大学院だからこその実践を余すところなく学びつくす 東京都立産業技術大学院大学

働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」

今回は東京都立産業技術大学院大学に在学中の廣澤剛志さんです。
文系の学部卒からSE経験を経てフロントエンドエンジニアに転職した廣澤さん。

実務寄りの大学院を検討し、専門職大学院への進学を選択されました。廣澤さんに「こんな道があるよ」ときっかけを与え、背中を押してくれたのは誰だったのでしょうか。

ご自身が得られた学びを通して、専門職大学院の魅力について、お話を伺ってみました。

 

廣澤 剛志さん

2017年 新卒でシステムエンジニアとして就職後、2019年からフロントエンドエンジニアにジョブチェンジ。現在は、株式会社iCAREで勤務。

2021年4月から 産業技術大学院大学情報アーキテクチャコースに入学。

卒業・修了した大学・大学院:
東京都立産業技術大学院大学情報アーキテクチャコース  在学中

入学年月日(年齢):2021年4月(26歳)
修了年月日(年齢):2023年3月(28歳)

ユーザーに価値を直接届けやすい、フロントエンドに魅力を感じた

————現在はフロントエンドエンジニアをなさっているとのことですが、もともとは文京学院大学での経営学部ご出身なんですね。

いきなりフロントエンドの領域に行ったわけではなくて、はじめはシステムエンジニアとして、SIer企業に勤めていたんです。開発業務は全くなくて、客先のサーバー保守運用をする仕事からスタートしました。

社会人2年目にあたる2019年12月に1社目を辞め、翌年1月から次の会社に転職し、Web業界へフロントエンドエンジニアとして飛び込みました。




————元々フロントエンドがいいなとかあったんですか?

ジョブチェンジしたくて、独学で開発やプログラミングの勉強をしていましたが、当初はそこまでサーバーサイドかフロントエンドかは考えてはいませんでした。

フロントエンドエンジニアの仕事は、書いたコードがすぐに画面に反映されるんですよね。そういうところが当時の自分にとっては、楽しいと感じていました。




————お客さんにどう届いているのかが分かる方が好きっていうことですかね?

そうですね。もともとそういう思いがあって、エンジニアになりたいと思った経緯があります。

学部生のころに遡ると、僕は経営学部を先行していましたが、授業の中には情報系の授業がありました。実際にプログラムを書いたり「ITパスポート」という情報処理試験を受験したりして、少なからずWebサービスを作るとか、ITそのものに興味がありました。

ところが1社目は自分の想像していたような配属ではなく、やりたいこととは違う場所にいるのだと分かったんです。自分はむしろ、Webのサービスや IT で課題解決をする、開発する側に回りたいんだということに気付いたんですね。

しかし、その会社ではそこにたどり着くには時間がかかりすぎてしまう。社内でスキルアップを図るよりもむしろ外に飛び出してしまった方が早いなと思ったので、転職を選びました。新卒のタイミングから、Web サービスを作りたいという思いがありそこに辿り着いたという感じですね。

今思うと、新卒の時は本当にふんわりとした考えでしたね。漠然と「IT企業」というものがあり、そこに入りさえすれば研修で教えてもらえて、そのうち自分はできるようになるんだ!という甘い考えを持っていました(笑)

夫婦で共に進学を検討する

————大学院への進学は、2社目の時に決められたのですか?

3社目にあたる今の職場に来たタイミングでした。実は2社目に勤めている時から、情報系の学問を学びたいと思ってはいました。ちょうどそのころ、同じくWebエンジニアをしていた妻から「社会人大学院の説明会に行くんだけど興味ある?」と話を持ち掛けられたんです。だから、直接のきっかけは妻なんですね。今僕は大学院に通い、妻も大学に通っています。




————うわー。ご夫婦で支え合い応援し合って学べて、いい環境ですね!同じ大学ではなかったんですね。それぞれ興味の分野や学びたい環境が違った、みたいなことなんでしょうか?

