大学院は好きなものを好きなだけ取りに行くビュッフェ 早稲田大学大学院

社会人大学院の経験談を紹介する「先輩インタビュー」
今回は早稲田大学大学院 経営管理研究科(WBS)に在学中の内山奈美さんです。

不動産広告営業からタレントプロデュース、採用支援会社営業という異色のキャリアを経て、「楽しく生きている人たち」に背中を押されWBSへ。人と人をつなぐ役目を引き受けてから見えてきたこと、あえて2年で修了しない理由など、未知の領域にどんどん飛び込んでいく内山さんならではのパワーあふれるお話を伺えました。


内山 奈美さん

中学時代よりダンスインストラクター、イベント企画運営、ショーケースプロデュースなどを手掛け、新卒で株式会社リクルートに入社。不動産広告営業に従事し、新規営業〜ルート営業まで関西エリアを幅広く担当。卒業後は2歳〜20代まで所属するタレントスクールにてプロデューサーに。タレント育成やマネージャー業、アイドルプロデュース等を行いながらTVCM等の振り付けも行う。現在は東京にて人事業務アウトソーシング会社の採用支援部門営業担当。

卒業・修了した大学・大学院
入学年月(年齢): 2020年4月入学(34歳)
修了年月(年齢): 在学中

リクルートの営業職から家業のタレントプロデュースへ

—————まずはご経歴についてお伺いします。ファーストキャリアはリクルートということですが、どんなお仕事をしていらっしゃったんですか? 

SUUMOという不動産媒体の広告営業をやっていました。「CV職」という、社員と同じような育成を受けて3年半営業専門で働く契約社員として採用されたんです。3年半勤めると、そのまま転職する人には転職支援金が出ること、退職交渉せず契約満了で退職できることが魅力でCV職を選びました。同じ部に配属された同期入社7人のうち3年半で卒業したののは私だけ。リクルートに残る道もあったんですが、母が経営しているタレントスクールを手伝うために辞めました。

 

—————タレントスクールですか?

はい、父は普通のサラリーマンなんですが、母は自分でダンススタジオを立ち上げて、ダンスを習いに来ている子どもたちの「テレビに出たい」「もっとダンスをやりたい」という要望に応えて、タレントスクールをやっていたんです。私も物心ついた時からずっとダンスをやっていましたし、小学生からは歌やお芝居、、中学生の頃からはダンスの先生もやらせてもらっていて、働き始めてからも土日のどちらかは母の仕事を手伝っていました。もともとリクルートで働くことで、組織やベンチャー的な風土から学んで家業に役立てたい、という気持ちもありました。そこで、CV職卒業を機会に、二足のわらじから一足に絞ったんです。

タレントスクール部門を任せられて、スクールのカリキュラム作りや保護者対応などの運営から営業まで、幅広くほぼ一人でやっていました。ちょうど当時アイドルブームだったので、スクールの子たちでアイドルユニットを組んで、その子たちがCDを出すところまでをつなぐ。撮影現場に行ってマネージャーのようなこともやる。ライブを企画して、セットリストやトーク内容を決めて、音源作って照明台本書いて、振り付けの調整もして、当日はリハーサルもして。他にも、新しいところに突撃して仕事を取ってくる、ということもやっていました。

 

—————楽しそう!上流から全部お一人で、まさにプロデューサーという感じですね。伺っていると、どこからMBAに結びつくのかちょっと不思議ですけど。

私自身大学は経営学部で、叔父も経営コンサルタントをやっていましたし、祖父も祖母も自分で会社を経営していました。どこかでMBAのことも耳にしていて、実はリクルートを辞めたタイミングでMBAを考えたこともあったんです。もうよく覚えていないんですけど、名古屋商科大学の大阪校など関西で通える大学院いくつかに資料請求をしたり説明会へ行ったり。でも、何だか今じゃないな、という感じだったし、そこに来ている人たちの雰囲気がうまくはまらなくて、結局受けませんでした。

 

家業を離れて東京で社会人経験増強を目指す

—————タレントスクールのお仕事は、4年半ぐらいでしたよね?

