ごとでもいい。透明度を上げ人間力で勝てる業界に! 関西学院大学専門職大学院

働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」
今回は関西学院大学専門職大学院で学ばれた永嶋秀典さんです。

これからは不動産業界も職業倫理が大事やねんで!と仲間内に語るも「そんなの綺麗ごとやし」とスルーされ、「見返したろ」と悔しさから大学院へ進学。夢中でリサーチに駆け回った日々の記録を「いや、すごいな。これ誰が書いてんやろ」と笑い飛ばす永嶋さんのお人柄は本当にチャーミングです。「どうなるかわからんけど」とライトに笑い飛ばす、なにわの正直不動産の新しい取り組みは、今後どのような展開を見せるのでしょうか。

永嶋 秀典さん

1975年9月東京生まれ。大阪在住。

現職:
株式会社自由不動産 代表取締役
ながしま行政書士事務所 代表行政書士

保有資格(修了順):
宅地建物取引士・行政書士
公認不動産コンサルティングマスター
CIPS®/国際不動産スペシャリスト
CPM®/米国不動産経営管理士
CCIM/米国不動産投資顧問

著書:
大家の歩き方:大家力を上げる20の法則(2022, デザインエッグ社)
Amazonランキング「不動産」1位 ・「アパート・ビル経営」1位

趣味:海外ひとり旅
休日は、世界一周ひとり旅をやっています。列車とバスの陸路だけでやっています。

卒業・修了した大学・大学院:関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科
入学年月(年齢):2020年4月(44歳)
修了年月(年齢):2020年4月(44歳)
卒業研究タイトル:職業倫理に対する顧客価値-小規模不動産事業者を対象に-

不動産業界の胡散臭さ、どうにかならんか。

————現在の永嶋さんは、不動産業界で世界を飛び回っていらっしゃると伺っています。ご経歴などをお聞かせいただきたいのですが。

僕は普通の経歴とちょっと変わっているかもしれないんですが、高校・大学には行かず、通信教育を渡り歩いて単位もらって、あと行政書士とか色んな資格も取っていたのでそれで単位認定してもらったりしてかき集めて大卒資格を取りました。最後に簡単な論文を書いてハイOK!みたいな。勉強したのは経営学が中心です。

22〜23歳で大阪市内の不動産会社に就職して、そこは1年ほどで辞めたのですが、翌年から今年の春までずっと友人の不動産会社でマネージャー職に就いていました。

————今さらっと「行政書士」っておっしゃいましたけど、取るの難しいですよね?

確かに。でもたまたま運がよくて取れたんだと思います。知ってる問題がバンバン出て「ラッキー♪」っていう感じです(笑)。それが30歳ぐらいだったかな。登録はしていたので、一応個人事業主としても並行して行政書士もやっていました。

————関学に入られたきっかけは何だったのでしょうか?

40歳になったころからだと思いますが、不動産業界の胡散臭いのが嫌になってきてしまったんですよね。日本の不動産業界は、なぜこんなに胡散臭いのかが気になり、アメリカの不動産学的なものを中心に勉強するようになりました。その結果「職業倫理」の圧倒的な差を知ることになるんです。

————それって、日本は倫理観が低いってことですか?

うーん。まぁそうかな。アメリカは職業倫理の規制が厳しく、法律だけではなく職業倫理規程もしっかり守らないといけないんですが、日本は法律さえ守っていればOK、という側面があります。アメリカは「法律」と「倫理」の2階建てなんです。国が考えた法律が1階にあって、民間団体が考えた倫理規定が2階にあって、ダブルで守らないとやっていけない環境なんですね。対する日本は法律の1階部分しかない。

それがわかったところで、日本の周りの不動産屋さんに「2階部分が大事だよ」って言っても、「そんなもん綺麗事やんか」と簡単にスルーされていたんですよね。で、僕は腹が立ってしまって「こいつらよりもっと勉強したんねん!」と思って大学院に入りました。スルーしたみんなを説得できるような経験や理論が必要だと思ったんですよね。

 

「職業倫理」「グローバルスタンダード」これやな、と思って即入学

————関学を選んだ理由は何だったんですか?

あまり網羅的に大学院を比較検討などはしていないんですよ。業界の先輩に大阪市立の人が多かったので、市立大と、もう一つぐらい見るか、ということで関学を比較してさっと決めました。

関学はパンフレットをパッと開くと2つのキーワードがやたら目立っていて、1つが「職業倫理」もう1つは「グローバルスタンダード」でした。「あ、俺これだわ」と思って、あとは深くは考えずに決めました。世界基準で職業倫理を保たないといけないんだなという部分にピンときて「これやな」と思ったんです。研究テーマも「職業倫理に対する顧客価値」というものでした。実際のところ、世の中の人は職業倫理を求めてるの?というリサーチです。



————2年間研究してみてどうですか?得られたものはありますか?

