キャリアの分散投資で選択の幅を広げる 一橋大学大学院


働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」
今回は一橋大学大学院で学ばれた小林久祥さんです。

お酒が飲めない人にもお酒の美味しさを知って欲しい。ノンアルコール飲料の普及がライフワークかもしれないとおっしゃる小林さん。ご自身はお酒と投資が好きで、自由な選択肢を持ち続けるための自己投資と株への投資について、飄々とした語り口調でテンポよく展開して下さいます。小林さんの究極のゴールはいったいどこに向かって行くのでしょうか。

小林 久祥さん

新卒で株式会社帝国データバンクに入社し、決算業務および日々の経理作業や物品の購買等のバックオフィス業務に約3年半従事。

その後株式会社日立コンサルティングの金融事業企業向けのコンサルティング部門にて、企業の決算分析や業界動向のリサーチ業務、システム導入プロジェクトの管理等に約2年半従事。一橋大学大学院を経て現在はエネルギー系のコンサルティング会社であるまち未来製作所にて、東北の事業会社の立ち上げや不動産会社の電気事業社内説明資料作成、脱炭素先行地域の選定サポート等を作成。

趣味は野球観戦、F1観戦、株

卒業・修了した大学・大学院:一橋大学大学院
入学年月(年齢):2019年4月(28歳)
修了年月(年齢):2021年3月(30歳)

旅行で余ったバイト代を投資に回す大学生

————学部のときからのお話を伺いたいのですが、学んだこととか。

うーん。経済学部で産業組織論について勉強した記憶はありますが、学部時代のことはもう書いていただかなくていいのではないか、というぐらい遊んでしまって(笑)。毎年どこか海外に旅行して10カ国ほどちょこちょこと。そのためにいろんなバイトをしていました。塾講師・ビアガーデン・モスバーガー、あとコンビニもやりましたし、いろいろやってみようと思って。



————おおお、なんか親近感が......(笑)。新卒で帝国データバンクに就職された理由は何だったんですか。

株に興味があったんですよね。証券会社に口座を作れるのが20歳なので、20歳になった瞬間に、どうしても欲しかったスターバックスジャパンの株と、ビッグカメラの株を購入しました。海外を旅して余ったバイト代は株に突っ込むという大学生だったので、自然と四季報などで会社の情報を見るのが好きになりました。会社を見られるような仕事がいいなと思うようになり「帝国データバンクいいな」って感じでした。会社を見て点数を付ける会社ですので、その調査員をやってみたくて入社したんです。

————夫も四季報を読むのが好きなんですよ。何がそんなに面白いのだろう?と思ってしまうのですが。

会社の説明とか見るとゾクゾクするんですよね(笑)。たぶん、お宝を探す感覚に近いものがあるんだと思いますよ。会社をいろいろスクリーニングしてきて四季報を読み漁り、探したお宝に投資するこの一連のことが好きなんです。社会人になって一番嬉しかったのは、学生のころよりも株にたくさんお金を突っ込めるようになったことですから。

————(笑)いいですね。そこの帝国データバンクで3年半。

調査員になりたくて就職したはずが、実際に会社を見てレポートを書くような調査部ではなく、経理総務部に配属されました。バックオフィスを任せてもらえ、仕事としては結構ホワイトでした。しかし、そういうことを求めて行ったわけではなかったので、上司に異動を願い出ましたが「お前はまだ駄目だ」と言われ、これはキツイなと思いました。待遇面は良かったのですが、このままでは自分が腐ってしまうような気がして転職を決めました。

転職先は、コンサルティング業で給与待遇が良いことを軸足に探しました。ちゃんと稼いで株に投資したかったから(笑)。帝国データバンク時代に中小企業診断士資格を取っていたんです。この資格は巷で「コンサルの国家資格」とも呼ばれていまして、「じゃあコンサル行けるんじゃね?」という比較的軽いノリもあって、2社のコンサル会社から内定をもらって、日立コンサルティングに入社しました。

————中小企業診断士もそうですが、小林さんは資格マニアだそうですね。

そうなんです。いろいろ資格を取ったんですが、最近取ったのは宅建ってやつと......

————え、宅建?!