これは大学院をどこにしようか決める話にも繋がるんですが、僕は数学や理科系のことよりも、もっと実践的で実務に近いことを学びたいと思っていたんですね。そうなってくると、夜間の大学や研究系の大学院は違ってくるわけです。その一方で妻は、数学などをもっと勉強して、情報系の中でもよりアカデミックな方に興味があったので、夜間で4年間学ぶ道へ進みました。




————良かった。喧嘩して別々の大学じゃなくて(笑)。
奥さまの話もめっちゃ興味があるので、よかったら今度ご紹介いただきたいです!それぞれWebエンジニアのご夫婦がお互いどう思っているのか、どんな感じだったのかなども伺いたいです。

(笑)わかりました。大丈夫だと思いますよ。

実務では試せない実践を経験する大学院の学び

————通い始めて1年経過して、どうでしょうか?ご自分が期待していたものは得られていますか?そういった実感はありますでしょうか?

1年時は座学が多く、授業によってはグループワークや課題といった形式で実務に即した取り組みもありました。周りの皆さんは社会人経験のある方がほとんどで、年齢層やキャリアも様々です。非IT・非エンジニアの方だったり、40〜 50代ぐらいの、管理職に就いていてITのことを勉強し直したいという方もいらっしゃいます。

実務だとどうしても専門分野や経験が自分と似通った人ばかりになりがちですが、大学院の中ではそれぞれの専門性やキャリアが違っていてそれぞれに際立つんですよね。座学での勉強で知識をインプットすることを想定していましたが、むしろ幅広い年代や色んな業種の方と一緒に授業やグループワークの中で、コミュニケーションを取り、授業の課題を解くという経験の方が自分にとって大きな学びとなっています。




————AIITではPBL(プロジェクト・ベース・ブランニング)という特徴がありますよね。これを様々なバックグラウンドや価値観や年齢層の人と取り組むことによって、実務だけでは得られない仕事の進め方といったものも身に付ける経験となりそうですね。

2年次になりPBLの活動が始まったのですが、今僕がいるPBLはエンジニアが自分を含めて4人と、それ以外の職種の方もいたりいたりするんです。要件定義や仕様設計などが得意な方、あるいは開発の経験が豊富な方もいます。




————PBLは複数あるんですか?いっぱいあって選ぶんですか?

PBLは複数あり、各PBLに教授がついています。学生は1人1つだけ入ることができて「この教授のこういったテーマのPBLでやりたい」みたいな感じで選びます。PBLは研究と違って、実際にプロダクトやWebサービスを作ったり、アジャイル開発の手法を体験したりできるんです。

僕は情報アーキテクチャコースというところに通っているので全体的にそういうPBLなんですけど、他のコースでは事業を設計したり、物理的なプロダクトを作ったりなどがあったりします。




————専攻によって本当に様々なんですね。ちなみに、情報アーキテクチャコースの中でも、廣澤さんが現在のPBLを選んだ理由を聞いてもいいですか?

前評判で「このPBLは一番大変らしい」「先生も厳しいらしい」とは聞いていました。せっかく大学院に来たのだから、そういった厳しいところでやりたいと思ったのがまずは理由の1つです。

実際にWebプロダクトを作るPBLだということも聞いてたので、そこに決めました。

苦手な分野でも学びたいことにチャレンジできる

————めちゃめちゃ「実践」なんですね!
お話を伺っていて1つ疑問に思ったのですが、この実践的なことを、あえてアカデミックな分野でやることの価値ってどんなことだと思われますか?

お金が絡まない話なので、自分の得意分野ではないことができるのは大きいですね。経験のない分野でも勉強したいことにチャレンジできる。僕の場合でいうと、実務の場ではフロントエンドエンジニアですが、PBLではプロダクトオーナーという役回りです。

プロダクトオーナーは、PMF(プロダクトマーケットフィット)から逆算して、いつまでに何をすべきかなどを決め、プロダクトの方向性をドライブしていくわけですが、実務でいきなりこれを経験するってなかなかできないことですよね。

同じPBLのメンバーには起業経験がある人や、プロダクトを作ってそれを売り込んだ経験がある人もいます。そういった方々からのアドバイスや動きを見ることで、僕もプロダクトオーナーを疑似体験するといった経験ができます。




————確かにお金が発生していないからこそチャレンジできることはありますよね。お金をもらわずに半分仕事のようなことをしているようにも見えるのですが、この大学院での経験は、エンジニアの人にとってお金払ってでもやりたい経験なのでしょうか?

