専門職への思いを醸成し現実にする 立命館大学大学院

働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」

今回は、立命館大学で学ばれた原田梓さんです。

秘書として長く病院にお勤めの原田さんは、秘書業を続けながら2度の大学院進学を経験しています。1度目は博士課程への進学を勧められていたが断念。進まなかったことをどこかで申し訳ないように思っていたそうです。そんな原田さんが再度大学院への道を志すきっかけとなったのは一体どんなことだったのでしょうか。そしてその後の人生にどんな光を当てていったのでしょうか。

原田 梓さん

大学卒業後、国立病院にて医局秘書として勤務しつつ研究補助者として臨床研究に携わる。出産後職場復帰し、働きながら大学院へ通い、公認心理師・臨床心理士資格を取得。

現在は、勤務先にて秘書と心理療法士を併任する。心理検査などの査定や、入院中の患者の心理支援、外部のクリニックやオンラインでの心理療法によるカウンセリングを中心に活動中。

卒業・修了した大学・大学院:

立命館大学大学院人間科学研究科博士課程前期臨床心理学領域
入学年月日(年齢):2019年4月(41歳)
修了年月日(年齢):2021年3月(43歳)

関西外国語大学大学院博士課程前期英語学専攻
入学年月日(年齢):2002年年4月(24歳)
修了年月日(年齢):2004年3月(26歳)

思い立ったらすぐ行動。モノにはならなかったように見えた20代

————1回目の大学院は英文学なんですね。これはどういったご興味で入られたんですか?

元々英語が好きで、帝塚山学院大学の国際文化学科で英語をメインにした文化や文学を扱う学部を卒業し、その後は地元の国立病院で非常勤の秘書として働いていました。

そのころから漠然と「専門職に就けたらいいな」という気持ちがありました。そんな折に同窓会でゼミの先生に院を受けてみないかとお声がけいただき、大学の教職の道もあるのかも?とやや安直な感じで行ってみたんですが、その職には就かずそのまま修了しました。端的に言うと「甘かった・浅はかだった」に尽きます。修士論文を書くのも大変ですし、大学の教職に就けたとしても、いただけて週1コマというレベルだったので、それは難しいなと思いました。すると今度は博士課程に進学することを勧められましたが、博士論文を書くほどには英文学に興味が持てず、期待して下さった先生にお詫びしてこの道はここでストップしました。




————2度目の大学院を目指すきっかけはどういったものでしたか?

英文学の道は断念したものの、専門職へのあこがれはまだ持っていました。

キャリアにつながりそうなことを模索し続けていて、例えば税理士の専門学校に行っては途中でやめてしまったり、簿記の3級は取ってみたけど2級は続かなかったり。思い立ったらすぐに行動はするのですが、なかなかモノにならなかったというのが20代の私でした。

病院での秘書の仕事はとても性に合っていて、学部卒業後からずっと続けてきています。秘書の仕事に加え、研究補助者として研究の手伝いをするようになりました。脳卒中の研究をしている医師の元で認知機能の検査を手伝っていまして、患者さんとのやりとりや手続き的なことをサポートしていましたが、実際にこの検査を実施する人はどういった職種なんだろう?と興味を持ちました。調べたところ「臨床心理士」という資格を持った人がする仕事なんだって初めて知ったんですね。

資格を取ってこの検査がちゃんとできるようになると、将来的にはニーズの多い仕事であることを知りました。一般的にカウンセラーのイメージが強いのですが、臨床心理士の仕事には、面接・査定・支援・研究があります。勤務先の病院では「査定」のできる臨床心理士を求めていました。

学部生のころから心理学には興味があったので、当時も進学を考えなかったわけではないんですが、まだそのときは大学院の壁を高く感じて選択からはずしていました。それがこのタイミングで「臨床心理士いいな」という感じで繋がりました。

私にとって秘書の仕事は天職でとても気に入っていますが、結婚・出産を経て「ずっとできる仕事なのだろうか」という考えがよぎったんです。子育て真っ最中でも子育てが終わった後でも、ずっとできる仕事がいいなと思い、もう1つの道も用意したいと考え始めたときで、そこが合致した感じですかね。




————41歳の時に入学されたということは、子育ても仕事も、ということですよね。

はい。受験勉強を始めたのは、子供が2歳か3歳くらいのときだったと思います。

ちょうど夫が単身赴任となったので、家族のメインサポーターは実家の母でした。子供は保育園に入れていましたが、週末などは頼んでよく自宅に来てもらって、仕事や勉強をする時間を確保しました。

