「人生を放置したくない」ふと抱いた危機感。大学院に通い得たものとは? グロービス経営大学院

社会人大学院の経験談を紹介する「先輩インタビュー」
今回は、グロービス経営大学院に在学中の小林 龍之介さんです。

栃木県で救急救命士として働いている小林さん。コロナ禍で自分の知識をアップデートしにくい環境になり、「人生を放置しておくとまずい」という思いから進学を決意します。小林さんのグロービスで得た学びの活かし方や大学院についての考えなどお話を伺いました。



小林 龍之介さん

さいたま市出身。救急救命士の国家資格取得後、栃木県内にある消防本部に採用される。消防拝命後は、警防・救急業務に従事。119番通報による出動や市民への救命講習を行う傍ら、全国救助技術大会へも出場。近年注目される大規模災害や、新型コロナなどで激変する社会を消防の目線で見てきた。

卒業・修了した大学・大学院:グロービス経営大学院
入学年月(年齢):2022年4月(30歳)
修了年月(年齢):2025年4月(33歳)

救急救命士としてのキャリアのやりがい

————現在のお仕事についてお伺いできますか?

私は現在、栃木県にある消防署で働いています。救急救命士の資格を持っているので、救急の分野の担当です。現在7年目ですね。

 

————救急救命士として働く前は、専門学校に行かれたのですか?

そうです。救急救命士の専門学校を卒業しました。卒業してからの1年間は、アルバイトをしながら消防の採用試験を受けていました。結果的に、栃木県内の消防本部に採用されたという流れです。

 

————なるほど、ありがとうございます。現在の仕事でやりがいを感じることはありますか?

最近は救急現場に向かうと、上司の救命士から、「自分の好きなように現場を回していいよ」と現場を任せてもらえています。チャレンジできる場を与えてもらっているので、やりがいがあるなと思いますね。

また、病院のお医者さんや医療スタッフからの「〇〇消防の救急隊はここが強いよね」などの言葉をいただくことがあります。そのときは自分が所属している救急がレベルアップしたのではないかと思えるので、組織としてのやりがいも感じます。そういった言葉をいただいたりすると、うちの救急もレベルアップしてきたかなと思いますね。

 

————反対に現在の仕事で、辛いなと思うことはありますか?

例えば、消火した後で家の中を見ると大切なものが燃えてしまっていることに気が付いたり、救急の搬送先がすぐに決まらなかったりです。ミスではなくベストを尽くしても、結果を問われるお仕事でもあるので終わってから悔しかったり辛い気持ちになることはあります。

 

課題感と危機感の中で出会ったグロービスのディスカッション動画

————救急救命士として働く中で、課題感はありましたか?

私が働き始めてから、栃木県内でも結構、大きな災害が起きました。例えば、2021年に発生した山火事や2019年に起こった令和元年東日本台風などです。これらの災害は、私にとって衝撃的で、消防が向かっていっても何もできない現実を目の当たりにしました。栃木県外でも、現在では水難事故や火事、熱中症で亡くなってしまう方などが多くいることを感じていました。救急救命士の視点から見ても、医学的に死にそうな状態の人の命を救えるかどうかって紙一重だったりするんですよね。事故を目の当たりにして、救える命を救うため、私自身がさらに知識を身につけたいなと思いました。

同時に、私は今のキャリアの中でどういうふうにレベルアップしていけばいいのかという漠然とした疑問がありました。新型コロナウイルス感染症が流行するまでは、病院との勉強会や研修などで、知識をアップデートできる場があったんです。しかし、そういったものもすべてなくなってしまって、職場と家を往復するだけの生活になります。そのときにふと「自分の人生を放置しておくとまずいな」と感じたのです。この頃は、知識を深めたいという課題感と人生を放置したくないという危機感が混在している状態でした。

 

————「自分の人生を放置しておくとまずいな」というのは、非常に共感できます。グロービスに行こうと思ったきっかけはありますか?

YouTubeでたまたま見たグロービスの動画が目に入って、新しい視点を得たことが新鮮でしたね。動画ではビジネスの視点から、災害が起きた時の対応方法をコンビニチェーンの方や報道局の方などが集まってディスカッションしていました。そこからグロービスはどういう人たちが来るのだろうかとか、クリティカル・シンキングという科目で、課題解決ステップを学んでいくうちに面白いなと思って進学しようと決めました。

 

————ありがとうございます。動画の内容は、小林さんが専門とする人命救助に関わることでしたか?