全く関係ないんですけどね(笑)

ほかには、応用情報処理技術者・証券アナリスト・FP2級・銀行業務検定などを取得しています。資格の勉強には、大学院とはまた違い、合格という明確な成功が短いスパンで得られる楽しさがあるんですよね。

それからもう一つ重要なこととしては、私は資格の勉強で自分をつないでおかないと、すぐ遊びんじゃう、という問題があって。遊びに課金しすぎて株に使えなくなってしまうことを防がないといけないんです。お金を使わない資格の勉強で、1日2〜3時間カフェで過ごしたりしていると、なんだか一石二鳥な感じでいいなーなんて思ってます(笑)

————コンサルの仕事は面白かったですか?

仕事自体は楽しかったです。どういう技術を使ってこのソリューションができているか、などを日々学ぶことができたと思います。ただ楽しい反面、プロジェクトによってブラックかホワイトか、という問題はあったかもしれません。

忙しくて帰れないプロジェクトに組み込まれると、プライベートな時間がなくなって、趣味の資格勉強もあまりできない、なんていう時期もありました。

————そういったことも大学院に行くきっかけだったのでしょうか。

それもあります。また、私は高校時代まで野球ばかりで勉強を本気でやったことがなかったため「ちゃんと勉強してみよう!」という思いもありました。大学院できちんと修論を書くことと、何か自分のコンテンツを作ることがしたいと思いました。

WordPressでいきなりホームページを作ろうとするとちょっと大変ですが、大学院に行けば夏休みなど時間を取れる期間もある。今となっては、コンサルの仕事がキツすぎて逃亡したかった、という気持ちも若干あったかもしれないです(笑)

ブロガーの方が30万稼いだ話、なんてのを聞くと、自分も一度はやってみたいと興味がわき、自分の媒体としてホームページを作ってみた、という感じです。

小林さんのサイト「ソバキュリ!」http://sober-curios.com/



下戸が酒のうまさを知らずに死んでいくのが嫌だ!

————このサイトは、ご自身がお酒は飲まずにノンアル派だから始めたんですか?

いえ、私はお酒がめちゃくちゃ好きなんです。好きだから、お酒を飲めない人がお酒の味を知らないまま死んでいくってのが嫌なんですよ。アルコールフリーでお酒を味わえたら、色んな広がりが見えるんじゃないかと思ってます。修論もノンアル関係ですし、ノンアルコールの普及がそろそろ自分の使命に思えてきています(笑)

食事の美味しい店に行っても、飲めない人の選択肢が少なくて「もったいないな」と思うことがあります。ノンアルコールのワインなどが選べたら、お店側にとってもいいことなのではないかと思うんですよね。

————大学院の検討の軸はありましたか。

メジャーな早稲田・慶応・一橋・神戸あたりから、関西は自分の選択肢じゃないと思ったので神戸を除いた3校で検討しました。そのうち一番早く試験が実施されたのが一橋でした。もともと第一志望だったということもあり「受かったし行こう!」と思って決めました。

フルタイムを選択したのは、中小企業診断士の資格試験の経験が影響しています。仕事のあと勉強するという日々は「なんでこんなことしているんだろう」とたまに思ってしまうぐらいには大変だったんです。帰ってきて少し寝て勉強して寝るという生活が平日ずっと続くので、再びそういう日々になると嫌だなと思い、働きながら通うのはやめようと考えました。

————合間に開業されていると思うのですが、これは入学前ですか?

2019年4月の入学でしたが、3月に立川税務署へ開業届を出しに行き、中小企業診断士として開業してみました。何か自立した仕事を模索したかったのと、せっかく資格取ったし何か使いたいよね〜というやや軽いノリもありました。診断士協会に登録すると、補助金の申請や交付チェックなど、ちょこちょこと仕事の話が来るので、お引き受けしてみたという感じです。

現在は「まち未来製作所」というベンチャー企業に正社員として入っています。休職して院を卒業後6ヶ月ぐらいは日立コンサルティングに戻って仕事していましたが、そこを辞めて、こちらに入れていただきました。



————大学院に行ってよかったなっていう学びとか経験はありますか?