職場では、勤務日数を減らしはしましたが、あいにく仕事量を減らすと周囲に迷惑のかかってしまう種類の仕事だったため、同じ量を効率的にと頑張りました。また「将来的には仕事に活かしますので!」と説明していましたし、納得してもらえていたと思います。かなり頑張ったと思います。もうね、バイタリティだけで生き延びた感じですよ(笑)

おかげで、修了後に臨床心理士の資格を取って査定の仕事に取り組めています。また、土曜日に別のクリニックで完全にカウンセリングのみの仕事を週1回と、病院の勤務がお休みの火曜日に、依頼があればオンラインカウンセリングの会社に登録させてもらっていて、心理面接の仕事ができています。

仕事量は減らさない。時間のロスとの戦い

————どんな選択の軸で大学院を選ばれたのですか?

まずは「通えるところ」でピックアップしました。いかに時間のロスを少なくするかが最優先。働きながら通うことが大前提だったので、非常勤の秘書の勤務日数をギリギリまで減らして、通えるラインを選びました。追手門・金襴・阪大・関大・大阪経済大学あたりが圏内です。

阪大はレベル的に無理かなと思い最初から除外し、次の候補が立命館でした。職場に一番近かったんです。受験勉強の際、予備校の先生にお世話になったのですが、「ハードル高いよ」とは言われていたんですね。しかし調べれば調べるほど、良さそうな先生・きれいな校舎、知れば知るほど「ここに通うんだな」とイメージがピタッと来ちゃったんですよね。落ちてもまた立命館受けます!というテンションで乗り切りました(笑)




————大学院へ行ってよかった、資格を取ってよかったと思うことはありますか?

まずは専門職に就くことができたのが良かったですね。楽しいですし、自分の生き方として合っているなという感覚がとてもあります。カウンセリングをしていると、患者さんにもいらっしゃるんですけど、自分自身が何かわからない状態に悩むことがあります。私もそんな感じだったのかなと思うんですよね。目に見えない不安が無くなったのは、こうやって専門職が現実になってきたおかげかなと思います。人生の目的が見えてきた感じです。

それから、社会人になってから本物の学びが得られたなと実感しています。

それまでは目的もわからず学んでいるつもりだったんだなって。自分の中の課題感や問題意識とかがあるから、勝手に知識も入ってくるし、どんどん学びたいと思いますよね。

あとは心理学という分野というのもあり、日々の生活や子育てなどにも非常に役立つ学問だと思うのでそういったこともよかったと思います。




————大学院での学びにおいて、よくも悪くも「これは裏切られたな」というものはありますか?

40代で入学したので、年齢的に上すぎるんじゃないかと不安に思っていたのですが、まだまだ年上の方がいらっしゃいました。おばあちゃんになっても学べるって素晴らしいし、学びに年齢制限はないんだなとちょっと感動したんです。

あとは、時間が全然足りない!というのは本当に想定外でした。

事前に調整したのは授業に出席するための時間でしたが、実は課題に取り組んだり、自ら勉強する時間が必要で、本当に時間が足りなさすぎました。社会人の場合は卒業までの期間を延長できる制度があり、当初は4年まで延長するよう申し込んではいたのですが、資格取得を優先するために2年での卒業を決め、その途端にすごく時間が足りなくなりました。

臨床心理士の資格は、修了と同時にもらえるわけではなく、卒業後に資格試験があります。3月に修了して、その年の10月が1次試験で11月に2次試験の面接がありました。さらに2015年からは公認心理師という国家資格ができ、そちらの取得も目指したため、さらにハードになりました。試験は9月だったので、これを半年間で公認心理師の試験を受けないといけなくてこの1年は本当にきつかったですね。




————す、すごい。こんなにお母さんが勉強していると、お子さんって何も言わなくても勝手に勉強するんじゃないですか?