直接人命救助につながる内容ではありません。どちらかと言うとビジネスを存続するためにどう災害に対処するかみたいな感じの内容です。ただ、アイデアが非常に勉強になりました。例えば、監視カメラを使えば災害時に情報を集められるなどのアイデアです。

 

————こういう場を主催しているグロービスが運営しているなら、自分の学びにつながりそうだと思いましたか?

そうですね。先ほども人の命を救うことは、紙一重で難しいと言いましたが、考えられることはすべて考えるべきだという消防の鉄則があります。ディスカッションの動画を見て、違う視点から見ると、解決できる問題もあるのではないかと思えるような意見が多く出ていました。動画を通して、私とは違った視点を持った人が集まる場で学びたいと思いました。また、こういう人たちと一緒に勉強していると自分も少しレベルアップでき、面白いなと感じたことも大きかったです。

 

グロービスで得た課題解決力と主体性

————グロービスでの学びで、一番タメになっていることはありますか?

グロービスに行く前よりも現在の方が、課題解決力が上がっているように思います。問題を解決するためのステップを知ったことは大きいですね。今までは振られた仕事をそつなくこなしていれば、問題ありませんでした。今では小さい疑問もまずは自分で考えられるようになっています。またグロービスはケーススタディーで学ぶので、自分の考えを求められます。そのため、リアルの場面でも、あまり他人の意見に流されなくなりました。人が否定的な意見を持っていても「工夫すればどうにかなるのではないか」と自主性を持って考えられるようになったと思います。

 

————課題解決力は、まさに救急の現場で活きそうですね。ここまで聞いて、救急救命士さんがMBAに行くことに意味があることが分かりました。

 

周りの力を借りながら乗り越えた受験準備

————面接やエッセイはどのように対策されましたか?

グロービスだと、最初の方に受けるクリティカル・シンキングのクラスなどにメンターが付きます。受験は、メンターなどに相談していました。また同期の中では、既に合格した人もいるので、その方々にエッセイの添削や模擬面接をしてもらいました。

 

————ありがとうございます。受験はどうでしたか?大変でしたか?

本当に大変でしたね。自分の人生の棚卸は、あまりしたことがありません。そもそも消防というキャリアで合格する可能性は低いかなと思っていました。そのため落ちることも考慮して、とりあえずやるだけはやろうという気持ちで取り組んでいましたね。エッセイも4パターンくらい書いて、知っている人に送りつけ、コメントをもらっていました。ここは、結構根性で進んでいった感じです。

 

————エッセイを4パターンも作ったんですか?

エッセイにはテーマがありましたが、何を書けばいいのかよくわかりませんでした。自分の成功体験を書くのか、キャリアについて苦労した部分を書けばいいのか分からなかったので、思いつくままに書きました。結局4パターンくらいできたので、どれが自分自身を一番反映できているかを同期に壁打ちさせてもらって選んだという流れです。

 

————4パターンのエッセイをそれぞれみんなに読んでもらって、一番反応の良かったやつを提出した形ですか?

そうですね。

 

進学に対してポジティブではなかった周りの反応

————大学院に行くことに関して、周りからの反応はいかがですか?

身近な職場の同僚や家族には「大学院に行っています」と言ったのですが、そもそもそういったトピックにあまり興味がない様子でした。「まあ、頑張ってね」ぐらいなそういう反応だったのと、家族は体力もお金も負担が大きいので心配されました。

 

————進学に対して、あまりポジティブな反応をもらえなかった理由は何だったのでしょうか?