そうですね、元々そういう業界のノウハウや経験がないと言っても、数年このような仕事をしていると大きな会社とお取引ができるようになってきました。それと同時にある程度スクールの子どもたちも育ってきて。そうするとよりいろんな人が関わるようになるんです。そんな中、今の自分では解決しきれない問題にぶつかることが増えてきて、力不足を感じるようになりました。

そんなふうに少し仕事で行き詰まり感が出てきて、私の社会人経験の貯金でできることはここまでかな、と感じたんですよね。その反面、タレントスクールはもう私が離れても何とかなりそうだという脈が見えてきていました。あと、元々母が作った会社なので、母と弟も職場にいました。もちろん他にもいらっしゃったのですが中心はやっぱりファミリーメンバーで。家族としては仲がいいんですが、仕事を一緒にするとなると難しさもあって…ファミリービジネスならではの悩みなのかもしれません。そのあたりも当時の私の力量では難しくて。そこで、転職に踏み切ったんです。

 

—————転職先は東京に?

はい、お仕事で東京出張がすごく多くて、そこで出会った人の面白さと動くお金の大きさを考えると、一度東京で働いてみたいなーとどこかで思っていて。もちろん大阪にも面白い方はたくさんいらっしゃるんですが、絶対数が東京の方が多くて、自分が動きさえすれば、トントンと面白い人に出会えるという気がしていました。あとは、家の近くにいるとどうしても気になってしまうし頼ってしまうので、物理的に離れて自分と向き合いながら経験を積むのもいいかな、なんて思いもありました。

そして何社か受けた中で、初めから東京配属になった今の会社に決めました。採用支援、人事労務支援などをやっているアウトソーシングの会社です。入社してもう7、8年経っていて、現在は法人営業担当です。

 

 

 

楽しそうに生きる人たちと出会えた人事コミュニティ

—————MBAに行こうと思われた理由は、会社の中での課題感だったんでしょうか?

そうですね…今の会社はオペレーション寄りの会社なんです。営業やプロデューサーのお仕事をやっていた立場からすると、自分が走っている間に漏れたり落としてしまった仕事を快く拾ってサポートしてくれている人たちがいて、そのおかげで仕事が回っていたんですよね。その人たちがどんな働きがいを感じているのか、また、どんな人となら楽しく仕事ができるのか、一度そちらの側に立って知りたくてこの会社に入ったんです。

ところが実際入社してみると、自分が想像していた「東京で出会うと思っていたタイプ」とは違う人が多くて最初は正直戸惑いました。今の会社は質の高い仕事を意識高く行う人たちが多くて、要はオペレーションエクセレンスを主眼とした会社なのでプロセスを大切にしてるんです。プロセスに沿って、お客さんが気づいていない足りないピースを指摘して埋めていく。自社ながら、その仕事にはいつも感心してます(笑)

ただ、枠を越えた会話はあまりなくて。結果ありきのプロセス、出来なさそうなことを実現していく、にずっと追われてきた私からすると、学びは多いもののなんとなく肩身が狭くて(笑)一方で、私のお客さんである人事の方たちはちょっと違いました。私は人事の知識も経験もなかったので、人事の方たちのコミュニティで色々と教えてもらいたくてセミナーや飲み会に参加していたんですが、そこには学び直しをしている人もいらっしゃって。

東京にあまり友達がいない中でそういう方たちと会うのが楽しくて、刺激や知識を求めて色々な方と数珠つなぎで会っている間に、たまたま法政大学の田中研之輔先生のセミナーに参加して、先生とFacebookでつながったんです。そうしたら先生の「僕のゼミに参加したい人を公募します」という投稿が流れてきて、参加したいとご連絡をしました。これが大学院との最初の接点ですね。

 

—————自分から飛び込んじゃうのがすごいですね。これは、在学していなくてもゼミに参加できるシステムがあるということなんですか?

いえ、そのゼミは前期と後期で違う先生が担当するスタイルでした。前期を田中先生が持っていらっしゃって、その期間だけ半分在学生、半分外からの人、という運営をされていたようです。田中先生はエスノグラフィを組織に転用していらっしゃるので、ゼミはエスノグラフィの論文を読んで進めるやり方でした。

外部から参加していた人は、私みたいにアカデミア初めての人はほとんどいなくて、いろんな大学の先生方についても詳しいんですよね。飲みに行ってもよく「大学院へ行ってみたら」と勧められました。自分でも、セミナーホッパーをやっていても一瞬知識を入れただけですぐ忘れてしまうので、時間を消費しているだけやん、もったいないなと思ったんです。それなら大学院で体系的に学んだほうがいいんじゃないか、と考えました。

 

—————それから大学院選びをされたんですか?