いや全くそんなことないですね(笑)

なかなかの他人事ですよ。まだ低学年ですし、あまりそういった話をするタイミングも無いんですが、ママが身をもって経験したことだけど、勉強をやりたいと思い立ったときが一番のやり時だとは伝えています。「勉強、嫌だったらしなくてもいいよ、でも大人になってから勉強するのはすっごく大変だよ」って言ったら「やだ」って言ってました(笑)




————「じゃ今やろうか」となるわけですね。それはいいですね!親が学ぶことで子供の選択肢を増やしてあげられるっていうのはすごい素敵なことですよね。

縁あってこの資格に導かれていると思えるようなラッキーの連続

————受験準備についても少しお聞かせいただけますでしょうか?さきほど「予備校」というワードが出ていたと思いますが。

大手がやってる臨床心理士専門の予備校があって、その説明会に行ってみたんです。ところが社会人向けの講座は夕方からということで、子育て中の私には参加は到底無理だなと思い、予備校は一旦諦めすごすごと帰ったんですよね。そんなタイミングで、本当にたまたま、ママ友の伝手で予備校の先生のご経験がある方がいらっしゃると聞き、紹介してもらうことができたんです。

1対1で家庭教師のような感じで、日曜のお昼とか土曜の夕方とかに来ていただけるんで、これは本当にラッキーだったと思います。1年間お世話になりました。

夏に前期を受けて不合格だったのですが、後期も受験し合格しました。後期は倍率もすごいしまず受からないと思っていたので、これもたまたまなのかな、と思います。なんていうか資格に対するご縁のようなものは実は感じています。



————金銭面で職場からの補助などはありましたか?

そういった補助はなく奨学金もありませんでした。100%自費で、貯金を使って通いました。




————原田さんの場合、社会人大学院ではないからフルタイムということになりますよね?どのように時間をやりくりしていらっしゃったんですか?

日中の授業なので、授業のカリキュラムが確定しスケジュールがオープンになった瞬間に仕事の調整をしてもらっていました。例えば午前中12時まで働いて、その後ダッシュで大学に向かって13時から授業みたいな日々でした。また2年目は、これはあまり参考にはならないかもしれないのですが、コロナの影響でオンラインの授業が増えたんですね。これは私にとっては非常にありがたかったです。




————今後のキャリアイメージは何か思い描いていらっしゃいますか?

今の職場で働き続けるのならば、臨床心理士の方の仕事にシフトしていきたいですね。秘書の仕事と臨床心理士の仕事が今8:2ぐらいですが、だんだん6:4とか5:5といった感じで徐々にシフトしていけたらなと思います。

また、今は土曜日とかにしているカウンセリングの仕事を将来的に定年後でもいいですし。今の職場を離れた時、カウンセリング1本で仕事できるようになれたらいいなっていう風に思ってますね。

男性と同じルートで歩む必要はない。女性こそ学び、しなやかに生きよう。

————あなたにとって大学院とは何ですか?

リアルな学びであることに気付かせてくれる場所。

社会人を経験したからこそ、そこを活かすことができるきっかけの場だと思います。人生を豊かにしたり、どんな人生を歩むかの指標をじっくり考え作る場所かもしれないですね。




————どんな人に大学院進学を勧めたいですか?

臨床心理士の資格を取ったことで、病院での私の職名が研究補助者から心理療法士に変わったんですね。すると、そのことに気付いた職場の人たち、中でもお子さんを産んだ方たちが私に関心を持って下さり、色々と質問を受けることが増えたんですね。「心理士さん取ったんですよね」「どうやって資格が取れたんですか」という感じで。

出産育児で一旦キャリアが止まってしまうんですよね。なかなか今の仕事のままでは厳しかったり、年齢的なことも考えたいというそういう女性に私はおすすめしたいです。女性こそ学びにいってほしい。

男性が育休を取得するとか言ってますけど、実際に産んだり授乳したりするのが女性で、その負担を育休取得した男性が軽くするほどにはまだ世の中変わっていないし、そもそも5:5には絶対にならない。そのとき男性と同じように仕事を優先しようとすると難しいんですが、1つの選択肢として学び直しや資格の取得はいいと思います。もちろん出産育児関係なく、何かしたいと思う主婦の方もいいと思います。




————確かに海外だと育休中にMBAに行く選択肢なんかもありますよね。

いいですよね。しかも今だったらオンラインが強みになっていますよね。私も、公認心理師の資格取得のときに現任者講習というのを受ける必要があったのですが、この講習は3日間朝から晩までがっつり拘束されるんです。そんなの子供いたら絶対に無理じゃないですか。ところが、それも全部オンラインになり、全部受けられたんです。私にとってはコロナ禍でのオンライン化がまさに追い風でしたね。

多様性とかよく言われていますが、世の中ハイブリッドに多様な方法を取り入れる方向になって欲しいですね。またもとに戻る、ではなくて。

オンラインはもはや主婦の味方ですね(笑)




————原田さんのお話は元気が出ます!1度目の外語大時代のご経験は、確かに今直接的には関わってはいないのかもしれないんですが、結果的には大きく影響しているのではないかなって思いました。ありがとうございました。

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