学びという視点では「古典講読」という一橋では名物の授業が印象深かったです。1冊の本を1週間かけてじっくり読み、要約します。今までしたことのない読み方でした。文章化して主語・述語も徹底的にチェックを受けます。読む力だけでなく書く能力を鍛えられた授業でした。

もう一つは人間関係の多様性を知る経験です。本当にいろんな人がいました。新卒も多いのですが、他大学から入ってきた人や、内部から上がってきた人、社会人の派遣で30〜40歳ぐらいが入ってくる人もいる。私のように休職して入ってきてる人もいれば、仕事を辞めて入って来ている人もいる。だいたい21~42歳ぐらいでしたが、幅広い年齢層の人たちと勉強することができました。若者は頭の回転が早いなと思ったり、年齢を重ねた人は調整能力がすごいなと思ったり。喧嘩したりもしましたが、普通に生きていると、なかなかこの幅広い年齢層の中にさらされることがないですし、対等な立場で一緒に勉強できたのはいい経験だったと思います。

 

————ご自身が変わったなと自覚していることはありますか?

大学院に入るまでは、仕事に遅刻したりタスクを振られても全然やってこない人に対して厳しい目で見てしまう傾向がありました。しかし、そういうことに慣れた。慣れたというか、集団にそういう人が一定数いる前提で「どうすれば動いてくれるのか」と考える時間ができたんですよね。今の職場でも、ただ怒るだけではなく「どうすればできるか」を考えるようになりました。人が動く仕組みを考えるようになり、ちょっとマネジメント層に近づいたかなっていう感覚はあります。

 

————大学院へ行こうと決めたときに、パートナーの方や会社との間で困ったことなどはありましたか。

そのとき付き合っている彼女はいましたが、相手の考える結婚のタイミングとのズレはあったかもしれません。相手が進学自体を止めようとする、などといったことはありませんでしたが、そもそも僕自身が行くと決めていたことだったので、説得というより説明した、という感じでした。

会社に関しても行くと決めてから、辞めてもいいという思いで話をしたのですが、休職にしておかないか?と言ってもらえたんです。もともと会社に、3年以上働けば、お金を出して行かせてくれる制度を使った前例があったのですが、僕の場合は入社1年半くらいだったのでとかで行っちゃったんで、自費です。

 

————奨学金は使われましたか。

求められるような成績が取れないかもなと思っていたことや、報告書などの書類を書くのが面倒くさいと思ってしまったこともあり、自費で行っていました。一橋にも奨学金自体はあったように思います。それも申請の手間と得られる額を考えて、まぁいいかなと思って取りに行っていないです。

————受験準備はどんな感じだったんでしょうか。

英語。英語です。今までの人生、英語で苦しんできたので(笑)僕は資格マニアですが、英語の資格は避けていて勉強もしていませんでした。単語帳を買い漁り、とにかく問われていることは分かるようにしようと思い勉強しました。小論文の試験がありましたが、診断士のときに論述試験の経験があったため、全く対策はしませんでした。研究計画書の書き方は、ネットで検索しました。古典講読の授業ではコテンパンに言われていましたが、自分の中では文章を書くことには自信があったのでまあいいかなっていう感じだったんですね。



酒で修論を書く

————そのときにもう既にノンアルのことを考えてたんですか

いえいえ、まったくです。当初研究計画書では「どういう会社が倒産するのか」という特徴量を調べたいと思っていて、データの分析系をやるつもりだったのですが、担当の教授に「それ結構難しいよ」とご指摘いただいたんですよね。その後紆余曲折があって、ノンアルコールドリンク系にするかどうか4~5ヶ月悩みました。性格的にあちこちフラフラ見てしまって、全部がよく見えちゃったりとかして、全然決まりませんでしたね(笑)

いろんな人に相談して「小林さんの好きなことやればいいんじゃないですか」みたいな何か気軽なアドバイスが決め手だったように思います。自分としては興味のあったノンアルコールドリンク、その中でもノンアルコールビールを「カテゴリー化」という分野から考えてみたんです。昔から「ノンアルコールビール」という言葉はあったように思いますが、最近になって売り上げが伸びてきているんですね。売り上げ、つまり市場が大きくなったりすることも「カテゴリー化」と言います。カテゴリー化において重要なのは、その商品を売る側と買う側で「ノンアルコールドリンクって〇〇なものだよね」という規範が必要なんです。その規範ができた過程を、新聞記事などのテキスト分析で解き明かしていきました。

新聞を全部洗い出していくと「ノンアルコールビール」という単語が1990年代あたりから記事にちょろちょろっと出現してきます。時代的にまだネットを検索しても出てきませんから、データベースから全部引っ張ってきてExcelで解析します。結局は企業の競争活動によってカテゴリーができた、ということが見えたんです。

