働きながら学ぶ人を紹介する「先輩インタビュー」
今回は早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田ビジネススクール、WBS)を2023年3月に修了予定の廣瀬 知砂子さんです。

ご自身で化粧品やアパレルなどの企画コンサルティングを行う会社を経営。20年以上のキャリアの中で培ったマーケティングやプロダクト戦略の経験を糧に、さらなる飛躍を目指してMBAに進学。ご自身の学びはもちろん、女性としてのキャリアとの向き合い方についてもお話しを伺いました。

廣瀬 知砂子さん

株式会社キカクブレーン 代表取締役社長 女性潮流研究所所長

大学卒業後に株式会社コーセーに就職。2000年の薬事法改正に向け、異業種からの化粧品事業参入が増加することを想定し、化粧品企画専門のコンサルティング会社を企業。さまざまな企業とコラボレーションする中で、アカデミックなマーケティング理論に加え、経営や人材組織について学ぶ必要性を感じ49歳で早稲田大学のMBAを受験。入学後に1年の休学を挟み、2023年に修了予定。休学中には、化粧品業界に関する書籍を出版、産業能率大学での兼任講師もスタート。

早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田ビジネススクール、WBS)
入学年月日(年齢):2020年4月(50歳)
修了年月日(年齢):2023年3月(53歳)予定

薬機法改正にチャンスを見出して35歳で起業。大学院には50歳で入学。

————ご自身で会社を経営されながらMBAに進学された方にお会いするのは初めてなので、すごく楽しみにしていました。まずは簡単なご経歴、そして起業されてから早稲田大学大学院経営管理研究科(WBS)へ入学されるまでのストーリーをお聞かせください。

確かに起業してからビジネススクールへ通う人が少ないのは事実で、私自身ももう少し早めに行くつもりだったのですが、それは“時代”とも関係しているかもしれませんね。企画がやりたくて大学卒業後に化粧品会社に入社しましたが、当時はまだ男女雇用機会均等法が制定されて7年目くらいで、日本の人事に“暗黙の了解ルート”のようなものが働いているような時代(笑)。企画が得意だと声をあげたところで女性が出世できるイメージがなくて、それなら起業しようかなと思って会社を辞めたのが30歳のときです。今は女性登用が盛んになっているので、私の当時の見立ては外れているわけですが!




————やっぱり企画がやりたくて起業されたのでしょうか?

ちょうどその頃に薬機法が変わり、製薬会社など異業種が化粧品のフィールドに参入しやすくなったというのが具体的なきっかけですね。化粧品会社じゃなくても企画できる時代になるぞと見込んでました。ただ、当時は退社後すぐに同業他社に行くのは、育てていただいた会社にも申し訳なかったので、しばらく雑誌社でフリーランスの編集者として活動しました。

Webがあまり普及していなかった当時は、女性誌が化粧品の売上の鍵を握っていた時代。前職でプロダクトマーケティングには携わっていましたが、コミュニケーションの部分は手つかずでしたので、広告などのキャリアをそこで積むことができればいいなと思って選びました。5年ほど編集者の仕事をしながら、同時に個人事業主として商品企画の仕事を受けることをスタートして、本格的に起業したのが2006年です。子どもを産んで、まだ間もなかったですね。




————時代を先読みして起業されたんですね。今はD2Cのコスメなんかも当たり前に出てきていますもんね。会社も波に乗っていて、お子さまもいらして。お忙しい中での進学だったと思いますが、MBAを視野に入れるきっかけはあったのでしょうか?