「大手のブランド力よりは、個人レベルの職業倫理の方が、世の中求めてる」っていう研究結果が出たんです。60~70%くらいだったかな。これを広めていくためには、職業倫理観を世の中がうまく評価できる環境を設定しなくてはならないが、それを個人レベルで実現するのは難しい。だから業界の団体として、そういう評価をしていくべきだという結論を導き、オリジナルのフレームワークを提出しました。

 

————ちなみにそのオリジナルのフレームワークってのはどういうものなんですか。

倫理規定の導入とか、倫理規定の教育っていうのは日本では有名無実なんですね、一応あるんだけども、実際にはゼロに等しいぐらい機能していない。それを機能させるためには、「あいつ倫理的じゃないよ」っていうチクリ合いの機能がいる。

私の調査結果だと、アメリカがそうなんです。日本にもこの「相互間相互監視機能」が要るんですよね。互いに利害関係に無い者同士で「あの不動産業者が非倫理的なことやってるで」と言うためのチクリ先の団体を作るんです。その団体が「倫理口コミファイブスター」みたいなものを作るなど評価できるようにすれば、世の中の一般消費者も不動産屋さんの倫理観に注目するのではないか。そしてより一層、倫理規定の導入や教育が良くなって、全巡回するのではないか。それが広まれば大手のブランド力に勝てるだろう。という感じのものです。

————なんだか不動産屋の食べログみたいな感じですね。

そうですね。美味しさ・料金・倫理、みたいな。サービスの質や倫理といったものが可視化されると、不動産業界にありがちな情報の非対称性が保てなくなる。アメリカではそれが普通なんですよね。だとすると、情報の非対称性がなくなれば、人間力をもって仕事で勝負をするようになり、結果的に世の中もよくなるのでは、という感じの仕上がりだったと思います。



————面白いですねぇ。これって実現可能性あるんですか。団体を作って、みたいなことも。

7月に長くお世話になった会社を辞めたんです。これの先駆けとなる事業をやりたいと社内で提案しましたが、思ったような反応は得られなかったので「ほな辞めますわ」って、とりあえず自分で会社を作ってみました。不動産屋の営業担当を教育する、みたいなことを社内でやって、その教育を受けた側はどうなるのか、見てみようとしています。軽く一歩進んだような感じなんですけど、まだ模索中で手こずっています。

例えば、住宅をお世話した場合、不動産屋さんって引越し屋さんの紹介をしてくれるじゃないですか。あれはマージンをもらうためにするのですが、日本では暗黙の了解で行われるんですね。ところがアメリカの場合は「〇〇引越屋さんを紹介します、なぜかと言うと紹介したら私が5000円もらえるから」と事前に伝えないといけないんです。そんな感じで「常に正直でやりなさいよ。最終的には人間力で勝てるから」みたいな教育をします。綺麗事ですけど。なかなかうまいこといかないですけどね。金儲けにはならない(笑)



————私「正直不動産」が好きなんですよねー。最近ドラマでやり始めましたよね。大手で倫理的なことをやったら「そんなことやってないで数字取ってこい」っていうふうに怒られるのは、不動産屋だけじゃなくてどの営業組織もそうなんですよね。

日本人はもともとが真面目ということもあって、倫理規定の必要性を敢えて考える必要がなかったのですよ。しかしアメリカはそうじゃない。いろんな人たちがいるから倫理規定でババーンと縛らないとちゃんとしないんですよね。その結果、アメリカの方が透明性が高くなったりしているわけです。これからグローバルスタンダードで外国資金もこっちに入れていかないといけないんで、日本の倫理感が低ければ、外国マネーも入りづらいんじゃないの。みたいなことはありますよね。

 

————そっちのアプローチだと、儲けたい人もうなずいてくれるんですかね。

そうでしょうね。日本の不動産の透明度ってG7で6位で、その要因の1つに倫理規定がないことが挙げられます。ということは、倫理規定があれば透明度ランキングが上がって、海外からの日本の不動産が注目される。倫理規定があるにはありますが、今のところは夢の地図ですね。

 

なんぼ儲かるか分かってから動いていた自分が「やらなアカンやん」で動き出すように

————ご自身にとって、大学院で学んだことが活かされてキャリアや人生の方向転換のきっかけになったと思われますか?