2000年前半と後半に「飲酒運転」が社会問題化しました。当時ノンアルといいながら0.5%くらい入っているのが主流でした。それ自体が運転事故の原因ではないのですが、婦人組合や各種組合から批判が起こったんですね。「0.5%とはいえノンアルコールというのはいかがなものか」「子供が飲んだらどうするんだ」といった類のものです。そういった批判をなくすために、キリンやアサヒが競争活動の上で完全0%の美味しいノンアルコールビールを作ったという結果です。かなりはしょってますが、競争によって美味しくなったんです。美味しさを追求していく中で、途中から太りにくくするなど機能がついたりして、カテゴリがどんどん大きくなって、現在では毎月新製品が出ているぐらいにまで競争が進んできています。

 

————お酒を飲まない人も増えていますし、そっちの市場も押さえないといけませんよね。

そうなんですよね。今は飲む人が休肝日として買う市場は増えてるんですけども最終的にやっぱり飲まない本当の人がどうノンアルコールドリンクを買うかっていうところかなあと思ってますね。



————今後のキャリアイメージとかこんなことやりたいなとか、ありますか。

最終的なゴールとしては、どこかのタイミングで酒を造りたいんですよね。ちゃんと会社作って。それまでに何をしなくてはいけないかというと、お金を貯めることなので、今はひたすら働いて、正社員+副業でガンガン稼いで株に突っ込んで、貯めていきます。これは究極のゴールなんですけどね。酒づくり。酒造です。ハワイとかでラムを作ったりしたいです。

そのゴールより手前ですと、今持っているホームページはどこかに買ってもらって、その一部を使わせてもらい、ノンアル情報をネット上の博物館みたいな感じでとっておきたいですね。昔のノンアルの情報って全然ないので。こういう製品もあったんだねっていうふうに、4~5年後に言ってもらえればいいなぁと。自社のライブラリはあっても他社も含めてとなると、なかなかこういう情報を集めたくても大変です。また、売っている製品情報だけではなく、ノンアルコールドリンクのお店でこんなのありますよと紹介するような情報も掲載していますし。

 

————ホームページは企業に買ってもらい、自分で自由に動ける環境を作りたいと。

そうですね。やりたいときにお金のせいでやれないってのは嫌なんです。自立した環境ができれば精神的にも余裕ができて、人間としてもやりたいことができて、最終的に魅力的な人間になれるのではないかと思ったりしています。

自由でいるための分散投資

————小林さんにとっての大学院とは何ですか?

社会人にとっての「キャリア再生工場」って言葉が自分の中ではしっくりきているんです。学びを通してキャリアを構築し直していくイメージがあります。

学びの期間は、人生におけるひとつの句読点。ストップ・アンド・ゴーって感じですかね。大学から社会人になって一区切り。会社に入って辞めるまでが一区切り。区切りがあると、次への準備期間として内省したり俯瞰したりする時間を持てて、いいのではないかと思います。

 



————どんな人に大学院進学を勧めたいですか?

今の仕事に少しでも疑問を持ったら。天職なんてそうそうあるものでもないですが、今の仕事を一生続け「ない」と思ってる人にとって、それを見つめ直す時間が貴重な時間になると思います。そんな人にお勧めしたいです。



————それでは最後に「人生で大事にしていること」についてお聞かせいただけますか?

人生で一番大事にしてること......そうですね「今を生きる」ってことかな。その時に自由に選べること。今日の流れだと「お金」でも良さそうなんですけど(笑)

お金は大事ですが「やりたいことをやる環境を整備する」ための手段なんです。大学院に行ったことも、将来的なキャリアを考え、やりたいことができる環境に触れられる、手数が打てるようになる手段だったのだと思います。目先の収入だけを見ていれば、日立コンサルティングで十分に貰っていたと思うのですが、数年すっ飛ばして大学院に行く選択をしました。やはり将来的な選択肢を増やす方を選んだんですよね。そう思うと、やはり人生で大事にしていることは、人生のリスクヘッジというか、様々な局面で選択肢を持っていられるように手を打つこと。それが自由な生き方につながっていくと思うんです。株と同じで、人生も分散投資。すべてを今の会社に預けないでいたいんです。

 

————稼ぐことはゴールではなくて、自由であるための交換手段としてお金ということですよね。いや、ほんとお話が面白かったです。

なんだか早口に金・金言いすぎちゃったかもしれないです(笑)

————お話のテンポが良くて、聞いていて楽しかったです。ありがとうございました!

 

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