起業をした当初、最初はスタートアップやベンチャー企業のお手伝いという規模でのお仕事を想像していたのですが、マーケティングやブランド戦略といったところにきちんと予算を割けるのは大企業なので、実際は大きな会社からのオファーが多かったんです。

私自身の“売り”としていたのは企画のアイデアやマーケティングなど、体系的にロジカルな思考といったものでした。ヒットするか否か?は私の力だけではどうしようもない。どんなに正しい提案を企業側に行っても、チームの方々が主体的に“自分事”として参加してくださったプロジェクトはヒットするというし、そうでない場合は難しいというのが分かり、これはやはり組織のあり方やHRが重要なんだということに気付きました。関係者が乗り気になれる、これならいける!と思える企画を作るには、人やチームについて勉強すべきだなと思いました。

同時に、経営者の方と現場を繋ぐという機会も増えてきたときに、経営的視点やアカデミックなマーケティングの知識を身に着けたいと考えるようになりました。ちょうどかつての会社の先輩が現在のWBSの前身の早稲田のMBAに通われていて、そういうチョイスもあるのだなと思い立ったという感じです40歳くらいにはそう思っていたのですが、子どもの受験などが重なり、49歳で受験して、50歳になる年に入学しました。




————マーケティングやプロダクト作りだけではなくて、HRにも興味を持って進学されたんですね。しかも自社の人材育成や組織作りではなくて、コンサルティング先のプロジェクトチームの活性化が目的だったとは想像できませんでした。




事前に早稲田の雰囲気を十分に知ったうえで選択

———— 前職の先輩が早稲田のMBAに通われていたとのことですが、他の大学も検討されましたか?

自分の仕事の中でターゲットのインサイト分析はとても重要なので、消費者行動論を専門に学びたい!と思い、日本マーケティング学会女性マーケティング研究会でお世話になった、本庄加代子先生にご紹介いただき、松下光司教授がいらっしゃる中央大学の修論指導を見学させていただきました。アットホームな雰囲気で先輩の研究内容も面白くて、ここに絶対に入りたい!と思いました。

ですが、考えに考えて、最終的には早稲田だけを受験することになりました。理由は、私自身が周りから“変わった人”と評されることが多いからです。子育てで子供関係で保護者として学校のコミュニティに入ることも多かったのですが、時として気苦労も多くて…。人数が多い場所のほうが自分のメンタルが楽だなぁと。早稲田は人数が多く、いろんなタイプの人がいるので変な人が一人増えても目立たないのでは?と思ったからです。早稲田では新市場創造の川上智子教授のゼミにお世話になっています。川上先生はメーカー出身で、R&Dの泥臭い現場もわかっているのが自分に合っていると思いました。アカデミックなマーケティングのアプローチの引き出しがとにかく豊富で、現在は修論指導をしていただいているのですが、脳内のモヤモヤを吐き出しただけで、「これってこういうことだよね?」と言語化してくださって、目から鱗の指導をしてくださいます。




————最後は“雰囲気”も重視されたということですね。入学されてからは、入る前の印象とギャップはありましたか?

私、その前にWBSと日経ビジネススクールが共同で設計している【MBA Essentials】へ行っていたんです。そこで少しトライアルみたいな形で講座を受けていたのでギャップは感じませんでしたね。こちらの講座を受けたあとに「面白かったから引き続き勉強してみたい」と、実際に早稲田へ行かれる方も多いようです。実際にそこに通われていた方が多くWBSに合格されていたイメージがありますが、それはあらかじめ【MBA Essentials】を受講しておくことで、実際の大学とのミスマッチが生まれにくいのかなという印象です。




———— ミスマッチは大学側も避けたいところですよね。

そう思います。あと、受験に関しては受験対策が分からず、検索して入学した方のブログなどを見たり、研究計画書や論文の書き方の本を読んだというやり方でした。実際に入学して聞いてみると「予備校に通っていた」という方も多いです。河合など、大学院専門の学校があるんですね。

最近の情報として付け加えるなら、早稲田MBAが教育訓練給付制度の対象になったので、倍率が上がった印象があります。ここ数年入学されている方は、とても優秀だとか。コロナの影響で海外留学にいけなくなった方が早稲田に流れているという話も聞きますし、実際に優秀な学生さんが増えている気がします。わたしも翌年に受験がずれていたら受からなかったのかも?と思ったりすることもあります。