そうですね、法政のキャリアデザインで田中先生の下で学ぶことも考えたんですが、どうせ行くなら、どんな選択肢があるのか知って選びたい、と思って。どんな大学院があるんやろ?と調べたら、ちょうど秋だったので入試が終わっているところも多かったんですね。間に合う大学院に絞って、立教や早稲田、グロービスの説明会に行きました。法政は一緒に授業に出ていた人がしゃべっているのを聞きに行ったり。あとはたしか青学も資料請求しました。

 

—————それで一番ビビッときたのが早稲田だった? 

そうです。これも以前MBAを調べた時に感じたのと同じことなんですが、説明会に来た人たちの雰囲気が何となく肌に合いそうだ、と感じたんですよね。

 

—————やっぱり大学によって色があるんですね。

グロービスだと素敵な人は多いんですが、常に全力疾走していないと怒られそうだな、と思ったり。名古屋商科大学ほど落ち着きすぎていないし、年齢層も雰囲気もちょうどいい感じでした。

 

「早稲田×リクルート」に背中を押され準備2週間でWBSへ

—————受験準備期間は短かったんですね。

そうですね、本当にこの数ヶ月は運とタイミングがすごく働いたような気がしているんですよね。10月ぐらいから調べて悩んで、どこを受けるか決めたのが忘れもしない12月中旬にあった、リクルート卒かつWBS卒の方の本の出版記念イベントでした。実はそれまで知らなかったんですが、人事コミュニティの中に早稲田卒でリクルート卒の人たちがいらして、みんな楽しそうに生きていて。その人たちに「受けるなら早稲田しかないやろ!」と、背中をグッと押されたんです。

ご自分が覚えている限りの大学院のメリットデメリットを、長文で書いて送ってくださった方もして。「飲み会多いので学費以外にもお金はこのぐらいかかります(タクシー代含め)」とか、私は独身なんですけど「パートナーとはもれなくモメます、みんなこんなふうに工夫してました」とか「早稲田は他学部の授業も一部受けられるので、学校でないと学べないようなことが学べます」とか。リクルート時代にいい意味でおせっかいな人に囲まれて生きてきたんで、ここまでやってくれる人たちがいることにも、安心感を覚えたんですよね。

 

—————これは、あったかいおせっかいですね!早稲田に決めてからは、どんな準備を? 

私は学部では卒論書かずに卒業していますし、小論文なんて書いたこともなかったので、MBA入試用の小論文の本を買いました。1月7日に締切だったので、エッセイ3つも書かなあかんの?と2週間ぐらいで慌てて準備して。結局、小論文の本も最後まで読みきれないままでした(笑)。

 

—————すごいなあ…もしダメだったら来年も早稲田受けよう、と思っていたんですか? 

キャリコンにも興味があったので、落ちたらキャリコン受けて、グロービスの単科に行って、来年早稲田をもう一度受けようかと思っていました。

 

—————そこまで考えた上で、今年は早稲田で行くぞということだったんですね…で、めでたく合格された。

運よく、ですね(笑)。



「人と人をつなげて感謝される」立場にポジションシフト

—————入学されてよかったこと、出会いや学び、授業など一番思い出に残っていることは何でしょうか?

初めてコミュニティの中で人と人をつなぐ立場になりました。それで、人と人をつなぐことで感謝される、ということを学んだんです。入学したのが2020年でちょうどコロナになったタイミングだったんですが、Facebookグループで入学式の時のオンライン懇親会を企画したのがきっかけでした。

コロナで入学式がなくなり、授業がいつから始まるかわからなくなり、みんな手探りな中で、先立って何かやろうよ!と具体的な声をあげる人がいなかったんです。私はもともと誰かやってくれるならそういう役職みたいなものは好きじゃないんですが、誰もやる人がいないならやる。「誰もやれへんねやったら私やるわ!」と言って始まったんです。先輩が履修相談会や新入生歓迎イベントをやってくれたので、自分が2年目になる時に後輩に対してやってみたり、オンラインの部活のイベント、留学生との懇親会や先生をお招きしたイベントなど課外活動をやりました。

 

—————そういうことを引き受けていこうという感情になった、っていうことですか?