どうでしょう(笑)。ただ卒業したい・単位が欲しいという人ももちろんいると思います。僕も少なくとも卒業はしたいです(笑)。

でも、大学院に入って何を学べるかは入らないと分からないところもあります。僕も座学で何かを学ぶのだろうと思っていましたが、入ってみたら1年次の授業の段階でグループワークなどの体験型授業が多く、実務で経験できない役回りを経験できることが多かったです。

「クラウドサーバ構築特論」では、数人グループで AWS の EC2 インスタンス上に各種サービスを組み合わせてサービスを作るワークも行いました。




————この経験は副業でもできることだと思われますか?

確かに、同じ経験を副業でももしかしたらできるかもしれないです。

先輩にPBLの前評判を聞いた時には「ほぼ副業」みたいな印象を抱きましたし、実際開発が始まるとこれは半分副業だよねって声もありました。でも、副業となるとやはりお金がからんでくるから、またそことも違うような気もします。




————そうか。副業も結局「できる人」に回ってくるから、できない人やチャレンジしたい人にとっては、また1個ハードルがありますよね。

PBLも得意分野を「できる人」が進めるという側面もあります。しかし、学びの側面が大きいです。例えば今僕たちのPBLで進めているプロジェクトの1つは、PMF(プロダクトマーケットフィット)を目指すプロジェクトで、決まった書籍に忠実に、示されたステップを順に踏みながら進めているんです。

しかし、これが本当に起業するとか副業でプロダクトを作る、ということになると、1個ずつステップを踏むことはないし、すぐにでもプロトタイプを作ってお客さんにフィードバックを得るのがセオリーだと思います。

そこもあえて飛ばさずにしっかりペルソナを作って「お客さんの課題は何か」「その課題に対してどういうソリューションで解決するか」といったことを1つずつ練り上げていくのです。そこのバランスは大学院ならではかなって感じがしています。




————確かにそうですよね。しかも教授も見てくれるし、フィードバックももらえる。これは確実に伸びそう!

道を外れそうになるとアドバイスもちゃんと入りますしね。

Slackで上司から「がんばってね!」とカジュアルに返事が

————受験準備について少し教えてください。

AIITの場合は、僕も含めほとんどの人が社会人枠の入試を受けています。

社会人枠の入試だと、いわゆる筆記のテストではなくプレゼンです。10分程度で自分の作ったプレゼン資料に沿って自己紹介をしたり、学びたいことを話して、その後はいくつか教授からの口頭試問がありました。




————なるほど!研究系ではないから「こういうことを実装したいです。やりたいです」っていう風なことをまとめるんですね。もうここから始まってるんですね。PBLは。周囲の人たちはどんな方がいらっしゃるか、差し支えなければ教えて頂いてもいいでしょうか?

割と僕の年代に近い20代中盤後半とか30代くらいまでの方は、結構業務でコードを書いているようなエンジニアが多いです。

逆に40代50代で年齢が上がってくると非IT系の方とかITではあるけども、既に管理職のキャリアを進まれているかたっていうのが多い印象です。

どの方も、本当に自分から学びたくって入っている人ばかりです。




————なんかすごくイメージが湧いてきました。40-50代の方々の場合は、新たにキャリアの柱みたいなものを作る学び直しが目的の、意欲の高い方が多そうですね。他の方にインタビューする時はパートナーの反応がどうだったかを質問させて頂いているのですが、廣澤さんの場合は、奥さんも含めて前向きな感じですよね。いわゆる「嫁・彼女ブロック」的な話を聞くこともあるので。

大学・大学院入学が同じタイミングだったのが一番大きいと思うんですが、大学院をどこにするかも自由に好きに選ぶこともできました。むしろ「この大学院どうかな?」というような相談もしました。




————切磋琢磨してる感じがいいですよね。会社はどうでしたか?説明が必要だったりしましたか?

受験のタイミングで「大学院に通おうと思っています」と上司に話をしました。その方から上の人に伝えておいていただく、という話になって、数日後Slackで「大丈夫だったよ~、頑張ってね」という連絡が来まして。

大学院が始まってからは、それこそ業務との都合もあると思うので、少し調整してもらってましたね。




————費用はどんな感じでしたか?完全に自費ですか?