———ここ2年くらいは、どこの社会人大学院も倍率がグッと上がっているようですね。特にフルリモートの大学はとても人気だとか。

フルリモートであれば、通える人の対象がずいぶん広がりますよね。倍率が上がって大変かと思いますが、社会人大学院は学部受験のように明確な合格基準がなく、合格不合格のラインが分かりづらいので落ちてもあまり落ち込まないで、次にトライしてもいいと思います。あと、入試のときの面接で「そこまでキャリアを積んでてベテランなんだから来なくてもいいじゃない」と言われ、言葉に詰まりました。でもこれは入ってみてわかったのですが、“あるある質問”らしく、現場のキャリアの長い受験者はみんな聞かれています。40代以上の方は、しっかりと回答を用意しておいたほうがいいと思います。



利他的で人の役に立つことが大好きな人が多いWBS

————廣瀬さんは独学で受験準備されたとのことでしたが、これを読んだらいいというおすすめの本などがあったらぜひ教えていただきたいです。

先ほどお話した研究計画書や論文の書き方の他には、「日経キーワード」は読んでおいたほうが良いと言われていました。あとは、小論文の過去問ですね。サイトで見られると思うので、これはマストです。論文試験、コロナで二年間は中止になっていましたが、次は復活するのかな?その場合は、時計と消せるフリクションはマストです!アップルウォッチではなく、普通の時計を買いました。あと、社会人歴が長い人は、パソコン生活でびっくりするほど漢字が書けなくなっているので、過去問は手書きでやった方がよいです。

おすすめなこととしては、説明会に行くと在学生が相談に乗ってくれる時間があるんです。そこで在学生と連絡先の交換を行えたらいいですね。在校生に提出の書類を見て客観的な意見をもらったっていう人も何人かいました。

WBSに通っている方々は本当に利他的なので、人に役立つことが大好きな人が多くて、気軽に相談にのってくださいます。入学した後もです。たとえば「ファイナンスは苦手で」言うと投資会社の人がファイナンスの授業をしてくれたり、「財務が分からない」というと一緒に宿題を考える会を持ってくださったりとか……。そういうふうに助けてくださる方が多いので、受験したい意志を伝えると、色々と真摯に教えてくれる方が多いと思います。




———— 入学したかったら、誰か在学生を捕まえる!という積極性も大切ですね。廣瀬さんは1年休学を挟んで、あともう1年学生生活が残っているかと思いますが、入ってからの授業の様子などについて教えていただけますか。思い出に残っている授業や場面などはありますか?

どの授業も面白いですが、カリキュラムや学生生活の全体を通していえるのは「不確実性が高い時代に入学してよかったな」という点です。

コロナ禍で授業がオンラインへと変化したことや、世の中でDXが急速に普及したこと、今年はウクライナ紛争が勃発したことなど、こういった大きな時代の波をプロの先生が解説してくださるわけです。教授はもちろんその道のプロですし、実務家教員もたくさんいます。ほかにも卒業生という形でそれぞれの業界の専門の方々、たとえばウクライナだったらエネルギー問題や情報戦などを解説してくださる機会があったりもして。現在は、一年どころか数カ月ごとに世界がガラッと変わっていく時代ですが、そういった変化が多いときに最前線のプロフェッショナルの方々の意見を聞き、一緒に考えることができることは大学院に入ったとても大きなメリットだと思っています。




————自分の専門領域以外の情報に触れることができるのは、MBAの醍醐味です。戦略・ファイナンス・財務・組織など学ぶ分野が多岐に渡りますもんね。MBAを意識するきっかけになったという、HRの授業は受けてみていかがでしたか?