それはあると思います。授業で学んだ「エフェクチュエーション」でいうところの「実行してコントロール」のようなリフレーミング能力がついたと思います。手こずって彷徨ってってのをこの数ヶ月は繰り返していますが、“失敗”じゃなくて“勉強”みたいな感じで思えるようになったのは、大学院のおかげですね。行ってよかった。エフェクチュエーションは本当に心に刺さりましたね。

以前の自分は、なんぼ儲かるかわかってからじゃないと動かないタイプだったんですよね。しばらくしてから「やっとけばよかった!」みたいなことも多かったんです。でも今は「やらなあかんやん!」という感じが自然に出てくるようになっているように思います。うまくいかないときも、いくらまでの損ならOKか、みたいな考え方ができるようになったのは、あの授業で学んだおかげだと思います。その辺りは強くなったんじゃないかな。

————大学院に行ってみる前に予想していたのと違ったこと、いい意味でも悪い意味でも「これは裏切られたな」と思われることはありますか?

うーん。残念だったのは、コロナで飲み会ができなかったこと。期待してたのに。あとは、教授ってもっと怖いと思っていたのにめちゃくちゃ優しかったのは、いい意味で裏切られたことですね。めちゃくちゃ優しいやん!って思いました(笑)

 

————コスパ的にはどうだったと思いますか。

安い。知識に対する投資は安いもんですよ。知識は腐らないし人にとられないし。僕、個人事業もやってたんで、ある程度は経費で落とせましたしね。

 

————永嶋さんの人生において大切にしていることってどんなことですか?

ジャケット姿の永嶋さん

「自分らしくあること」ですかね。僕は自由が好きなんですが、自由って突き詰めると自分らしくあることにつながってくると思うんです。自分が自由であることで、周りの人の自分らしさも奪ってはいけないとか、その辺のバランスになってくると思うんですよね。なんかそんな感じです。

 

————社会人大学に行く人たちって、自由好きな人たちが多くて面白いんですよね。あと、自分の腕を磨いてどこでも食べていける人になりたい、みたいな人が多いんです。会社の中で出世したりすることへの興味はあまり無くて、お話をお聞きしている方々の中では、やはり「自分で人生をコントロールしたいから学んでます」っていう人が多い印象です。

それはまさしくそうです。面白いですね。いいですね自分で人生をコントロール。それが僕の自分らしさでもあるかもしれない。



————今後のことについて聞きたいなと思うんですが。不動産業界の中に職業倫理を広めることでイメージしてるものとかってありますか。

まずは、職業倫理の教育をする団体での活動ですね。アメリカの団体の日本支部があって、そこの理事をさせていただいているのですが、そこで職業倫理のインストラクターになりたいんです。大学院で書いた論文を持って、これで俺をインストラクターにしてよ、みたいなアプローチで(笑)インストラクターになることで、より一層説得力も高められるのではと思います。

それから、前述の社内の教育システムの件。正直なところを売りにしたようなセルフブランディングをしなさいよという教育をしていきたい。今はその2つの矢で、世の中にこの価値観を広められたらと思っています。




————もともとはすごく職業倫理低かったけど、高まって良くなっていった業界ってあるんでしょうか?不動産の後先を行くような業界。

どうなんやろうね。日本の倫理教育がしっかりしてると聞くのは、看護師の世界らしいですよ。医者とか弁護士とかより看護師が断然すごいってアメリカの人が言うてました。日本の看護師さんすごい。



————確かに看護師さんにもインタビューしたことがありますが、医者とはまた違う看護観というものが別にあって、治療だけじゃないその人全体を見るとか、すごい倫理的なことをおっしゃってました。

不動産屋さんが看護師さんみたいになったら面白いですね。



山だと思って登ってみたらええんちゃうかな

————社会人大学で学ぼうかなと考えている人がいたら、どんなことを伝えたいですか?

……そうだな。山やと思って登ったらええんちゃいますかね。大怪我することもないんだし。僕もね、真面目にやったらいけるもんなんやな、って思いました。その時はもう夢中になっていましたけどね。

————それは面白かったからですか?

でしょうね。かなり集中して取り組んでいましたよ。卒業研究のときはもう名古屋やら東京やらを飛び回って調査していました。大阪には有識者が少ないので、一次情報を取るためにバーっと東京の有識者のところへ行ってインタビューして、そのときに次の有識者を紹介してもらって、すぐアポイント取って次の日目黒行きまーす次の日品川行きまーすって感じでした(笑)

————すごい。この職業倫理というテーマが本当にお好きなんですかね。

そうかもしれませんね。まぁ好きというか、悔しかったんでしょうね。見返したかった。……もうちょいお金儲けできるような研究に仕上げたかったかな(笑)



————いやいや。正直に頑張ってる人がちゃんと評価されて儲かる世界になってほしいです! 今日は、興味深いお話をたくさんありがとうございました。

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