会社の制度はなくて自費ですが、教育訓練給付金は申請しました。

都立の大学院なので、他の大学院と比べてそもそも学費もかなり安く済むんですよね。また、都民だと通常の金額よりも少し入学金など安かったと思います。




————普段のスケジュールをお聞かせいただけますか。授業やプロジェクトのミーティングの頻度など。

1年次で多かった時は、月曜から土曜まであるうちの週5日は授業がありました。

1クォーターが2ヶ月なので、その中で1科目15回の授業をするとなると、週に2回の授業を受けることになります。




————そ、それはやばそう(笑)

僕は1度それを経験して、反省しました。最初に5科目取ったため、週10コマになってしまいました。平日は、夜の6時40分から8時までと、8時10分から9時40分までが授業で、土曜日は朝9時から授業という日々がしばらく続きました。

2年次はプロジェクトベースとなるので、コマ数は減ります。

活動の時間数は学校から決められたものが一応あります。

ミーティングは週に3回。平日1回2時間が2回と土曜日に2時間。土曜はミーティングと作業時間です。それにプラスして、個人が作業したり、集まって作業したりするための時間を確保します。開催する曜日や時間は自由ですが、最低限18時間は確保して、成果は報告しましょう、という感じです。

学び直しで、脳に知識のインデックスが貼り直された

————卒業後は何か考えていらっしゃいますか?

博士課程に進むつもりはないです。情報系の大学院に来て、視野や知見の広がりを少なからず実感しているため、それを業務に活かしたいという気持ちが強いです。

エンジニアとしてコードを書いたり、小人数でのプロジェクトに関わるような立場から、より大きなプロダクトやプロジェクトに関われるエンジニアやマネージャーとしてのキャリアを伸ばしていけたらと考えています。

エンジニアのキャリアは大きく分けて、技術を極める専門的なものと、マネジメント寄りのものがあります。僕は実務の場での学びや独学での努力のみでは、他のエンジニアに比べても、成長している実感が持てなかったんだと思います。そういう意味で、今まさに脳にいろんな知識のインデックスが貼られて、ようやくスタートラインに立てたと思えるようになりました。

マネジメント寄りのキャリアも専門的なスキルのキャリアも、より伸ばしていき、卒業後は今よりももう少し上のグレードの職務をしっかりこなせるようになりたいです。



————あなたにとって「大学院」「社会に出てから学ぶこと」とは何ですか?

世の中のことを知らないままとりあえず大学に行く、みたいな感じだった学部生のころとは全然違い、一度社会に出てみると、自分に足りないことや自分の知らなかったことがよく見えるようになりました。そして、それを実際に学んで仕事にしてる人がいることに気付く経験が何度かありました。

体系的に学ばせてくれる場所に時間を割けば、もう一度スタートラインに立てるかもしれない。でも、そこまで生易しいものでもなく、「学び直しだけどやり直しではない」というか。すでに経験したと思っていたことを、社会に出て得た気づきと共に大学院に持ち帰り、見直すことができる。そのように感じています。




————「やり直しではない」という表現がとってもいいですね。

「学び直し」という言い回しは、なんとなくネガティブな印象を持たれてしまいますよね。社会に出たのに、また学生に戻るのか、みたいなイメージなんでしょうか。社会に出てからの方が自分に足りないものや学びたいものが見えてくる気がするのですが。

最近、周囲のエンジニアの人から進学についての相談を受けることが増えています。実際に今年から入学したエンジニア仲間もいますし、全然違う業界から転職してエンジニアになって、科目等履修生の制度を使って授業を取ってる人もいたり。少しずつ「そういう道があるんだな」っていうことが広まってきているように感じます。




————どんな人に進学を勧めたいですか?

社会に出てから、エンジニアや先輩と比較した時にギャップを感じた方、ですかね。情報系の学び直しができる大学院はお勧めしたいです。仕事と両立しながら進む覚悟は必要ですが、ただ、周りの環境もとても大きいと思います。家庭や職場においての理解や調整を得て進められるといいですよね。

また、社会に出てから少し明確に学びたいことが見えてきた人はお勧めかなと思います。



ちょっぴりアフタートーク:様々な人のお話を聞きたいんです!
————実はエンジニアの方のお話を聞くのが初めてで、専門的なお話についていけるのだろうかと少し心配していたのですが、かみ砕いてお話いただけて分かりやすかったです!

そうなんですよ!

僕も今まで公開された記事を見て「あれ?これはエンジニア初じゃないか?畑違いでは?」とちょっと不安でした(笑)。




————いえ、畑違いだなんてとんでもないです!むしろ多方面に広めていきたいと思っているので、このたびお引き受けいただいて、とてもありがたかったです。奥さんのご紹介もぜひお願いいたします(笑)
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