かなり興味がある分野だったので本などを通して知っていることも多かったのですが、知識だけではなく、先生自身からの学びがとても多かったですね。“HRの先生は聞かせる力、巻き込むチカラがとても高く、実務でもファシリテーションのやり方などを取り入れさせていただきました。

WBSは実務家の先生が多く、ご苦労されたり、時には泥水も飲んでここまでたどり着いたんだなぁという、ストーリーが伺えるのも醍醐味です。また、ゲスト講師の方も素晴らしいです。そのような方に気軽に質問できる機会がたくさんあることも魅力だと思います。



自身も大学で教壇に。産休を活かして学ぶのも女性にはおすすめ

————実務家の先生の話が出たのでお聞きしたいのですが、廣瀬さんご自身も現在産業能率大学で授業を持たれていますよね。きっかけや何を教えられているかなど教えていただけますか?

元上司である外尾秀人教授が、私が大学院へ行ったり本を出したりしているので、授業を持たないかと誘ってくださいました。まさに“今”のことを話してほしい授業なので現役でやっている講師が欲しいというお話だったんです。自分も大学院に行っていて大変なのに教えるのは無理だと思ったので最初はお断りしたのですが、教授から「与えるだけではなく、学生からの刺激もすごくあり、自分の勉強にもなるよ」とおっしゃっていただき、Z世代と交流を持つのはマーケティングプランナーにとってはメリットになると思い、最終的にはお引き受けしました。大学院つながりでゲスト講師をお願いしたりしています。学生さんに素晴らしい社会人の方との出会いの橋渡しになれればとも思っています。




————自分で学びながら、同時に教える。学習効率が最も高い環境ですね!本を出版し、教鞭をとる。大きな変化もあった大学院生活だと思いますが、ずばり進学してよかったと思いますか?

良かったとしか思えません!日本の中で、化粧品業界はすごく大きな産業と思われていますが、実際は2兆円ちょっとなんです。自分自身がまったくもって井の中の蛙で、見ている世界が狭かったなと思いました。韓国やフランスなど、化粧品業界が一つの国家産業になっている国に比べたら、日本の業界はまだまだ小さいわけです。そんな社会全体について理解できましたし、グローバルビジネスがどうなっているのかなど、大きな視点で物事を見られるようになりましたね。自分が見ている視野が広がり、鮮明になったこと、そして情報が増えた分、意思決定のときの判断材料が増えたと思ってます。

あとは、入って転職する方もいらっしゃるのですが、皆さんかなりいい企業や自分の強みが活かせる新興企業などにジョブチェンジされています(笑)。転職にもいいでしょうし、もちろん起業するにもプラスだと思います。実際に皆さんの感覚で起業ハードルが低くなっているので、私自身も別の会社を興すかもしれないですし、スタートアップに参画をするかもしれませんね。最初の起業は「薬機法が改正するからビジネスチャンスだ!」と思ったことがきっかけでしたが、そういう合理的な判断だけでなく、内なるテンションで自分が好きなことで起業するのもありなのかもって(笑)。

もうひとつ、ぜひ女性の方にお伝えしたいのですが、入ってから出産した方や、在学中に妊娠して休学した友人もいるんです。休学のシステムもしっかりしています。そう考えると【産休を使って学ぶ】というのもひとつの手かなと思いました。MBAは管理職を育成するためのものなので、これから先、もっと女性管理職を増やしていくためにはそういった機会で学ぶのもアリだと思います。学校に行っている間のシッター代を国が補助してくれるとか、そういうシステムが今後広がっていくとよりMBAに挑戦しやすくなるのではと思います。

「産休の時にキャリアだなんて欲張り!」と思われるかもしれないんですが、妊娠中や出産後は記憶力・理解力・判断力などが大きく低下するようなんです(そのあと、元にもどるようです)。私自身、脳が働かないことに不安や焦りがすごくありました。そういうタイミングは、責任ある仕事をする前のリハビリとしてMBAに行くという選択ができたらよかったなぁと個人的に思いました。




————海外では育休中のMBA取得が、一個のキャリアパスになっているようですね。日本でもそういった事例をえれキャリでも発信していきたいです。今日は本当にありがとうございました!



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