 いえ、本当にFacebookグループの管理人のお手伝いを引き受けて、そこからの流れだったんです。でも、おかげで知り合いがすごく増えました。今3年目でその間の在学生だけでも800人くらいいると思うんですが…500人くらい知り合えたかなぁ。実は今日も1人、こういう事業を始めようと思ってるんだけどこういう人いない?という相談があったんです。どうなるかわからないけど、知り合いの中から紹介することくらいはできるので。

持っているネットワークをビジネスにすればいいのにと良く言われるのですが、私としてはネットワークそのものをマネタイズするというのはあまりイメージできてなくて、つないだ人たちが自分のやりたいことを伝えた時に応援だったり協力してくれたりすると嬉しいなと思っています。でも、私ができることで喜んでくれる人がいると嬉しいな〜くらいで、あまり深くは考えていません(笑)

 

—————500人?!私、えれキャリのインタビューで1年間で100人と知り合った!と思っていたんですが、その5倍ですね…すごいな。

先生方や卒業された方ともネットワークができて、大きな財産になりましたね。

 

 

2年修了をあえて捨てて、いいことづくめの3年目を楽しむ

—————学費や一日のスケジュールについて教えていただけますか。

学費は自費で、職業訓練給付金は使いました。平日は夜授業があるので夜中に勉強して、あとは週末ですね。仕事との両立は大変ですけど、なんとか調整してやっています。

 

—————そう言えば、今3年目とおっしゃっていましたが、3年になった理由はどんなことなんでしょうか?

自分であえて選択して3年になりました。卒業要件に満たなければ残れるので、私は修士論文を提出しないという方法で残っています。早稲田は修士論文だけ残しての残留だと3年目以降の学費が半額なんですよ。半額でも授業が取れて新入生とも知り合えるので、別に悪いことはないじゃないですか。

ビジネススクールなんだし、長く在学できるなら長くいればいいとおっしゃる先生も結構多かったですね。マックス4年までいてもいいんじゃないか、という先生もいらっしゃるので、ちょっと心揺れています(笑)

 

—————面白いですね!ぜひ4年目も在学することに決まったら教えてください。

 

 

自分のキーワードを掛け合わせて新しい領域に挑戦したい

—————今後やりたいことなど、ありますか?

それが、今めちゃめちゃ迷子になっていまして。どうしようかと思っているのが、正直なところです。例えば、母も仕事をするには高齢なので、家の会社をどうするのか、ということも近い将来現実的に考えないな、と。今の会社から次のステップに行きたい、という気持ちもあります。もともと興味のあったキャリアコンサルタントやコーチングの勉強をしてみたい、とも思っています。それと、今の会社に入った後、早稲田に行く前に宅建を取っていて。

 

—————キャリアスタートの時の不動産とつながりますね!

そうなんです、何か不動産と絡めてできたらいいなと少し前から思っていました。私のキーワードで言うと、不動産×人事、不動産×エンターテイメント、というような領域で何か新しいことをやろうかな、とか。キャリコンとかコーチングも含めて、副業しながら今の仕事を続けていくっていうのもアリだな、とか。

大学院では会計のゼミに所属しているんです。色々経緯があって会計になったんですが、今までの人生を振り返ると、自分がそれまで全然経験がなかったことに縁があって。リクルートでも、初め希望していたのは学びの部署だったんですよ。CVは部署が志望できるのがメリットだったのに、それがいつの間にか面接で不動産の部署に通ってしまった。だから、まったく新たに今まで自分がやったことないことを始めるかもしれない、と思ったりしています。

 

今のままでいいと思っている人も、行けば変わる場所

—————働きながら大学院で学ぶということは、内山さんにとってどんなことなんでしょうか?

大学院は深く学ぶこともできるし、幅広く学ぶこともできるので、好奇心を満たす、ということに適している環境だと思います。私はこれまで触れてこなかった分野にも興味があったので、自分の分野以外の授業もかなり取っています。勉強も人との出会いも、自分勝手に色々な発見ができるんですよね。

大学院ってビュッフェに似ているなぁと思います。レベルも広さも、どうアレンジしてどう構成するか、どのスタンスで臨むかは自分次第。自分の中に取り入れるもの、学べるもの、何もかもが違ってくる。逆に、大学院に入ったら自動的に何かやってもらえる、と思っている人はしんどいんじゃないか、と思います。

 

—————自分で研究する場所ですからね。

お金を払っているんだからやってもらって当然だ、という人もいる。それもわかるんですけどね…自分で取りに行くけど、好きなものだけたくさん食べてもいいし気になるものを少しずつ全部食べてもいい、ということだと思います。

 

—————最後に、どんな人に大学院進学を勧めますか?

一生このキャリアで今のままやっていくと決めている人以外、全員ですね。と言いつつも、何ならずっと同じでいいと思っている人も行ってみると何か変わるよ、という感じですね。ただ、大学院がいいのかどうかっていう議論はあるかもしれません。

 

—————テンポ良くお話しいただいて、とても気持ちよかったです!ありがとうございました。

 

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