一つは多分、私の伝え方なのかなと思います。相手に進学に関する内容が伝わっていないかもしれません。私自身MBAも、オンラインの講義も、やってみて分かったのであとは私の職場とかを見ると、高校なり大学卒業して働いてから、新しい学校に行く文化がありません。そこで、「なぜこの人はまた学びに行くのだろう」と考えるだろうと思います。もしかしたら、家に帰ったら机にかじりついているみたいなイメージを持たれているかもしれません。

 

————なるほど、あまり仕事をより良くするために学んでいるという捉え方がされてないんですね。現場で学べるから学校に通う必要はないという考えが強いのかもしれませんね。

やはり仕事から教わるものだという文化や考えが強いのかなと思いますね。もしかしたら、私が弱いのかもしれませんが。もちろん、新人の頃であれば、仕事を通して成長できると思います。たださらに知識を深めるとなると、仕事だけで学ぶことには限界があると感じたのです。

 

————現場だけで学べることにも限界があり、逆に大学院で学べることも限界がありますよね。周りに進学を理解されなかったことは、辛くなかったですか?

受験の頃とかは辛かったですね。今は一緒に勉強するクラスメイトがいるので、頑張れています。自分が受験準備や費用を工面しているときに、あまりいいフィードバックがなかったのは少し辛かったです。

 

今後は組織全体を考えられる自分になりたい

————今後やりたいことや志していることなどありましたら教えてください。

今後は自分が所属している救急隊のレベルアップをしていきたいです。また、救急隊は専門職で、おそらく多くの人にとっては、あまりよく分からない仕事だろうと思います。今後は自分たちの仕事がどのようなものなのか、市民に知ってもらう活動をしたいですね。さらに地域に合った消防や救急医療を提供できるような働きをしていきたいです。もちろん今も医療や行政などと連携して、地域医療を充実させる働きはありますが、より進めていきたいです。

今の私は、まだまだ現場で自分の力を発揮している段階ですが、将来的には組織の上の仕事にも携われるような自分になれればいいかなと思います。この辺の思考は、オペレーション戦略というクラスを受けて初めて知ったので、これから考えていければなと思っています。

 

————オペレーション戦略という授業もあるんですね。

はい。いわゆるサプライチェーンなどを考える科目です。救急医療では、傷病者の命を救って、社会復帰に導くための一連の医療提供の流れを「救命の連鎖」といいます。医療も鎖になっているという考え方で、救急医療にも当てはまります。救急隊は、患者さんを病院に運ぶだけの仕事ですが、その現場や患者さんや病院などのことをしっかり考えられる私自身あるいは組織になればいいなと思いますね。

 

大学院は自分の能力開発ができる場所。人のために動ける人に進学をすすめたい

————小林さんにとって、大学院で学ぶこととはどのような意味がありますか?

最新の情報や知識に触れられることは大学院で学ぶメリットだと思います。大学院で学ぶことで、自分自身の能力開発ができますね。大学院に行くとさまざまな人に出会えるため、自分自身の視座が高まると感じます。私は、大学院に行ったことで、世の中の見方がまったく変わってしまいました。今まではお昼にお店にご飯を食べに行って、お金を払ってから料理が出てくるのは当然のことだと思っていました。しかし今では、手元に出てくるまでの背景などを考えるようになりましたね。

 

————ありがとうございます。大学院進学はどのような人におすすめでしょうか?

自分のキャリアに長期目線を持っている方にはおすすめです。また、キュリオシティが高い人や人のために何かしようと思える人も向いているのではないでしょうか。今、大学院の授業で倫理観についても学んで、やはりある程度モラルがある人がいいかなと思います。いくら金を稼ぐとはいえども、相手のことをしっかり考えられるかや、自分以外の社会がさらに良くなるのかなども同時に考えられるような人にすすめたいです。

 

大学院進学を悩む方へメッセージ

————大学院進学を悩んでいる方に最後にメッセージをいただけますか?

私自身、MBAに行く人は普通の人と少し違って、意識高い人や頭がいい人の集まりだと思い、進学に高いハードルを感じていました。頭脳明晰な人がいるのも事実ですが、所詮同じ人間です。苦しいこともあれば、馬鹿馬鹿しいことで一緒に笑うと、普通の人間だと感じます。ここにハードルを感じるよりも、まずは行動。実際は入学後にハードルが待ってました。

私は専門学校卒業なので、グロービスに行くときは、有名な大学を卒業している人が多かったらどうしようと心配していました。ただ、一人ひとりに強みはあるので周りと比較して進学を諦めることはしないでほしいです。

 

————確かに、共感できます。本日は貴重なお話ありがとうございました!



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